回帰4






長時間の空の旅を終え、佐助と前田一家は母国へと降り立った。

空港に停めていたらしい前田家の車で、佐助も一緒に送ってもらうことに。

すると…


「佐助!慶次殿!」

「「!」」


懐かしい大音声に、そちらを向く。


(旦那…!)


出口で、幸村──だけでなく、他の友人たちも手を振っている。


「まぁ、お出迎えして下さるなんて…」
「本当に仲が良いなぁ、お前たちは」

まつと利家がニコニコと言うが、

「あ──う…ん、まぁ…」

と、何故か慶次は口を濁し、顔は引きつったような笑い。


(旦那が、こっちに走って…っ、どどどうしようぅ!!)


一方、佐助は久し振りに見る幸村の姿に、何もかもが飛んでしまい、緊張だかときめきだか分からない状態に喘いでいる。


「二人とも、お帰りなさい!」

「旦那…!」
「ゆ、幸…」

キラキラとした笑顔で二人に駆け寄る幸村に、佐助は無意識に手を広げ、慶次は後ずさりし──



「ぐほッ…」


「──へ?」


奇妙な呻き声がしたかと思うと、腹を抱えてうずくまる慶次。


(え、何?)


確か、幸村からの一撃を覚悟しなければならないのは自分だったはずだが。


(てか、まだ真相言ってないし。殴られるのは、これからのはず)


…だというのに、何故か慶次がお見舞いされたらしく、相当痛そうに、うーうー唸っている。


「だ、旦那…?」
「…佐助、元気そうで何より…」

「う、うん、ありがと。…何で、慶ちゃん殴ったの?」


幸村は、たちまち不機嫌な顔になり、

「黙って行ったからだ。片倉先生を問い詰めて、教えて頂いた」

「あ、あー…、そう…」

佐助は、自分のときの恐怖にも駆られながら、


(後でバレんだから、言えば良かったのに…)


と、慶次を見下ろす。


しかし、幸村はシュンとした顔になり、

「既に一人足りぬというのに、慶次殿まで…。ひどいでござる。何故、一言…」

「ご、めん…」

慶次が腹をさすりながら、やっとのことで立ち上がる。


前田夫婦は車を取りに行き、政宗たち三人も集まった。

佐助は、少し身構えてしまう。


「俺らも、たーっぷり楽しんで来たぜー?な、幸村」

と、幸村の肩に腕を回す政宗。
直後、元就に足を蹴られ、すぐに離れたが。


「ええ!目一杯、話してあげまする!」

その言葉に、やはりショックを受けてしまう佐助。


(…これが現実。しっかり受け止めないと)


そう決意し、平常心を取り戻そうとしていると、


「まぁ、たまにゃ少人数ってのも悪くなかったけどよ」
「眼帯二人は余計であった」


(──え!?)



「あ、あのさ!旅行って……皆でっ?」

佐助の胸に、かすかな希望が湧く。



「?おう、…ってか、



──修学旅行だし」






……………え。





「しゅ、うが、く……」

佐助も、幸村に殴られたような衝撃を食らった。


「…片倉さんに聞いたけど、帰る日、ちゃんと言わなかったんだって?旅行の前には帰ればって、何回も言ったらしいけど、お前全然耳に入ってない感じだったって。やっぱり…」

…慶次の声が、遠くなっていく。











一大イベントを忘れていた失態を散々コケにされてから、佐助は幸村たちと空港を後にした。

(佐助も、慶次と一緒になって、とにかく幸村に謝った。…そして、切なさに泣いてしまいそうであった)

小十郎が車で来てくれていたので、結局はそちらに乗せてもらっている。

佐助が記憶を取り戻したことは全員が悟ったはずであるが、幸村の手前、誰も口にしていない。

佐助は、幸村の沈んだ顔を横目にし、


(慶ちゃん…ホント馬鹿だよ…)


海外旅行だって、貴重な体験ではある。

だが…


「──旦那、慶ちゃんのこと、あんま怒んないでやってね。あいつ…」

「分かっておる。つい…」

先ほどは、久し振りの再会にお互い素直な気持ちが溢れたようだが、今になり、別れる前の気まずさが戻っていた。

元親と元就が降りたせいもあるのだろう。

政宗は助手席に座り、全く後ろを見ようとしない。


「慶次殿は、馬鹿者だ…」

「…だね」

プッと笑い、佐助は幸村の横顔を窺う。


──たった一月振りだというのに、ようやく会えたような。


(『あいつ』が、懐かしがってるのかな…)



瞬きをする目や、静かに聞こえる呼吸の音。

…鼻と目の奥が、熱くなる。




「佐助…」

「あ、ごめ…」

知らぬ間に、手に触れていたらしい。
すぐに離し、


「旦那、話したいことが沢山ある…謝んなきゃいけないことも、沢山…」

「………」

今日は夜も遅い。また、明日改めて…と言うと、

「分かった」

と、神妙な顔で頷く幸村。


先に佐助の家に着き、政宗と幸村が荷物を下ろすのを手伝った。


「──じゃあな」
「今日はゆっくり休むと良い、…おやすみ」

「ん、おやすみ…」

二人と小十郎に礼を言い、車を見送る。


政宗と幸村が並んで座るシルエットが目に焼き付き、佐助は、なかなか部屋に上がることができなかった。







‐2011.11.21 up‐

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

色々うやむやですみません;
戦国のこと、妄想結末ですので;;

慶次は、頭突きをしました…分かりにくくて申し訳ない。


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