変身2




「旦那〜!どーお?」

「Hey、俺の方がsexyだよな?」


またも張り合いコンビが、とにかく我先に、という風に戻って来た。

こんなことでも負けたくないのか…と若干呆れながら、幸村は二人に目をやるが――


「佐助……政宗殿……」

「おいおい、二人とも案外――」


「あっれぇー!?全っ然イイじゃん!こりゃ〜びっくり!」

慶次が大声を上げると、他の生徒たちもわらわらと二人の周りに集まる。


「二人とも、超カワイイー!てか、美人!」
「背が高いから、何か外国のモデルみたーい」
「すげぇー…。やっぱ、元が良いと違うんだな〜」
「写メ撮っていーい?」

――何やら、芸能人のような扱いである。

一通り愛想を振りまいた後、


「ね、旦那ぁ、俺様カワイイ?」
「幸村ァ、俺の方がタイプだよな?」

再びにじり寄って来る二人。

確かに、二人とも喋らなければ立派な女性――それも、かなり美人な――に見える。
顔立ちのせいか、大人の…


「たっ、タイプなどとは…!?」

二人が女に見えるからか、政宗の言動に反応したからなのかは定かではないが、幸村はたちまち頬を染め、あたふたし始める。

その姿に、つい口端を上げてしまう佐助たち。


(照れちゃって、可愛いなぁ、もう…!)


自分が女だったら、男のこーいう反応見られるんだ〜。女って、良いなぁ…


――やべ、癖になったりして。


危うく、新しい扉を開きそうになってしまう佐助である。


「こ〜んな高ビーなお嬢なんて、嫌だよねぇ?」
「Ha!腹黒で計算高い性悪よか、マシだろ」
「誰のこと?俺様分かんな〜い」
「幸村、お前のタイプじゃなくても、もし俺が女なら、相手の男に染まる性格だと思うんだが――」

「お、落ち着け政宗…」

あまりの台詞に、元親がやんわりとツッコんだ。


「ふ、二人とも綺麗でござるよ…」

幸村は、元親の後ろに隠れるようになりながら、少し怯えた口調で言った。


「旦那〜、なーんで逃げんの〜?」
「どっちが好みなんだ」


ますます眉を下げて幸村は、

「か、勘弁して下され…」



(――ヤバい)


優柔不断な男主人公を、小悪魔な態度で落としにかかる、少年漫画の恋愛モノに出てきそうなヒロインの気持ちが超分かる、今!


そのときばかりは、佐助も政宗も同じ思いというのは、お互いよく理解していたことだろう。


(女装って、危険!)



「も〜、幸苛めんなよ」

やれやれと困った顔で、慶次が二人を幸村から引き離し、

「ほら、これでお前ら、さらにお似合いだよ」

と、佐助と元親を二人並べた。


――周りが、ドッと沸く。


「や〜、参ったね。親ちゃん、ゴメンね〜?俺様ってば。どう、惚れ直した?」

佐助も、期待に応えて元親の肩に絡み付く。


「ああ。お前はそんなことしなくても、充分キレイだけどな(棒読み)」

「親ちゃん……ッ」


がっしと抱き付く佐助に、この上なく真っ暗な顔をする元親だったが――


そのとき、ざわめきが消え、皆の目が一様に、ただ一人へと釘付けになった。


「――ぶっ……たまげた」


慶次の呟きに、その彼――元就が、眉を寄せる。

「そんなにひどいのか」


その一言に、またもや室内は沸いた。


「すっげぇ美人じゃん、元就!」

慶次は豪快に笑い、「なぁ!?」と、佐助たちを振り返る。

背後では、フラッシュとシャッター音の嵐である。


「悔しいけど……負けた」
「Ahー……確かに」

目が覚めたかのように、佐助と政宗は肩を落とす。…悔しがる時点で、やはりおかしいとは思われるのだが。


「お前って、化粧映えすんだなー」

元親も目を丸くするが、元就は鼻で笑うだけだった。

だが、その隣の幸村には、

「幸村…おかしくないか?」

と、少しだけ恥じらうような表情になる。


「ツンデレだ、ツンデレ」

周りから囁く声が上がるが、


「就ちゃんの場合、親ちゃんにツンのみ、旦那にデレのみ、だよね」

佐助は、政宗へ呟いた。


「も、元就殿……?」

ひえぇぇ……という心の叫びが聞こえてきそうな面持ちのまま、幸村は目を見開き硬直していた。


「変……か?」

ズイッと、幸村に顔を近付ける。――前のスクリーンが良く見えるよう階段式になっている教室なので、幸村を下から見上げる形で。


「変じゃなぁぁッ――?」
「いでっ!」

思わず仰け反ってしまった幸村の頭が、元親の顎を直撃した。

「うぁッ!すみませぬ、元親殿!」

あわわと謝る内にも、元就は、じっ…と幸村を見つめてくる。


「へ、変ではござらぬ!すごく…お似合いです…!」

その目の中では、渦がぐるぐる巻いているようにも見えたが、幸村は何とか絞り出すように言った。


「そうか。…女に見えるか?」
「――はい」

元就に嫌な思いをさせてしまうのでは、と不安になる幸村だったが、こんなときでもやはり正直に答えてしまう。


「どのような女に見える?」
「えっ?」

意図を読めず、戸惑う幸村。

他の――特に、佐助と政宗は、(嫌な予感…)と思い始めた。


「やはり、無理があるだろう?優勝するには、我程度の容姿では…」

そう言い、元就が目を伏せると、幸村はハッとなり、

「とんでもござらぬ!元就殿ならば、充分…!おっ、お美しい…、ので…!」
「……本当か?」
「はい!」
「佐助と政宗よりも?」
「はい!――っあ」
「お前の好み――」

「って、ただの誘導尋問じゃねーか!」

政宗が後ろから元就を小突き、ようやく幸村は解放される。

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