とりあえずの終息3


「俺にも、上手く説明できねーよ。ただ、今までこんな風に人を好きになったことはねぇ。別に、女がダメだったんだってこたぁねーぜ?だったら、さっさとシフトしてるだろうからよ、俺なら」

「あ──はい…」


「まぁ…お前は自覚がねぇみてーだが、お前っつー人間は、珍しい生き物だ。
いつでも真っ直ぐで、他人の心にもアッサリ入って、いつの間にかテリトリーを広げてやがる。

俺は、お前から沢山もらった。…嬉しいもんやら、温かいもんを。

お前にそのつもりはなくとも、俺はお前の一挙一動に、どうしようもなく惹かれた。…の結果が、このザマだ」


幸村は、思わずしげしげと政宗を見つめてしまっていた。

彼の言葉一つ一つが、頭に、胸に、スーッと溶けるように入っていく。


「…お前だから、俺は惚れた。そういうことだろ、結局。お前にゃ悪いが、女とか男とか関係ねぇ。俺が女だったら良かったんだろうけど、お前がそんなことを気にしなくなるようにさせる自信はあるぜ?」

政宗はニヤリとし、「俺の──この、何にも勝る愛でな。余計な心配なんてしねーで済むくれぇ、お前を幸せにしてやる」


「政宗殿…」

幸村は、頭に血が上るのが、はっきりと分かった。


(よ、よく真顔で…)



「──ま、お前の性格はよく知ってっから、俺ァ、ハナから急いでるわけじゃねーんだ。お前に受け入れられんのも、フラれんのもな。

…けど俺は、お前のいつもの、うるせーくれぇ元気が良くて、笑ってるのが好きだからよ。無理言って悪ィけど、そうしてくれねぇか?忘れた振りでもしてもらって、構わねぇしよ…」


「忘れるなど…」

「バカ。本当に忘れてくれて、どーする?俺は、どんだけマゾだっつの。振りだ、振り。そーすりゃ、ちったぁマシだろ?今までみてーにできるさ」

「政宗殿…」


幸村は、自分が何を一番望んでいるのかを知っていた政宗を、今一度見つめ直した。


「悪かったな、色々悩ませちまってよ。ま、これからもそうさせちまうことにはなるが、焦らなくて良いから。

お前らしくやって…分かったときに教えてくれれば良い。それまではいつも通りだ。また、前みてーに闘り合おうぜ?俺も寂しいじゃねーか」

少し眉を下げて笑う政宗に、幸村はしばらく見入っていたが、


「はい…!」

と、言葉では伝えきれないほどの感謝を込めて、心からの笑顔で応えた。


「………」

政宗は、そんな幸村をしばらく見ていたが、

「…せっかくのチャンスだしな」

そう一言呟くと、幸村の肩に片手を乗せ、顔を覗き込んできた。

──が、


「…幸村ァ…、何──この手…」

うぐぐ…と、くぐもった声をもらしながら、政宗は腹を押さえて幸村から離れた。


「ま、政宗殿…っ!すみませぬ、絶対止めるとお聞きしていましたので…!大丈夫ですかっ!?」

「“お聞き”…?」


幸村は、わたわたとしながら、

「あの…っ、元就殿や佐助に言われておりまして。政宗殿が近付いたら、無言で腹に──」


「Shit…あいつら」

政宗は舌打ちし、「…何でなのか、理由聞いたか?」

「はあ…」

たちまち赤面し、目を伏せてしまう幸村。


「ふーん…」

初めは口を尖らせていた政宗だったが、段々ニヤけた顔へと変わり、

「じゃあよ、お前が必要ないって思ったときは抵抗すんなよな」


「必要ない…」

──って、それはつまり。


目を持ち上げると、素早く政宗の顔が近付き、すぐに離れる。

「!!」

先ほど彼の腹に埋まった片手は掴まれていたので、もう一方を振りかざすのだが、


「ごちそーさま」

と、スルリとかわされた。


幸村は、頬に手を当て目を丸くしつつ、「は、破廉恥なぁ…っ」

「油断大敵っつーヤツだ。用心しろよ?」
「な……っ…に、が」

「俺は、こういうことに関しちゃ、気が早ぇーんだ。我慢できるタチでもねーし?順番ってのも、そのときゃ頭からなくなっちまう。返事もらってねーからって、遠慮するような奴じゃねーんだよ、残念ながら」

不敵に笑い、「こういう風に、痕を付けるって方法もあんだ。覚えといた方が良いぜ」


…幸村は、もう二度と油断するまい、と心に強く誓った。


しかし、これで二人の間の、果てしなく思えたあの距離感が、ぐっと狭くなった感じもする。

久々の安心感に、幸村は、そっと小さな笑みをもらした…。

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