二日目A-4


「佐助、今日の料理は格別だな!大変だっただろう?こんなに…。全部、昨日作ったのか?」

「ぜ〜んぜん!…あのねー…実は、まーくんも手伝ってくれたんだよ。これとこれ、まーくん作」
「何と、政宗殿が!?」

「Hey…何バラしてんだ、サル…」
「いーじゃんもう。旦那、美味しいってよ?」

幸村は顔を輝かせ、

「すごいですなぁ、政宗殿!料理もできるのだとは!」
「Ahー…まぁな」

「佐助も政宗殿も、何でもできて、すごいでござる」
「やー、照れるねー!」

「何だ、やけに心広ぇじゃねーか?政宗に」

元親や慶次が、不思議そうに佐助を見ると、


「何か後でバレた方が、まーくんにとって良くなりそーな気がしたから。二人っきりのときに、サプライズで旦那を感動させる作戦?みたいな」

「あー…」と、頷く二人。


「──さ、今夜は祝いだ!パーッとやろうぜ?な!」

元親が明るく言うと、「はい!」と幸村も、全力の笑顔で答えるのだった。



───………



そして、数時間後…


「…んっとによぅ…そのときの、こいつらのマヌケな顔…見せてやりたかったぜ…!」

大分酒の進んだ元親が、豪快に笑いながら言った。

話題は、今日のコンテストのこと。


「しょーがねーだろ?Very cuteだったんだからよぉ…!幸村ァ、マジで最高だったぜ」

政宗が、(酒の勢いは関係ないだろうが)幸村の肩を抱く──のを、サッと佐助が跳ねのける。

「そうでしょうとも…!この日のために、どれほど努力してきたことか…!」

幸村は、(謙信にかなり鍛えられたのか、初めから強い体質だったのか、)同じくらい飲んでいたが、いつもより陽気さが増し、少しだけ、舌っ足らずになった程度。

血色の良い元々の頬も、それ以上に赤くなることはなく…

──意外と、酒豪の素質を持っているのかも知れない。


「うんうん、ホントに辛かったねぇ、旦那…!」
「さすけ、分かってくれるか?」

「ったり前じゃん!できることなら、代わってやりたかっ…?」

ずい、と幸村は佐助に近付き──と言うより、のしかかるような形で、

「そういえば佐助……言っていたな。自分が、もっと女装が似合えば──と」

「う、うん。…旦那?」

幸村は、ガサガサと自分の荷物をあさり、ある物を取り出した。

「そ、それ、今日の…」

…あの、『ユーラ』の際に着ていた衣装。


「袴はかすがに預けたんだが、これは、持って行けと言われてな…。ちょうど良かった」

「な、何がぁッ!?──ちょ、旦那まさか…」
「俺は嬉しいぞ、佐助!そこまで、俺のことを思ってくれるのなら…痛み分けだ」

「は、はいぃッ?…って、ちょっとぉーッ!?」

幸村は器用にも、佐助の服を脱がしにかかる。


「いーぞいーぞぉ!」
「サル子、きっと似合うぜぇ」
「あははは」
「フッ」

「ちょっとアンタら、この裏切り者…!」

「大丈夫だ、佐助。イタくないから」

「旦那ぁ!色々と間違えてるよ!いやぁ、やめて!パンツ関係ねーじゃん、何でッ!?」

「んぁ…?──っああ、すまぬ。失敗、失敗」

ふにゃ、と照れたように笑う幸村に、一瞬彼らの酔いが冷めそうになる。


「…たく…。似合うわけねーじゃんこんなの、俺様…」
「…俺とて、着たのだぞ」

「旦那は似合うから…ッ?」

突然、目をウルウルさせる幸村に、ギョッとなる佐助。


「だ、だんなっ?」
「俺は…お前のために…」

「ぅうわあぁ嬉しいなー!すっげぇ着たかったんだよね、コレ!ありがとう、旦那ぁ!」


「着たかったのか…」


「…え、ちょっと何?何でそこで引くのよ、旦那。俺様、泣いちゃうよ?」


「いーから早く着ろや!見せつけんじゃねぇ、クソオカンがぁ!」

政宗が、佐助と幸村を引き剥がす。


「手伝ったげるね」

と言う慶次の目も、顔とは違って笑っていない。



(俺様、一生の汚点…!)





──数分後。



「佐助……良く似合うぞ」

「そう──良かった。肩とか腰とか、破れそーなんだけど…?編み上げ、えっらいほどけちゃって、全然意味なしてないし?ニーハイ、…無理だったし。素足にこれって……何の拷問?」


「俺らの方が拷問だわ!」


と言いつつ、爆笑する元親と政宗。
慶次と元就は、「プププ…」という感じである。



(──くっそぉ…)



佐助は、悔しがるが…



(……お、そうだ)



「ねぇ旦那〜?胸の、詰めるヤツはぁ?」
「ああ…かすがに渡した…」

「な〜んだ、残念」

佐助は胸元を掴み、下を覗く。


「…あれ入れたら、ちょっとはマシだったかなーって」

その中から香る匂いを、吸い込むように、


「あー……旦那の匂いがする」

と言い、ニヤリと政宗たちを見た。


「さ、さすけ!すまぬ!汗が」
「んーん?すっげぇ、イイ匂い」

「脱げ」

「ちょっとまーくん、やめてよ」
「…我も着るか」

「えっ、就ちゃん…似合うだろーけどさぁ!」

「いや、俺が先に着る」
「見たくねぇー…。てか、先に俺様着ちゃったしー。悪いねぇ」

「今なら、まだ間に合う」
「何がッ?」

「いーから渡せ、この…!」

「政宗殿も元就殿も、そんなに着たかったのですな…」

「…いや、これはだな」
「お前の痛みを、知りたくて…」

「お、お二人とも…!」

感激する幸村。


「もう放っといて、飲もうぜ。お前の気も済んだだろ?ほら、こっち来いよ」

元親が手招きすると、

「そうですな…。佐助、ありがとう。何やらスッキリした」

「そ、そう…?そりゃ、着た甲斐もあったってな」
「とりあえず脱いで、それ貸せ」

「って、まだいた!しつこ!何に使うつもりだよ」

「佐助、我にまかせておけ」

元就は不敵に笑うと、その辺のグラスの中身を、政宗の口へ一気に流し込んだ。


「就ちゃあぁんッ!?」

「うっく、何すんだ元就ィ…」


「政宗は本当に強いな。元親たちと比べると、どうなのだ?ん?」

「…んなモン…決まってっだろ…もっと持って来い」

──完全に、意識は佐助から離れたようである。



(助かった…しかし、案外ホント良いコンビかも、この二人…)



苦笑しながら佐助は着替え、衣装をきちんとハンガーに掛け、一応、目のつかない和室の方に吊り下げておいた。

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