二日目@-4



「さぁて、さてさて!皆さん、いよいよお待ちかね──フィナーレの中の目玉イベント、『プリンス・オブ・ビューティー&プリンセス・オブ・ハンサム』の開幕です!」


『わぁぁぁ──!!』


これまで以上に沸き上がる会場。講堂全体が揺れるようである。
佐助たちも、待ってましたというように、ステージへ注目する。

ステージのちょうど真ん中を降りたところに、赤い絨毯が敷かれた特設足場が、設けられている。
──ファッションショーなどで、モデルが歩いて見せるステージ。…あれを、意識しているのだ。

生徒たちの席は、そのレッドカーペットで二つに分断される形。
その最前列には、審査員である教師たちの座る長机と椅子が設置されている。

生徒たちも、ステージとカーペットどちらかを見やすいよう、自由に椅子の向きを変えたり──カメラを準備したりなど、忙しく動いていた。

カーペットは目線がほぼ同じになるので、ステージよりもその姿を捉えやすく、写真の撮りやすさもまた同様。
あの青年カメラマンは、カーペットの最端から少し下がったところで待機している。

会場のライトが消え、ステージのみ明るくなる。


「えー、今年はお色直しがあり、衣装を二つ着るということで…裏方さんとモデルさんは、ものすごく苦労なさったそうですが、見ているこちらは楽しみ二倍ですよね!

しかし、十八組いますので、まず一着目で第一審査を行い、半分の九組に絞らさせて頂き、勝ち上がったペアのみお色直し、第二審査で優勝決定戦というルールになります。

負けてしまった方たちは残念ですが、最後に全員ステージへ上がる際、二着目に着替えて登場してもらいますのでご安心を」

「え〜、ここからは一人での司会はキッツいので、私も参加致します!皆さん、よろしくー」

と、実行委員会の一人が司会に加わった。

「クラスとモデルの名は一切明かされません!一応、ニックネームは付けて頂いていますが、正体は誰なのか予想して楽しむのも、また一興!」

「ですが、嬉しいお知らせ!最後に、上位三組のみ、クラスとモデルの正体が明かされます」


「え、そーなんだっけ?」

佐助が驚いて元就を見ると、

「ああ…去年、不正があったらしくてな。本当に、性別が入れ替わっているかどうか…。委員会が、メイク前から見張ってはいるがな」

「そっか…」

(てことは、優勝すれば、旦那ってバレ…)


元就は、佐助が何を思ったかすぐに悟ったようで、

「…仕方なかろう」

と、溜め息をついた。


司会者の合図とともに、BGMがいかにもそれらしい曲に変わり、エントリーナンバーの頭から、女装・男装カップルが、テーマを揃えた衣装をまとって登場する。

さながらファッションショーのごとく、前の組がカーペットを歩く頃には、次の組がステージに登場する──など、時間の関係もあるのだろうが、テンポの良さに観客も疲れずに次々楽しめる。

衣装は様々で、さすが根回しを完璧にしていたせいか、二年一組とカブっているペアはいないようだ。

チャイナ服、ナースとドクター、紋付き袴と振り袖、王子と姫スタイル、パイロットとキャビンアテンダント、セーラー服と学生服、普通にオシャレな私服、など…。

少々イロモノが多いのは、どうしてなのか、不明だが。


「男装は、孫ちゃんよりイケメンな子はいないね。皆、可愛いけどさ」
「Ahー…だよな。女装は化粧とかでごまかせるけど、案外男装のが、難しいだろな」

「あいつ、すげぇ似合ってんな。あのお姫さん」
「あ、『リン王女』ね。…一年生の…大友くん?だって」

慶次が、周りの女の子からの情報を伝える。

「Hum…あのチャイナ、ちょっと元就に似てねぇ?ツンとした感じな」
「あれはねー…三年の、姉小路先輩らしいよ」

「じゃ、あのナースは?」
「えーと…尼子先輩」

「あっ、あれお市さんじゃない?」

佐助の驚く声に、皆ステージに目をやると、市は鎧を身に付けた若武者の格好で…隣にいるのは、白拍子。

「義経か〜」
「めっちゃ美男子…。まぁ、孫ちゃんのが、上だけど」
「しっかし、似合うな」


案外、女装のレベルが高い状況に、これはなかなか厳しい戦いになりそうだと、一同は固唾を飲んでモデルたちを見ていた。

カーペット近くの審査員たちの前で、その衣装をテーマにした、ちょっとした演技を見せるのもルールの一つで──台詞は、クラスの代表者二人(黒子姿)が進める。

(↑声までは、装えない理由で)


「──エントリーナンバー十五!大正ロマン溢れるお二方、若き『先生』と『ユキ』さんの登場です!」


「あっ──(旦那たちだ)」

思わず声を上げそうになるが、会場は、初めからそんなことを気にしなくてもいいほど熱狂している。

…が、彼らがカーペットまで来ると、一瞬息を飲んだように皆静かになり……

──すぐに、轟音に変わる。


『キャーキャー!!』
『誰、あの男役!?』
『超かっこいいー!ホントに女ぁ!?』

『女装の方も何?めっちゃくちゃ、可愛いじゃん!』
『誰だ?…女の子並みに可愛い…てか、もしかして普通以上じゃね?』
『やっべー!俺、モロ好みだわ』

──わぁわぁと盛り上がる生徒たち。


「……」
「珍しい…。お前が、何も言わぬとは」

「シッ!──ゴメン就ちゃん、集中できないから。…できる限り顔覚えてんの、今言ってた、不届き者」

「バァーカ!せっかくのあいつの晴れ舞台なんだ、んなことしてねーで、ちゃんと見てやれ!」
「あ、ちょっと親ちゃん…」

無理やり、元親に顔の向きを修正され、抗議する佐助だが…


──ちょうど、審査員たちの前まで来ていた二人は、その後ろに席がある佐助たちから、よく見えた。


孫市は、これから出兵するのだと思わされるような、士官姿。
立派な軍服と帽子を被り、さらにシークレットブーツのお陰で幸村より遥かに背が高くなっており、女の子たちが悩殺されるのは無理もないことだと、納得させられる。

そして、幸村は、大正時代の女学生をイメージした袴姿。
頭は黒髪ロングのウィッグを付け、後ろ髪をたっぷり余らせた結わえ方をし、本当に令嬢のような雰囲気である。





(うぅ……旦那ぁ……ごめん……




──か、……わいいよぉぉぉ……!!)





あの、お試しのときでも相当なものだったが、どうすればこんなことになったのか、と問い詰めたくなるほど、幸村は女装が板についていた。

周りを見ると、政宗も元就も、──慶次も。

全員が、バカみたいに、ただ一人の姿に釘付けになっている。


…この中では、元親の次にまだまともに見られているのは自分だと、佐助は悟った。

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