二日目@-3
───………
「我らが生徒会長……毛利元就さんです!」
「ええええ!!」
佐助に政宗、元親の叫び声は、見事にかぶった。
「何だ…公平な結果ぞ?」
ふふん、という風に言い残し、元就はステージへ向かう。
「何で?どしてっ?やっ、そりゃ就ちゃん、イケメンだけど」
「…あいつよりか俺らの方が、大衆受けすんだろぉ?とっつきにくさピカイチの元就が、何で…」
「……」
元親は、空笑している。
「優勝、おめでとうございます!──数々のコメントが寄せられていますが…『きれい』『王子様』『知的』『たまに見せる笑顔がヤバい』『実は優しい』『友人思い』など…」
「…そうか」
「えーと…。これまた、光源氏の慶次さんと、同じような意見も出てますね…『二年になってから激しく変わった』『親しみやすくなった』…」
「…フン」
「あ、照れてらっしゃる?会長のツンデレ傾向は、今や全学年が知る事実となってますからね!諦めて下さい。
──さぁ、これで生徒部門の上位発表は、終わりですが…」
司会者の後ろに釣り下がっている巨大なモニター画面に、一位から十位までのランキングが映し出された。
「え〜、このランキングは、後ほど掲示板にも貼り出されますので、またゆっくり楽しんで下さいね!」
「…やっぱり、孫市は四位だな」
「旦那も四位だ。…優勝かと思ったけど」
「あのな……アレだ。元就の奴、最近、めちゃくちゃ愛想が良いと思ってたんだけどよ…これのためじゃねぇか?」
「あいつが、そんなタマかぁ?」
「だからよ、…幸村を上位に入らせねぇようにするっつーか、あれ以上モテるのを、阻止するためっつーか…(小声)」
「…なるほどね」
「Good job!元就」
「──てかよ、お前ら六位な。同数たぁ、仲が良いねぇどこまでも」
「親ちゃんに負けた…」
「あり得ねえ…」
「女に敵が多いってのに、六位なんてスゲーじゃねーか。てか、失礼なんだよ、テメーら」
ピキピキと、こめかみに青筋を立てる元親。
──慶次たちは席へ戻ると、予想通りの展開に苦笑いした。
「ほらほら、これ貸したげるから」
と、自分たちの受賞記念のクラウンを、二人の頭に載せる。
「あ、二人とも似合うよ!」
周りの席の女の子たちがもてはやしてくれたので、ようやく機嫌を治す二人。
───………
「さてさて、先生部門の発表です!まずはミス・ティーチャー…」
チャラララーン!
「──家庭科担当、前田まつ先生です!」
「おっ!さっすが、まつ姉ちゃん!」
「去年もだったよな、確か」
「おめでとうございます、まつ先生!」
「まぁ、ありがとうございまする」
「これで三年連覇ですね、素晴らしい!──コメントは…『理想の嫁』『可愛い!童顔!』『料理うま過ぎ』『美人でしっかり者は、最高のヒロイン』…本当にですよ。利家先生が、羨ましいことこの上ないですよね、皆さん!」
「ふふ。何も出ませぬよ?そのような…」
「…何か今思ったんだけど、まつ先生、真田の旦那にちょっと似てるかも」
「Ahー…しゃべり方とか、クソ真面目なとことかな」
「お前、シスコンだったんじゃね?」
元親がニヤニヤしながら小声で言った。
「ないない。…てか、元親こそ」
「俺?…姉ちゃんなんて、いねーけど」
「あ、姫姉さまね」
佐助がクスクス笑うと、慶次も「そうそう」と頷く。
「?」
元親は、何のことかさっぱり理解できていない。
「さあ!お次は、ミスター・ティーチャーの発表です!」
タラララーン!
「…数学担当、片倉小十郎先生です!」
『きゃあぁぁ〜!!』
沸く声援は、今までのどの受賞よりも大きい。
「さすが小十郎だな。あいつが真のミスターだ」
「確かにね。男から見ても分かるもん」
「どーやったら、あんな渋くなれんだろうな?」
「あいつは、高校生のときから既に大人って感じだったからよ…真似しようにも、不可能な話だろ」
「そうそう。俺らは俺らで、結構イケてるって」
「片倉先生…あやつが、惹かれそうなタイプだな」
「えっ…」
全員の目が、元就に集まる。
「──『お館様』」
「…おい、あの人と小十郎を、一緒にすんなよ。小十郎の方が、断然スマートじゃねーか」
「んー…でも強いし、男の中の男って感じだもんねぇ。大人の」
「少なくとも、ここにいる誰ともタイプ違うよな…」
慶次も、少々焦りを感じていた。
「今、彼女いねぇの?」
周りの女子に聞こえるとマズい──元親は、さらに声を小さくして尋ねた。
「みてーだな。何か、最近親父が見合いとか、それっぽい話匂わせてるけどよ。知り合いから押し付けられるらしくて、親父も困ってるみてぇ」
「見合いかぁ。片倉さんそんなの必要ないのに、そこまで人気広がってるってことだよね」
「近場で探そうにも、学園は女の先生少ない上に、既婚者ばっかだもんねぇ」
「こりゃあ、いつきの奴、急いで頑張らねーとな」
「…俺より年下のあいつが、小十郎の嫁になんのか?」
「いつきちゃんが高等部出るまで、あと六年ちょいかぁ。片倉さんはその頃…三十三歳?全然オッケーじゃん」
「だな。若い奥さんもらえて、周りから羨望の的だよきっと」
佐助と慶次が、面白そうにもてはやす。…慶次は、いつきを応援することで、小十郎が敵になる可能性を、阻もうとしているのかも知れない。
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