二日目@-2


「鶴姫さん、小野小町賞おめでとうございます!」
「ありがとうございますっ」

「えーとですね、鶴姫さんに投票した方のコメントによりますと…

『可愛い』『とにかく可愛い』『明るくてこっちも元気になりそう』──ですよね!高等部のアイドルと言えば、鶴姫さんですからね」

「そんな〜。照れちゃいます」


『鶴姫ちゃーん!』

会場から、野太い声援が沸く。


「皆さん、ありがとうございます〜!」

鶴姫が手を振った先を見てみると…


「あ、あいつらぁ…!」

愕然とする元親。

「あ、あの人たちって…元親のファンクラブじゃん」

慶次が言うと、

「ファンじゃねぇ!舎弟だ舎弟」
「『アーニキー!』って、いつもいつも熱心だよね。姫ちゃんのファンでもあるんだ?」

佐助も苦笑する。

「あいつら、裏切りやがったな…」
「別に良いじゃねーか、男は女にしか投票できねーんだから」

政宗が、ごもっともなことを言う。

「そーだけどよ」
「姫に悪い虫が付くのが、心配か?」

フッと元就が笑うと、

「ちげ…!」

と、つい激昂しそうになったところを、前にいたクラスメイトたちに、「シーッ!」と諌められ、大人しくなる。


「…えー、他には『負けず嫌い』『物怖じしない』ところが良いっていう意見が出てますね。…意外なんですが、いかがですか?」

「えー…そうですか?自分では、分からないですけど…」

鶴姫は首を傾げるが、

「…あれ書いたの、親ちゃんでしょ」

佐助がボソッと耳打ちすると、知らない振りを決め込む元親である。


「──さて、次は『楊貴妃賞』の発表です!」

司会者の声が再び高くなり、会場が期待の空気に染まる。

「二年三組──織田市さんです!お市さん、再び壇上へお願いします!」


『お市様ー!』


またもや上がる大声援。


「『儚げで守りたくなる』『(学園長の妹なんて信じられないくらい…って読めるかぁ!)絶世の美人』『何か頼まれると何でも聞いてあげたくなる』『あの顔と声で囁かれた記憶を最後に、自分の意思ではない行動をしていることが多々ある』…えー…これは…」

「…(世にも美しい笑顔)」

「──!と、とりあえず、おめでとうございます!」

紹介もそこそこに、次なる優勝者の発表へ。


「…栄えある『クレオパトラ賞』は…」


ブラスバンド部からの効果音も、他より少し長く──


「春からのニューフェイス、二年一組、真田かすがさんです!」


「おおー!かすがちゃんてば、さすが!」

まず佐助がもてはやし、

「やっぱね!俺の予想は当たった!幸がいたら、喜んでただろーに」

と、慶次が続く。

「Hum…。てこたぁ、孫市は四位か?」
「あいつは、男子より女子に人気ありそうだからなぁ」
「そうだな…。孫市に釣り合うと思える男は、なかなかおるまい」

政宗、元親、元就が、うんうんと納得し合っている。

──かすがは、堂々たる姿で壇上へ上がった。

「かすがさん、優勝おめでとうございます!誰もが認めるその美しさですから、当然の結果といえばそうですが!」
「あ…いや…。ありがとうございます」

司会者の勢いに、さすがのかすがも、素直に礼を述べる。

「もう、読み上げられないほどのコメントの量ですが…私は、中でもこれがお気に入りなんです!

『自分にも他人にも厳しいので誤解されがちだが、本当はすごく優しいし、とても女らしい。将来は、必ず素晴らしい嫁になると思う。自分にとっては、日本一の女子だ』

…何ですか、この父親のような素敵コメは!…誰が書いたか、心当たりありますよね?」

「……」

かすがは顔をしかめながらも、目と口は笑っている。

「その顔は、優勝よりもこのコメントの方が、遥かに嬉しいってとこですか!まぁ、そらそーでしょう!
我が学園のクレオパトラは、伴侶にも家族にも恵まれた、超絶幸せ者でした!」



──良いなぁ、かすがちゃん(真田妹)は…


…元親を除いた四人は、心の中で、かすがを羨みまくっていた。


それぞれの頭にティアラが載せられ、賞品を手に、三人は壇上を後にする。

記念撮影は、今までのものより時間を食いそうである。



「さてさて…引き続き、ミスター学園の発表です!──まずは、『光源氏賞』!」


タラララーン!(効果音)



「…二年一組、前田慶次さんです!壇上へどうぞー!」

「うぉ、マジでッ!?」

本人よりも先に、元親の方が驚いている。

「えー…」
「じゃ、あと二人じゃねーか…」

佐助と政宗は、見るからに不満そうだ。


「んじゃ、行って来ます」

慶次は、笑顔で立ち上がるが…


「…まぁ、『光源氏』ってのは、慶ちゃんにぴったりだけどさ」
「所詮、架空の人物だからな、あれだけ」

と、やっかむ二人の声が背中に当たる。
こういうときだけは、仲の良さを見せる彼らであった。


「慶次さん、おめでとうございます!…えー、寄せられたコメントによりますと、『優しい』『背が高い』『マッチョ』『爽やか』『楽しい』…などですね!」

「おぉ〜、ありがとう!」

「顔の良さについては、今さら言うことなしですし。あと、こんなのもありましたよ…『最近、大人っぽくなった』『雰囲気が前と変わった』って。
何があったんですかぁー?この色男さんが!羨ましいったらないっすよ」

「あはは」

「笑ってごまかすなんざ、ベタな真似を!こうして、またもやファンを増やしていくって寸法ですか、こんチクショウ。さっ、さっさと次いきましょーか、ケッ!」

ミスのときより、えらく雑になる司会者である。


「えー…次なる『諸葛孔明賞』は──二年二組、石田三成さんです!副会長、どーぞぉ!」

「ミッチーが、二位…?」
「Hum…優勝は俺か。てめーは、入賞逃したらしいな」
「そっくりそのまま返すよ」
「「……」」

…元親と元就は、完全無視することに決めたらしい。


三成は仏頂面のままだが、お構い無しの司会者は、やはりどこか佐助を彷彿させるものがある。


「副会長、おめでとうございます!え〜、『クール』『寡黙』『モデル体型』『小顔』『シャープな目』…などのコメントがされています」

「『クール』だって。得意の代名詞、とられちゃったね」
「Ha!本当は、お熱い野郎なのにな」
「だよね…色んな意味で」


…一際派手な音楽が鳴り、いよいよ優勝の発表──


「さぁ、優勝──『アレキサンダー大王賞』は、この方…二年一組……」


ごくり…と、司会者を祈るように見る佐助と政宗。

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