一日目@-5


「貴様がいなかったから、来てやったのだ!何故、貴様がそんな物を着ている!?」

「いや、そんなこと言われてもなぁ」

「貴様は虎だろう!それは、真田が着るべきだ!てっきり真田だと思って──」


(…あ、やっぱり?)


佐助と慶次が、心の中でツッコむ。


「真田?別に構わんだろう?中が見えないんだから、誰が何着たって」
「うるさい、黙れ!…よくもベタベタと」

「思い切り、和んでいたじゃないか」
「それ以上口を開けば、斬滅する…!」

「相変わらず面白いなぁ、三成は」

ハッハッハッと、家康は笑顔を絶やさない。

…どう見ても、本気でそう思っているようだ。


「黙れと言っただろうが!──もう良い、黙らせるのみ」

「ちょちょ、やめてよこんなトコで!やるなら、二組でやってよね」

危険な臭いを察知した佐助たちが、さすがに仲裁に入る。


「それにしても、ワシが虎だとよく知っていたな?三成は、そういうところがマメなんだよなぁ」

「…ッ!」

再び、ギロッとなる三成を抑え、

「あー、それ俺様が言ったのよ、ミッチーに」
「そうだったのか」

家康は何も動じていないのに、三成の血圧は、上がっていく一方。


「三成は、何だったんだ?刑部たちは?」
「我は、コアラだった」
「そうか。…えーっと、コアラと虎の相性は…」

「!家康、貴様まさか!?」

「ん?──お、コレよく読んでなかったけど…なになに?コアラ……竹中先生、当たってるなぁ」


「…何ッ…!?」


三成は、教師の結果を見ていなかったらしく、我を忘れたように展示物にかじりつき、


「聞いたか、刑部!?半兵衛様と同じらしいぞ!」
「ああ…(既に知っておったが)」

「秀吉様──秀吉様は…」
「三成、ほらここだ」

家康が指したその先は…





「……………虎、だと…?」

「ミ、ミッチー…落ち着いて?」



「ワシと同じだなぁ」





──ピシッ





「豊臣先生と竹中先生…ワシと刑部も、案外良いコンビに──」

「いぃえぇやぁすぅぅぅ…!」



「ストップストップ!」

慶次や官兵衛も、慌てて家康をかばい立てる。


「貴様ら!そいつの肩を持つなぞ、それでも生徒会か!」

「いやいやいやいや、俺ら生徒会じゃねーし!てか、生徒会メンバーが問題起こすなんて、マズ過ぎでしょーが!?」

「徳ちゃんも、刺激するようなこと言わないの」


佐助の言葉に、家康は首を傾げるばかり。

とりあえず、二人がここから出て行ってくれるか、幸村たちが帰って来て平和な状態にしてくれるか──

それよりも強力に、秀吉と半兵衛がクラスに来て、彼らをまとめて大人しくしてくれることを願いながら、佐助たちはカッカする三成を静めていた。


…頼むから、本多先生(サイボーグ疑惑)だけは来ませんように…!













その頃、政宗と虎の着ぐるみは、一年生の催し物を回っていた。

お昼も結構過ぎていたので、そろそろ三年生が出している出店の食べ物を買って、自分のクラスに戻ろうかと思っていたところ。

大きなイベント会場──体育館や、講堂、グラウンドでは、演劇やバンド演奏などが行われており、なかなかに楽しめるものだった。何故か、光秀は教師のくせに、ビジュアル系ギタリストとして、意気揚々と出場していたが。

初めは四人で行動していたのだが、その内二人ずつで別れることになった。──より、宣伝を広めるつもりで。

元親は、狼とペアである。(と言っても、ほぼ黒い犬と変わらない)


「さて、食いモン買い行くかぁ」

政宗が言うと、虎はコクコクと頷く。

虎は、初めから全く口を聞かない。律儀に、慶次のあの言葉を守っているのだ。
被り物のせいで、音がよく聞こえないということもあるのだろうが。

しかし、どうであれ幸村と二人でこうして過ごせているという事実に、政宗は多大な満足感を得ていた。
一番邪魔なあの二人がいないのだ、こんなチャンスは、なかなか巡って来ないだろう…


「──ん?ありゃあ…」

政宗が前方を見て左目を細めると、虎もそちらに顔を向ける。

そこには、一年生の教室から出てきた二人。
まだ子供のようで、女の子と男の子。少し離れたところから見ても目立つ可愛らしさで、周りの生徒たちが、珍しげに眺めている。


「近所のガキだ。しかも、初等部のよ…」

大して興味なさそうに呟くと、政宗に気付いた女の子が、「あ!」という顔で、こちらに駆け寄ってきた。


「伊達の兄ちゃん!こんにちはー」

ニコニコと、子供らしい笑顔で見上げ、

「兄ちゃんの友達だか!?」

と、隣の虎を見て、ワクワクした表情になる。


「Yes。──お前も、暇なお子様だよな。…てか、デートか?」

のんびり歩いてきた男の子を見て、尋ねた。


「まっさかぁ!クラスの友達だべ。──オラ、民野いつきっていうだ。よろしくな、虎さん!」

女の子は、虎の両手を握ってぶんぶんと振った。

透き通るような銀髪に、高い位置での三編みツインテール。パッチリした黒目に色白な顔が、充分将来に期待できそうな。


「誰が、こんなちんちくりん彼女にするよ?失礼にも程があるな〜」

男の子の方が眉をひそめるが、


「失礼なのは、どっちだべ!おめさん、他に友達すらいねぇくせに」
「別に要らないしー。てゆーか、お前と友達になった覚えもないし」

「お前、確か…」

政宗が、少し目を見開いて男の子を凝視する。


大昔では『魔王の子』と怖れられていた、森蘭丸である。いつきと同じということは、六年生。

確かに、彼女よりかは少し背が高いようだが、政宗からしてみれば、彼もまだまだ幼い。

身寄りがなく、学園長の家で世話になっているらしいが、別に養子ということではないようだ。


「あ、何かのパーティーで会ったよね、伊達?のお兄サン」

どうやら、いつきと同様で記憶はないらしい。

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