実地試験!2
☆猿に見る幸村らしい性格
『乗せられると弱い』
『落ち着きがない』
『早とちり早合点が多い』
『信じやすく騙されやすい』
『目的・指示が明確でないとダメ』
『褒められたいため頑張る』
『手先が器用』
『何事も短期決戦』
「うーん、当たってる!」
佐助の言葉に、うんうん、と頷く四人。
「良いところが、あまりないような…」
情けない顔になる幸村を、
「あっ、ほら『細かいことや小さいことに気が付く』だって。幸、よく人のこと気付いてくれるもんな〜」
と慶次がフォローするが、納得できない顔は全く治らない。
「そうだぞ、幸村。猿は賢いと言われているし、人間にも近い。それにひきかえ、佐助のなぞはこの中でも一番弱い──」
「ひどいよ、就ちゃん!『羊』だってさぁ、頑張ってんだよ?癒し系では、スタンダードなんだから!」
☆羊に見る佐助らしい性格
『気配りができる』
『客観的に物事を判断できる』
『好き嫌いが激しい』
『約束は絶対守る』
『情報収集家』
『お金を貯めるのが好き』
『何事にも丁寧』
『グチ、ボヤキが多い』
『本当の自分を出さない』
「他には『寂しがり屋で一人ぼっちが嫌い』、『仲間外れにされると傷付く』、『感情的になりやすい』だって。ヤダヤダ、どっかの豹じゃあるまいし」
「誰がだ。てか、可愛くねぇ羊だよなー。癒しなんか、微塵もねぇぞ」
「いーよもう。俺様、人気独占しますから。今の流行りは草食系」
「佐助、好き嫌いはないと言っておったではないか」
「食べ物はね。人に対しては当たってるよ」
ニマッと笑う佐助に、幸村は目を丸くするが、
「そうそう。こいつ、嫌いな奴にゃ、とことん冷てーもんな」
と言う政宗に対しても、佐助は何も気を悪くした風でもない。
「この占い見てさ、びっくりしたわ。てか、安心した。やっぱ俺様そーだったのねって。ま、嫌いな奴に無理して優しくすることないじゃん?」
「まあな」
「確かに」
そこは、政宗も元就も同調する。
「誰にでも優しいと、かえって彼女から疑われたりするしね〜…」
ほとんどの視線が、ある人物に向けられ──
「…え、俺?」
苦笑いしながら、幸村の目を気にする慶次である。
「皆に優しいのはダメなのか?」
キョトンとする幸村だが、無邪気な質問だと分かっていても慶次の心にはグサッとくる。
「ダメじゃないけど…」
「ダメだろ」
佐助と政宗がほぼ同時に言い、顔を見合わせる。
代わりに、元就が説明するように、
「自分以外の人間にも優しくしているのを見ると、不安になるのだろう。自分だけを本当に好いているのか、他の人に心移りするのではないか──と」
「そういうものなのですか…」
「ほら、かすがちゃんとかさ〜よく、焼きもち妬いてんじゃん?謙信様と仲良い慶ちゃんに。あれが行き過ぎると、自滅しちゃうのよ」
「何と…」
思わず不安げになる幸村だが、
「いや、あのバカップルは心配ねーよ。嫉妬っつーのも、結構役に立つしよ?あの人も、そういうアイツを見て、可愛いなーとか思ってよ、またラブラブになんだよ。上手くいく奴らは、ちゃんとそういうフォローがあるからな」
元親が諭すように言うと、「なるほど…」と真面目な顔で頷き、安堵の息をつく。
「慶ちゃんの優しさは、ときに罪かもねぇ」
ニッコリと微笑む佐助の悪意など、幸村には少しも伝わっていない。
うーむ…と唸る幸村に、慶次は落ち込んでくるが、
「あ──では…っ」
良いことを思い付いたときの子供のような顔で、
「その…彼女殿──には、他の人よりも、さらに優しくすれば良いのでござる!」
「…(まっ、眩しい…!)」
キラキラとした表情に、今度は佐助や政宗たちの心が、刺されるようなダメージを受ける。
「…しかし、思い浮かびませぬなぁ」
首を傾げる幸村に、「何が?」と慶次が尋ねると、
「…慶次殿の、普段以上に優しい姿が。これより優しくなど……簡単には言えるが、しかし…。──すみませぬ、慶次殿。某、考えが浅く…」
「幸…」
(それ以上言われたら、俺……こいつらの目も怖ぇけど、自分の動悸にもヤられそう…!)
「大丈夫〜」などと、明るく笑い飛ばす慶次だった。
幸村は、ふと佐助の『羊』の『本当の自分を出さない』というところに目をやるが、
(…占いだ。本気にするなど)
と、頭からその考えを取り払う。
「あ…すみませぬ。某はそろそろ」
幸村が立ち上がると、佐助たちは残念そうにするが、初めからその約束だったので仕方がない。
…恥ずかしいので幸村は決して言わないが、女装に向けての特訓をするための、早い門限。
明日の休みも、朝から苦行の予定なのだ。
「…幸、上の髪伸びたなぁ」
当人が去り──慶次がポツリと呟くと、政宗が、
「あれな、コンテストのためなんだと。…てか、何か最近sexyじゃね?髪のせいだけじゃねぇよな」
「…そうだとしても、まーくんのためのものじゃないから、勘違いすんのはやめようね?コンテストのため、でしょきっと。優勝のため、俺様とスキーに行くため」
「お前と、が余計だろ」
「違います〜。旦那に聞いてみたらぁ?」
「俺とも行きてぇって絶対思ってる」
「どっから来んの、その自信。coolってより寒過ぎ」
「お前のが寒ィ。てかキモい」
「そっちのがウザい」
(……小学生……)
他の三人の、海よりも深い溜め息が蔓延する。
幸村がいてもこの二人にそう変わりはなく、彼が被害に遭う前に…と、止める気にはなるが──
(…面倒くせ。気の済むまでやってろ)
投げ出すが、徐々に周りの目が恥ずかしくなり、結局は止めざるを得ない元親たちであった…。
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