パラレル2

驚いたことに、真田くんはマサミのことを知っていた。彼女は高校時代まで剣道をやっていて超強かったから、その世界では全国的に有名だったみたい。

しかも、マサミも真田くんのことを同じ理由で名前だけ知ってたらしくて、destinyだとか何とか言って、興奮してる。

車で二人を送るって聞かないから、私も乗せるのを条件に許してあげた。
ナルちゃんが恐ろしい顔してたけど、私とマサミは真田くんの家を知れるのでニヤニヤが止まらない。


そう、すぐに分かった。…マサミも真田くんに一目惚れしたってことは。

何故って、私たちは外見こそ違っても、中身は嫌になるほど似てたから。


…手強いライバルばっかで、前途多難そうだけど。

障害があるほど、燃えるってね――



真田くんと目が合うと、…あの、甘い笑顔を返してくれたので…


――不覚にも、また失神してしまいそうになった私でした。















(――はあぁぁぁッ!?)



佐助は、文字通り飛び起きた。――頭の中で、ツッコミを入れながら。


(……夢!)


部屋を見渡し、ケータイを確認する。



――うん、夢だ。
俺様は、猿飛佐助、男で高校生で、女でもサヨでも大学生でもない!!


なんっつー夢……ヒド過ぎる。

何だ?あの寒い女…!ベタな展開といい。
助けられるとことか、現実とカブってんのも痛い。
俺様、どーしたのホント…


……あれか。
今日の、女装のせいか…!?


もー…全部あの変態教師のせいだ。
あと、政宗と就ちゃんと、可愛い反応した旦那のせい。


――いや、旦那は悪くない。


旦那が代表者になって、やっぱり嫌だなーとか思いながら帰ってみたら、こんな珍妙な夢を見るとは…


てか、サヨをちょっと楽しんでた夢の中の俺様ヤバい。本気でマズい。
いやいや、俺様にそっちの気はないはず。俺様は男の子…これから先も、絶対、男!


男、男……と、呪文のように念じながら、佐助は再び眠りについた。














俺様の名前は、猿飛佐助。

れっきとした『男』で、顔良しスタイル良し、頭良し外面良しで、はっきり言ってかなりのイケメン。
物心ついた頃から女の子にモテモテで、バレンタインには胃もたれするくらいの量をもらったり、告白なんてどれほどされたやら、もう覚えちゃいない。

ただ、特定の彼女はまだ作った試しがない。
年上のお姉さんとこっそり遊んだことはあっても、それは単なる好奇心からと言うか、ちょっと大人になってみたかっただけで。
男は、つるむとそういうの競いたくなるもんなんです、ハイ。

だから、一見派手でいかにもチャラ男なんだけど、実はそうでもないんですよ〜ってな感じを振りまいてて、それがまた女の子からの人気を集めちゃってます。参ったねぇ。


そんな俺様の朝の日課は、幼なじみの『旦那』をお迎えに上がること!

『旦那』ってのは呼び名で、小さい頃チャンバラごっこしてたときに、ふざけて使ってたものなんだけど…もう癖になっちゃって、今に到る。
だって、ホントに男らしくて、その呼び名がよく似合う人なんだもん。


「佐助、おはよう!」
「おはよ〜、旦那」


元気良く玄関から飛び出して来た旦那に、俺様はヘラリといつもの笑顔を見せる。
旦那は、昔っから変わらない、目一杯最高の笑顔。

眩しい!
今日も心が洗われる…!

パッチリした目に、茶色い柔らかそうなふわふわの髪。尻尾のような後ろ髪が、跳ねる度に揺れる。
身長は俺様よりも低いけど、充分――いや、むしろ高い方だと思う。





――女の子にしては。





……そう、『旦那』は女の子。

だけど、小さいときから俺様と兄弟のように育って来たから、そんなの関係なしにすごく仲が良い。
男友達でも女友達でも、旦那以上に気の合う奴はいない。俺様にとって、最強の幼なじみだ。

旦那は、昔からよく男の子に間違われてて、本人もそれを気に入ってたから、俺様はとにかくずっとそういう風に見えるように、旦那の髪型や服装を指導して来た。

もちろん、旦那が喜ぶからってのが最初の理由だったけど――俺様がそのことに気付いてからは、この行動には、別の理由が後ろに付くようになる。


だって旦那は、



――実は、ものすごく……





……可愛いんだ。





そのことを周りにバレないよう隠すため、それはもう必死の十数年間。

後ろ髪は、家族と女の子と俺様以外の前では、絶対ほどかないよう口を酸っぱくして言い聞かせてる。
…旦那が可愛い女の子だと気付かれたら、俺様なんかよりモテモテで、すぐに悪い虫が付くに決まってる。
と言うより、自分だけの幼なじみでいて欲しかったから、旦那には悪いけど、ずっとそう過ごしてもらって来た。

だけど、旦那は恋愛とかにめちゃくちゃ奥手なので、俺様は、「この行動は、やっぱり旦那のためになるんだ!」と、完璧正当化していた。

お姉さんたちと遊んだのを隠しまくるのは、旦那に「破廉恥!」と嫌われないようにするためだ。

俺様は、とても優しくて頼りになる、兄弟のように心を許せる、旦那にとって『一番』の存在になるんだ。

そう、実の兄弟よりも。


「おはよ〜、カスガ。今朝も機嫌良さそうだねぇ」
「………」

これで、何度目の無視だろう?
俺様は全く気にせず、旦那の後から出て来た、外国の王子様みたいな金髪の美男子に笑いかける。

彼は、旦那のお兄さん。
旦那を溺愛してて、俺様のことを昔から目の敵にしてる。けど、見てくれがこんなんだから、外ではそのシスコン振りを隠してんの。

その隙に俺様が旦那と親密になったもんだから、かーなり良く思われてないんだよね。

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