舞い、降りた5
「Shit…。幸村だけのが、一つもありゃしねぇ」
「ちゃんと言っとかねーからだろ?しっかし、まさかこんな面白ぇ写真、何枚も見られるとはなぁ」
笑いながら、政宗のデジカメの画面を見る元親。
「あいつのだけ抽出したら、全部消してやる」
「後でいかなる目に遭おうとも、覚悟はできておるか…。さすがは政宗」
元就の言葉に、
(…孫市の分だけは残しとくか)
と、考え直す政宗。
──鶴姫宅の客間で待たされている最中の、彼ら。
これだけ聞こえるように騒いでいても、残りの一名は無反応。
(不気味…)
他の三人は、揃って佐助の方を窺う。
少し前までは、
『う〜わ、旦那超美人!本物、見たかったぁー。てか、孫ちゃんの奴、ちゃっかりしてんなぁ。ミッチーたちまで…』
と、一緒になってブーブー言っていたのだが。
しかし、そう思っていたのも束の間、
「皆さん、お待たせしました〜」
ドアが開き、鶴姫に連れられ、着替えを終わらせた幸村と慶次が姿を現す。
「おー、お疲れ〜!」
「お待たせし申した」
互いに声を掛け合った後、
「今日は、本当にありがとうございました。とっても助かっちゃいました!」
「良かったら、来年もまた来てくれよ、な?」
鶴姫やスタッフからの温かい礼などを受け、解散する流れとなった。
「俺らはすぐ近くだからよ。じゃあ、また来年な?」
「良き年を」
元親と元就が、先に足を踏み出す。
「はい、良いお年を!」
幸村が手を振ると、二人も微笑とともに返した。
年明けに近付き、神社への参拝者数は格段に増えてきている。
人混みに負けないよう、歩を進めた。
「じゃあ、俺らもここでな」
「あ…はい」
神社から下の広い道に降りたところで、政宗と慶次が手を上げる。
佐助と二人での話があるのだから、それは好都合。…なのだが。
「ま…さ宗殿…っ」
自分でも訳が分からなかったが、衝動的に彼の手を掴んでいた。
「!どしたぁ…?」
「──あ、…っと、そのっ…」
驚いたような目に、幸村は慌てて離し、
「…良い、お年を…」
ごにょごにょと言い、ふと気付けば、慶次が仕方なさそうな顔で笑っている。
「俺には、言ってくれねーのかなぁ?」
「あっ、いえ…!慶次殿も…っ」
「………」
その様子を静かに見ていた政宗だったが、「Ah〜」と嬉しそうに声を上げると、
「幸村…まだ俺と離れたくねぇってか…。sorry?気付いてやれねーで。お前がそんなに言うなら、俺も」
「じゃあな、幸!…さっけも。良いお年を〜」
「いでででッ!Jokeだろっ?俺も、そこまで野暮じゃねぇって…」
強引に政宗の腕を引き、二人に笑顔で手を振る慶次。
幸村は、そのいつもの明るさに安堵し、政宗の背中を目で追う。
──『生かされている』
あの言葉が頭に浮かび、ある一つの思いを胸に、少しだけ目を細めた。
「…行こっか」
すぐ傍に立ち、穏やかに見下ろす佐助。…しかし、どことなく緊張している様子。
自分は、いつも周りに助けてもらってばかりいる。一人だけでは、何一つ綺麗に解決することができない。
…彼には、一体どれほどのものを、与えてもらって来たことか。
「ああ、そうだな」
──今度は、己が返す番だ。
どんな話であっても真剣に聞き、佐助の顔が晴れるような答えを見付けたい。
そう強く思いながら、幸村は佐助と歩を合わせて隣に並ぶのだった。
‐2011.11.2 up‐
あとがき
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
生徒会メンバーと、親・鶴は、ご近所さんです。就・官以外は、幼稚園も一緒。家康もそうなのに、出せなかった…(;_;)
また不要なくだりですが、つい;
幸村のおめかしを、見てもらいたかったという。
あっさりしてる彼らですが、幸村のことは、結構気に入っとります。
三成も、何故か逆らえません(^^)
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