決別4







「皆さん、今日はありがとうございます〜!よろしくお願いしますねっ」


赤い袴を穿いた鶴姫が、寒さも吹き飛ばしそうな笑顔で、ペコッと頭を下げた。


「姫ちゃん、巫女姿…可愛いっ!」

いつものように、佐助と慶次が調子良く褒め称える。

「ありがとうございます〜!」

至って素直に喜ぶ鶴姫。


「ね〜親ちゃん!親ちゃんは、ああいうの好き?」

「あー…だったら、お前が着てくれるってか?それとも、『姫ちゃんの巫女姿にデレデレしちゃって〜』──か?お前の言うこたぁ、いい加減見え見えだっての」

「あらあら、成長したんだねぇ。お兄さんは寂しい」

ぐすん、と涙ぐむ真似をした後、佐助は幸村に近付き、

「ね、旦那。姫ちゃん、似合うねぇ」
「ああ。何やら神聖な感じが漂っておる」

「旦那も着させてもらっちゃう?赤だし、きっと似合うと思うよ」
「そ、そうか?……んっ!?」

聞いていた鶴姫は目を輝かせ、

「良いですねぇ、同感ですぅ!」


(──巫女…)


幸村と鶴姫の姿を見比べ、ちょっと想像してしまう他のメンバーたち。


「ただ、サイズがないのが残念です。裾が、ちんちくりんになってしまいますね…」

「なぁんだ、そっか〜」

「いや、いくら赤とはいえ、俺でも遠慮するぞ」

残念がる二人に、情けない顔を見せる幸村。

ちなみに、他の面々も、少なからず「惜しい」と思っていた…。


「寒くない?その上のヤツも、薄いみたいだし」

と、鶴姫の、白い着物と赤袴の上から羽織っている衣装を示す。
上等な糸で、鳥などの綺麗な模様が刺繍されているもの。


「下に、あったかアンダー装着済みです!」

任せて下さい、と腕を上げる。


「えーっと、じゃあ今日のお仕事の説明をしますね。と言っても、何も難しいことはないんですけど」

鶴姫は、六人を四・二に分け、

「お二人は、こちらに着替えて下さいね」

と、政宗と元就に、衣装を渡した。

彼女が着ているものの男物のような、渋い色の付いた二着。
それぞれ、青や水色系のと、白や若竹色ので、いかにも二人らしい色合い。


「えー?良いなぁ!」
「カッコい〜。俺も着てぇ」

予想通り、佐助と慶次が羨ましがるが、


「ごめんなさい〜。女性一人と男性二人が一組になって、売り子をやるんですけど…他は、足りてるんですよ。それと、一応大人しい髪色でないとダメで…」

本当に申し訳ない、という風に、鶴姫は手を合わせてくる。


「あー…なるほどぉ…」

全員が、佐助と元親の髪に注目する。


「しかし、愛想のねぇのと目付き悪いのとで、大丈夫かぁ?そーいうのは、佐助と慶次が適役なのにな。おい、どっかにヅラでも転がってねーか?」

「だよねー。絶対お客さん寄って来ないって」
「や、でもさぁ、怖いもの見たさで逆に人気出るかもよ?」

「Hey、黙ってりゃ好き勝手…」

「幸村、似合うか?」

元就は、早々に着替えてしまっている。(鶴姫がいるが、下着が見えないよう上から順に、華麗に終わらせた)

いつの間に!?と目をむく他の四人。


「ええ!よくお似合いですぞ、元就殿!」
「…そうか」

「──はい、毛利さん!それですよ?さっきの微笑み!お客さんにも、その顔で接して下さいねっ」

鶴姫の言葉に、特に反抗せず、むしろ、フッと柔らかく笑う元就。


(あれ?やる気満々…?)

その様子に、目を丸くする佐助たち。


「私が一緒ですから、お二人くらいシャープな感じの方が、ぴったりなんですよ!それに、うちが何の神様を奉ってるか、知っていますか〜?」

もちろん全員知──ったときは、『いかにも彼女の家らしい』と、つくづく思ったものだが…


「『縁結びの神様』ですからね!女性のお客さんが多いわけです。だから、多少愛想がなくてもお顔が素敵であれば…──あ、いえ」


「俺と幸でも、イケると思うけどなぁ」

これは、相当な行列を成すに違いない──着替えた政宗の男前振りに、感嘆の息をもらしながら、慶次が呟く。


「お二人には、途中から、別のお仕事をしてもらうことになってるんですよ〜。それまでは、四人で一緒に、裏方さんです。配りもののお菓子を運んだりですね…。詳しくは、その都度指示がありますので」

「なになに?ってことは、俺様と親ちゃんだけは、ずっと裏方?」

「別のお仕事って、どんなの?」

佐助は口を尖らせ、慶次は幸村とペアなのかと期待に胸を膨らますが、


「夜の、お祭りの目玉…神様の舞があるんですけど、それのアピールや案内係です。会場の、両端に立ってもらって──ちゃんと説明がありますから、安心して下さいねっ」


(何だ…一緒にいられるんじゃないんだ…)


がくっと肩を落とす慶次。

それを確認し、佐助はこっそり安堵する。


「おい、何枚撮らす気だよ…。てか、もう三人で良いじゃねーか」

「そういえば、お二人だけのはまだ撮っておりませぬな。せっかくですのに」

何の騒ぎかと見てみれば、政宗・元就が、それぞれと幸村のツーショットを、元親に延々撮らせ続けている。


すぐに佐助が笑顔で止めさせたが、バイト開始までの時間、売り子三人や、セルフタイマーで、全員の写真を撮ったりなどし、ちょうど良いウォーミングアップになったようだった。

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