スキー研修B-1
※慶次(→)幸村 (就/親が、ほんの少し)
ほぼ二人のやり取り。
慶次の想い、つらつら(@_@;)
苦悩?の末、こんな展開に…。
(→)の()は取れません。ヘタレと思う可能性大。どうしても取れませんでした。
慶次、喋り過ぎですが、良かったら聞いてあげて下さい;
ホテルの設備やサービス等、背景がツッコミどころ満載ですが、もはやファンタジーと解して下され(--;)
……寒い……
──肺が、…凍る。
どうして、このような…
『ピリリリリッ』
頭に響く、小さな電子音。
…数回鳴ると、静かになった。
「………」
辺りは、暗闇に閉ざされている。
いつの間に、消したのか…全く記憶がない。
そもそも、ここは──
覚醒しきらない頭で一瞬混乱するが、すぐに思い出した。
幸村は、ガチガチと震える手で、ケータイに触れる。──午前一時過ぎ。
…何故、こんなに冷えて…?
暖房は、自動で運転しているはず。
そう思い、部屋の明かりのスイッチを押すのだが、どうしたことか、反応しない。
(停電…?)
──しかし、窓から見える他のホテルは、煌々と点いたままである。
ドア近くの、カードキーの挿し込み口をケータイで照らしてみると、正常であるという意味の青いランプが消えていた。…が、エラーの赤いものも、光っていない。
何度か、抜き差しを繰り返してみたが、無反応。
電話は通じているようで、フロントにコールするのだが、なかなか出ない。
エレベーター前にも電話があったのを思い出し、とりあえず上着を羽織り、カードキーを手に廊下へと出る。
…こちらの方が、格段に暖かい。
外の電話で再びコールしてみるが、…やはり、出ない。
もう直接赴こうと、エレベーターのボタンを押すと──
「…幸?」
「!慶次殿」
よほど驚いたのだろう、慶次が面食らったような表情で、こちらを見ている。
自販機からの帰りらしく、片手に缶を握っていた。
「何だよ、起きてたのか?来ないから、絶対寝てるもんと…──どした?」
「え?」
「顔、白…」
怪訝な顔になり、慶次は幸村の額に触れ、
「…!?どうしたんだよ、これ…!」
あまりの冷たさに愕然とし、上着を着ていることのおかしさにも、やっと気付いたかの様子。
「いえ、それが…」
幸村が事情を話すと、慶次の顔は、急激に険しくなっていった。
「とにかく、あったまんねぇと…!」
「あ、あのっ?」
慶次は、幸村の手を強く引き、半ば無理やり自分の部屋へと押し込める。
シャワーから湯を出すと、
「温もるまで、とにかく浴びてろよっ?何なら、溜めても良いし」
「し、しかし」
「俺がフロント行って来っから!幸は待ってな」
早口で言うと、慶次は部屋から出て行く。
幸村は、やや呆然としながらも、温かい空気に身体がほぐれていき、大人しく言う通りにすることにした。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
充分温まってから浴室を出ると、ちょうど慶次が戻って来たのと同時になった。
フロントに問い詰めてみれば、原因は、ホテルの窓と照明を使った、クリスマスのメッセージにあったという。
違う絵に切り替わった際、システムの不具合で、幸村の部屋のものまでダウンしてしまったとのこと。
しかも、勘違いや手違いにより、彼の部屋は、空きであると思われていたらしい。
新しいカードキーを二枚渡され、慶次は戻る前に、一枚を幸村の部屋へ挿して来てくれた。
「もーちょい待ってくれな。まだ、冷凍庫みてーだったから」
慶次はそう言うと、小さく息をつき、椅子に腰を下ろした。
…まだ、先ほどのような険しい顔のままでいる。
「お詫びに何か…とか色々言ってたけど。うやむやにさせるつもりねぇから、無視って来た。明日、片倉さんにお願いしとく」
「…はい…」
幸村は、慶次のピリピリした空気にあてられたかのように、
「すみませぬ…。嫌な思いを、させてしまい…」
と、頭を下げた。
「嫌な思いは、幸がさせられたんだろ?…てより、ひどい目に」
慶次はベッドに座る幸村の隣へ、静かに並ぶ。
「…死…んでた……かも」
口にするのも抵抗があるように、慶次は幸村の手に触れ、少し震わせた。
「慶次殿…」
「お前が、偶然起きてなかったら…。いくら幸でも、ここで暖房ナシは無理だろ…」
辛そうに顔を歪め、そっと、幸村の身体を包み込んだ。
「あ、の…」
「………」
慶次は手と同様、震える声で、
「どこにも行くな…。俺を、置いてかないでくれ……頼むから…」
(それは…)
あの晩、彼がうわ言のように…
「せっかく、…会えたのに。──く…ない…」
何か別の言葉を飲み込むように、途切れ途切れ、呟いた。
「す…みませぬ…。心配を、かけてしまい…」
その声に、幸村も釣られたように小さく震わせてしまう。
慶次の背に手を回したかったが、両腕ごと包まれているので、叶わない。
心配されているのは自分なのだが、彼のその顔を、どうにかして静めたかった。ひどく不安げなそれと、…言葉。
恐らく自分は、彼ら友人に、並大抵ではない思いを抱いている。簡単に言えば──依存。
それまでは、家族にしか持っていなかったその感情が、知らぬ間に拡がりきっていて。
…ゆえに、佐助から本心を聞き出せたときは、実は相当な喜びを感じていた。
自分一人だけであろう、と思っていたので、彼のあの言葉が嬉しくて…
──自惚れでなければ
もしかして、慶次も…
自分のことを、自分と同じほど、思ってくれて…
「いや…──ごめん」
そう言うと、慶次は幸村から腕を離した。
そして、またいつものような笑顔になり、
「あ、そうだ」
と、荷物をガサガサあさり出す。
「……?」
幸村が、不思議そうに見ていると、
「はい、これ。朝渡すつもりだったんだけど…」
と、リボンで口を閉じられた小さい袋を、彼に手渡した。
「…某に?」
「開けてみて」
素直に従うと──
中身は、…クッキーの詰め合わせ。
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