スキー研修A-6


「佐助?」
「カードキー、落としちゃった」

苦笑し、膝を着いて長いテーブルクロスをめくり、下に潜る佐助。


(くそ、見えね…)


テーブルに置いたケータイを取るため、一旦出ようとすると、


「あったか?」

と、幸村が顔を覗かせた。
ケータイ画面の淡い光を、地面に照らしてくれる。


「助かった、ありが…」




──近い。


…遅れて、気付いた事実。




「佐助?」

着いた手に、上から自身のを被せてきた佐助を、不思議そうに見上げる幸村。




(…移れ)


……伝われ。



──祈りのように、力を込める。




「旦那」

佐助は、眉を下げて笑い、



「…すき」



え?と、幸村が答えようとすると、



「──ありっ」

そう続け、佐助は幸村の片手をグイッと引いた。

「う、わっ」

倒れそうになる幸村だったが、佐助が上手く支え、事なきを得る。


「何を──…あ」

幸村が覆っていた場所から現れた、一枚のカードキー。

「佐助、あったぞ…?」


──目を丸くする幸村。…あまりに近いところに、彼の顔が来ていたので。


「…んなことじゃあ、まーくんに奪われちゃうよ〜?」

小声でクスクス笑いながら、幸村の唇を指した。


「なっ…」

一気に燃え上がる、幸村の頬。

「おっ、お前だったからであろうッ?何を、ふざけた…っ」


「ごーめんごめん」

明るく言い、佐助はカードキーを受け取り、クロスを持ち上げた。

「…あら」


──待ち構えたように、しゃがんでいた政宗。


「Hahaha…」
「まーくんも、キー落としたぁ?」

青筋を立てる政宗に対し、あっけらかんとする佐助。

「何もしてないってば。アンタじゃねんだから」
「うるせー!俺をダシにすんじゃねぇッ」
「何のことぉ?」


それからは、聖夜のロマンチックさも、ぶち壊しな二人。
例によって、元親が争いを止めに来る。


(…何なのだ、佐助の奴…)


未だに少々色付いた顔を、冷やすように幸村はグラスを当てた。


その様子をしっかり目にし、密かに喜び笑む佐助。
赤面したのが政宗相手だとしても、胸が弾んで、止められなかった。


(…次は、俺様にさせるからね)


そう心に留め、さらに幸せを噛み締めるのだった。











「んじゃ、後でな〜」


政宗の声に、「おー」「では」「はーい」…などと、返すメンバーたち。


それぞれシャワーを浴びてから、今夜は、政宗の部屋で集まることに。…あのゲームを、夜通し試すつもりである。


(あ〜あ…)


政宗は、お湯を被りながら、溜め息をつく。

予想はしていたが、幸村と二人でいられるシチュエーションの皆無さには、いくら彼でも落ち込むものがあった。

それもこれも、全て佐助のせいだと思うと、憎たらしさも倍増である。

新作ゲームでは、奴より華麗なテクニックを見せ付け、株を上げてやらぁ…と、新たな決意とともに、風呂場を出た。


適当に、ベッドの上を片付けていると──チカチカ光っているケータイが、目に入る。

どうやら、シャワー中に着信があったらしい。


(…メールか)


誰だよ、と開くのだが、



(おッ、マジで…!?)


…何と、誰よりも嬉しい相手から──だった。


何だ何だ?と、ウキウキしながら、スクロールしていくと、


『こんばんは。旅行、とても楽しめ申した。政宗殿のお陰でござる。

いつも、某がそうできるようにして下さり、ありがとうございまする。

今晩は、お世話になりまする。ゲーム、楽しみです』


──いつものように、堅苦しい文面。もちろん、絵文字の一つも入っていやしない。

…しかし、政宗の胸は、ただその言葉だけで熱くなれた。


普通通りでいることなど、少しの苦労でも、何でもないというのに。

幸村がああして楽しく笑っている姿、それを見られる方が、何倍も価値がある。
そのためならば、己の気持ちは後回しで良い。この自分が、そこまで想える相手なのだ。

…だというのに。



(こんだけのことで、バカみてぇ…)


政宗は、自身を嘲笑するが、素直に認めることにする。


(…しゃーねーよな)


今度は苦笑し、他の皆には決して見られたくはない、恐ろしくキザな文章を打つ。

これじゃ、慶次のこと言えねーよ…と、自分にツッコミながらも、メールを送信した。







‐2011.10.6 up‐

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

楽しそうなのを表したい…としてたら、会話だらけに。
せっかくのクリスマスパーティーも、生かせないという。

佐助が強い

すきあり、って……ヒィィ

色々、本当に申し訳ないです(@_@;)

次回で、研修編は終われるかと(^^;


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