スキー研修A-4


「はい、お次は──兄貴&姉御カップルですね。何てお似合い。ホントに高校生ですか、二人」

「…だから、褒め言葉なんかぁ?そりゃ」
「私の方が姉だ。そこは間違えるな」
「何怒ってんだよ、姉御…」
「──別に」
「(幸村とペアじゃねーからか…?)」

女子からも、手厳しい扱いを受ける元親。
…不満げな孫市は、彼の予想が少しは当たっているのかも知れない。

しかし、身にまとう落ち着いた赤いドレスは、彼女の長身によく似合っていた。


「さぁ、おなじみの、熱々兄妹カップルですね!うちのクラスの名物コンビ」

「妙な呼び方をするな」
「今日は、上杉先生がおりませぬからな…」

顔をしかめるかすがに対し、幸村は至ってニコニコ顔。
妹バカは、健在と見える。

かすがは、シックなパープルドレス。髪の毛に映えて、誰もが目を引かれる美しさ。


「おお、孫市殿!良き色ですなぁ」
「!…そ、そうか?(…赤だしな…)」
「はい、とてもお似合いですぞ!」

幸村は、しばらく孫市を眺める。

「…真田?」

孫市が首をひねると、「っああ」と幸村は笑い、

「いえ…あの、コンテストの衣装もよくお似合いでしたが、…やはり…」

「私も女だったか──と、気付いたか」

孫市が小さく笑うと、「いえ、そのような!」と、慌てる幸村。


「お前も、よく似合っている」
「そ、そうでしょうか…」


「……カップル、変更します?」

幹事の言葉に気付くと、二人は周りの注目の的。


「…計算しておらぬぞ。どういうことだ?」
「恋は、突然やって来るものですからねぇ」

「しゃーねぇ。仲良くやろうぜ、謙信様より男前で悪ィけど──って、冗談だろぉっ?…っぶねぇ…!」

「ふん、誰が…。私は姫と組む。お前は毛利と」

「すんませんでしたッ!俺なんか、謙信様に比べりゃ月と生ゴミぐれーの差ですが、どーぞお情けをかけて下さい!何でもしますからッ!」

──何やかんやでペアが入れ替わり、孫市の機嫌は良くなった。

…逆に、元就はしかめ面に変わってしまったが。


「“光と音のファンタジー”だって。外で、何かやるらしいよ?映像とか、雪に映す…みたいな」

と、佐助がのんびり歩み寄り、小さなチラシを皆に見せた。
──その後ろから、慶次と政宗も到着。


「きゃっ!何だか素敵そうですねっ?クリスマスって感じです!」

鶴姫が、らんらんと目を輝かせる。


「…てかさ、孫ちゃん」
「何だ?」

「残念なお知らせだけど、旦那は万人を褒める性質の持ち主なの。──これ、俺様…カッコいいでしょ?」

「………」

激しく白ける孫市。


「『佐助、大人っぽくてすごく格好良いな…』って。そりゃ〜もう、言い表せないほどの可愛い顔で、俺様のこと見てさぁ」

「Ha、至ってフツーの顔だったぜぇ?むしろ、老け顔って意味じゃね」

「いや、そもそも『皆、よくお似合いで!本当に、大人のようでござるな…』──だったよ。個人的に言われたと、妄想変換されてるし…」

「悪ィな、孫市。こいつ、前にも増してネジ飛んでんだ。気にしてたら、苛々が増えるだけだぜ」

元親が、諦めたように首を振った。


だが、本当に全員よく似合っており、近くを通る一般客が、ひっきりなしにこちらを見ているのがよく分かる。
昨日から泊まっている客には、ちょっとした有名人となっている一行。

会場の方を覗いてみれば、誰よりも渋くキマっている小十郎が、ほとんどの女子生徒たちを周りに集めていた。

入口をくぐるときだけか…と、夢破れた男子たちの、哀愁を帯びた背中が切なくなってくる。

そして、男子の方が多いため、佐助、政宗、慶次の三人は、男同士で組む他ない。


「…珍しいな。あいつらが、幸村とのペアを諦めるとは」

「単に、佐助と政宗で、勝負がつかなかっただけの話よ。そなたと組むことになっていると幸村が言った途端、解決した」

「ああ、それで」

孫市は、やっかみを受けているというわけか…と、納得するかすが。
説明する元就は、もういつもの表情に戻っていた。


「誰と誰がペアになる?余った方が、片倉先生と──って、政宗に決まってるか。じゃ、俺とさっけ」

「いや、俺様たちが組むから、先生は慶ちゃんとね」

「えっ!」と、皆一様に、佐助を向く。


「だってよ…ビンゴの賞品、見てみろよ」

政宗が中を指すと…


ステージ傍のテーブルに置かれているのは、最新型の携帯ゲーム機。

発売されたばかりの物で、しかもケンカしないように二台。──話題のソフト付き。
当たれば、二人仲良く、コミュニケーション機能でも楽しむことができる。

…生徒たちが、負担にならない程度の参加金を出し、購入されたもの。


「「あ〜、なるほどな」」

慶次と元親は納得するが、他の面々は戦くばかり。


「こいつらが組むとよ、何でか、やたら恵まれんだよ。昔から」
「クジ運が上がるみたいでさ。どんな理屈かは、分かんないけど」

へー…といったように、二人を眺める一同。
今回の旅行では、常にセットでいるように見える彼らだったが、まさかこんなところでも…


「旦那、当たったら、一台プレゼントするからねっ?この後、一緒にやろうね〜」

「えっ?しかし、それは政宗殿の」
「まーくん金持ちだから、俺様に譲ってくれるって」

「ふ、ざ、け、ん、な?だぁれがテメーに」
「え〜、せっかく旦那喜ばすチャンスなのにぃ?」

「だったら、俺から直接渡すわ!」
「ちょ、ズルい!俺様もそうする!」


(二台もらったって、仕方ねーだろ…)

全員呆れ顔だが、


「二人とも、そのような…。せっかくの物なのですから」

と、幸村は苦笑し、「その場合は、自分で買いまするよ」


「旦那、何て良い子…。旦那が当たったら、俺様もソッコー買うからね?」

「俺、赤買うからよ、そっちと交換しような」

それぞれ、彼らなりの愛を語る二人。
──賞品のゲーム機は、黒と青の二色であるらしい。


「…負けてはおられぬ。我らが必ず頂くぞ、姫」
「はい、頑張りましょう毛利さん!というか、私も欲しいんです!」

「あいつらだけには渡したくないな。頑張れ、かすが、元親」

自分と幸村が当たっても、三人仲良くゲームをやる図が、気に入らないらしい孫市。


(…どう頑張れと?)

胸中は同じに違いない、元親とかすが。


「──相変わらず仲良いなぁ、お前たち」


後でやって来た家康の一言に、その場の全員が、様々な意味合いの笑顔で応えた…。

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