スキー研修A-1


政宗佐助元親幸村元就鶴姫孫市かすが慶次、他、脇役数名。

やり取り三昧です。会話多し。
スキー描写、本当に少ない(--;)

前回のような、佐→幸←政…や、幸村モテモテ状態。色々、分からないことだらけの幸村。

会話で終わってしまう、(ごちそうは食べたはず;…の)クリスマスパーティー等。
長いし、カオスです。













宿泊するホテルはなかなかの造りで、生徒たちは贅沢にも、シングルの部屋をそれぞれに与えられていた。
一クラス分の人数であったからこそ、できたことなのだろう。

全室ダブルベッド搭載の、割と広めの空間。
どの生徒たちも、仲の良い者同士で一つの部屋に集まり、楽しんでいるようだった。

もちろん幸村たちも例外ではなかったが、翌朝も早いので、十二時前には解散した。

(幸村は、その後なかなか眠れず、苦労することになるのだが…)





「………」


政宗は部屋のテレビを消し、ベッドから立ち上がった。

ドアまで行くと、



『コンコンコン』


扉の向こうから、軽くノックする音。



(まさか…)


ふと頭に浮かび、急いで開ける──











「旦那とでも思った〜?」
「…うるせぇ」

「アラ、正直」

佐助は笑い、ベッドに腰を下ろした。


「何の用だよ」
「用なんてないよ。早く寝たら?」

「Ha〜?…って、何してんだテメー」

布団に入る佐助に、ギョッとなる政宗。


「そこで寝てくれても良いけど」
「Hey…何の真似だぁ?」

訳が分からないという風に、政宗は首をひねる。

佐助は笑顔で、

「さっきみたいな行動を、阻止するため」


「………」

「ど・こ・に、行こうとしてたのかなぁ〜?まーくんん…?」

お得意の、笑っていながら、目は冷たく恐ろしいという、器用な表情を見せ付ける。

「飲みモン買いに」
「嘘つけ」

吐き捨てるように言うと、佐助は本格的に寝転んだ。


「…見張んなら、外でやれよ。昨日は、やんなかったくせによー」

「いくらアンタが馬鹿でも、初っぱなからはないでしょ?良かったね、ちょっとは信用されてて」

最低ラインだけどね、と鼻で笑う。


「良いのか〜?お前、告るんだろ?んなことしてる暇ありゃ…」

「俺様、誰かと違って紳士ですんで。純粋無垢な相手に、ベッドの上で〜…なんて乱暴な告白、とてもとても」

「Ah〜?」

政宗は気色ばみ、「今頃気付くような、頭の弱ぇ奴にゃ言われたかねーな」

「それは正解だけど、アンタのあの行為は不正解」

「るせーな、人の勝手だろが」


「………」
「………」


政宗は、諦めたようにベッドの端へ腰かけ、

「…慶次は、放っといて良いのかよ?」


佐助は吹き出し、

「慶ちゃんに、そんなことできる勇気、あるわけないでしょ。…今の今まで、何もできなかった奴が」

「Oh〜、厳しいねぇ」

「だってそうじゃん、いつもなら手早いくせに──…まぁ、こっちとしては良かったけど」

政宗は苦笑して、

「相手が、アレだからだろ。俺だって色々考えて、何度も二の足踏んでたんだぜ?これでも」

「……へぇ」


(まぁ、分かってたけどさ…)


慶次が、何を思って今まで言おうとしなかったか、ということくらいは。

…自分よりも、他人を優先する彼である。
幸村を想い、長きに渡って留めて来たのだろう。

彼のことだから、卒業してから伝えようとでも、考えていたのではないか。
──であれば、あの笑顔を一度も曇らせることなく、自分も幸せに過ごせる。


「…つくづく甘いんだよ、慶ちゃんは。危機感ってのが足んない。だから彼女に振られんのよ、いつも。…優しいだけじゃダメっしょ、やっぱ」


「けどよー、俺が言ったのとお前が自覚したことで、さすがのあいつも決心すんじゃねーの。…良いのか?」

「俺様だって、言うからね」

そう言うと、佐助は意外にも穏やかに、

「慶ちゃんの気持ち初めて知ったとき、やっぱり俺様、分かってたんだわ。…『親友』は、それに敵う立場じゃないって。だから、アンタにああ言われて、ムカついたんだよね、きっと」


「…気持ち悪ィ。そっちこそ、何か素直じゃねーか」

戦く政宗に、「うるさいよ」と笑って睨む佐助。


「だから、自分も同じだって分かって、今度こそ吹っ切れた感じ。だったら、もう怖がることないじゃんって。…同じ武器で、戦える。──アンタらと」

「Haーn…。first love のくせに態度デケェよな、ホント」


佐助は明るく笑い、

「だよねぇ。…これまでも、旦那のこと大好きだったけど、自覚してから、全部がパワーアップしちゃってさぁ。も〜、常にニヤニヤしちゃうんだよねぇ。ぶっ通しで、ハイテンション。毎日嬉しくて楽しくて、参るわ〜。恋って、すげーね」


「Haーha…。てめーこそ、寝言は寝てからにしろや」

オェ、と吐く振りをし、政宗はベッドに倒れた。


「…この時間なら、さすがのアンタでも行かないか。旦那、もうぐっすりだね」

佐助はケータイを見て、ベッドから起き上がる。


「どうせ、無理だって思ってたからさ。今回で、二人きりになるのなんて。それに、せっかくの旅行中に、旦那に余計なもん抱えさせたくないし。これが終わってから言うつもりだったよ、元々」

「Huーm…」

「だから、とにかくアンタを見張っとこーと思ってさ。…良かった、そうしてホント」


「………」

政宗は舌打ちし、布団の中へ入った。


「明日も仲良くしよーねぇ。おやすみ〜」

佐助が半開きのドアの隙間から、笑顔で小さく手を振る。


ゆっくりと閉まる扉に、枕の一つが激突した…。

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