波紋5


「佐助!」


急に叫んだ幸村に、佐助が言いかけた言葉は遮られる。


「な、何?」


幸村は拳を震わせ、

「このような……女々しい自分は、嫌だ…!ウジウジと悩み、どうして良いのか、はっきりできぬのは。

…だが、情けないがやはり分からぬので…!きょ、協力してくれると言うのであればっ、お、教えてくれぬだろうか――!?」


「う、ん――だから…今、それを言おうと」


「――!佐助!!」

パァッと明るくなり、救われたような顔をする幸村に、


「ま、とにかく落ち着いて」

と、カフェオレのおかわりを注いでやる。

リビングの布団群をチラ見し、


(さっきので、確実に全員起きたな…)


まあ、後で言う手間が省けたから良いんだけど。



「旦那、スッキリしたいのなら、もう告るしかないよ」


「――!!」


無言の驚きは幸村ではなく、狸寝入りたちからのもの。


「こくる…?」

「そ、」

佐助は笑顔で、「告白。親ちゃんに『好きだ』って言うの」


「なッ――!?」

火柱でも立つんじゃないかというくらいに、幸村の顔は燃え上がった。


「なっ…はっ…、そ…な――無……理、だ……!」

幸村は、グーッとカフェオレを飲み干す。


「……っ、言って、どうするッ!?そんなの――」
「怖いの?」

「こわッ?」

何が、という風に幸村は目をパチパチさせる。


「親ちゃんが、どういう反応するのかが?
――フラれるのが?」

「ふら……」


サーッという音が聞こえてきそうなほど、幸村の顔色は悪くなる。


「ああ、ごめん。例えばだよ。…でもさ、聞かないと分かんないことでしょ?親ちゃんの気持ち」

「――元親殿の…」

「うん。それと同じで、旦那の気持ちも向こうに言わないと伝わんないじゃん?…それとも、ずっと待ってる?親ちゃんが、旦那に好きって言ってくるの」


(…あ、別にそっちの方向でも良かったかな…)

今になって気付き、少し後悔したが――


「あり得ぬ……!」

テーブルに置かれた両手を握る姿に、


(やば……怒らせたかな…)


しくじったか、と一瞬思った佐助だったが、


「――あり得ぬ。…元親殿が、俺にそのようなことを言うわけがない…」


昨日のカラオケで見せたあの表情を浮かべる幸村に、佐助は急いで、

「だっ、だったらさ!ここは一つ、旦那の方からね…っ?言わなきゃ、ハッキリしないままだよ。それでも良いの?」


幸村は、ぐっと詰まったように、

「それは……嫌だ」


「じゃあ――さ。…どう転んでも、言わないより断然マシだよ。でなきゃ、先に進めない。そんなの旦那らしくない。…って、俺様は思うんだけど」


(うーわー、俺様ってば、超良いヤツ演ってやんの…)


それもこれも、タイムリミットが今日までだと知っているから、できるだけのくせに…

佐助の中では、自嘲の笑い声がこだましていた。


「佐助……」

何も知らない幸村は、目を覚まされたかのように、尊敬の眼差しまで送ってくる。


「旦那、これも試練だよ!上手くいったなら万々歳、そうじゃなきゃ…修行すりゃ良い。
――親ちゃんに、認めてもらえるように」


「…試練――修行…」


大好きなキーワードを並べられ、徐々に力が湧いてきたらしい幸村。


「佐助…!そう思うと、何やら抵抗がなくなってきたぞ!」

「旦那っ…!」


当初の目的忘れてなきゃ良いけど、と少々思いながらも、


「良かった。…元気出た?」
「ああ、お前のお陰だ!佐助は、やっぱりすごいな!」

「え?はは…」


(ぐっはー……罪悪感――)



「――燃えてきた……燃えてきましたぞ、お館様ぁ!この幸村、必ずや成し遂げてみせまする!!」

「ちょ、旦那っ、皆起きちゃうよ」


てか、もう起きない方が不自然だってことに気付こうか、旦那!


「そうと決まれば、気合いを入れなければ!――とりあえずは準備だな。歯磨きして来る!」


幸村は、バタバタと飛び出して行く。


「……ってわけで、皆協力――」

四人に向かって言いかけるが、



「佐助ぇ!」

「はいぃッ!?」


ドドド、と戻って来た幸村に、ビックー!となる佐助。


「ごちそうさまでした!美味かったぞ!すまぬ、言い忘れた」


へなっ、と佐助の力が抜ける。


「あ、ありがとっ、わざわざ」
「俺としたことが、礼儀を忘れるところだった。洗い物は俺がやるからな!」
「や、そんな――」

だが、幸村は聞きもせず再び出て行く。



(…何か、心配になってきた。旦那、本当に分かってるよね…?)


決闘でも申し込むかのような張り切りように、佐助は一抹の不安を感じる。


「――ま、良いか…」

それはそれで、面白そうだし。






「……良、く、ね、え、よ」



――あ。



振り返ると、どんよりした灰色の空気を背負う、落武者のような四人。


「おはよ〜。良い天気だよ?昨日に続き、まさしく行楽日和」

「……」


「さっ、本日の大役には、特別に旦那と同じメニューを作ってあげましょーかね、っと。エキストラさんたちは、食欲ないみたいだけど…」





「――食う!」


せめてもの反抗のように噛み付いた政宗たちだったが、



(絶対、現場は覗き見してやる!!)



と、嫉妬心に加え、好奇心もなかなか大きかったことは否定できずにいた…。







*2010.冬〜下書き、2011.7.31 up
(当サイト開設・公開‥2011.6.19〜)

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

ガ○ダムSEEDの☆さんの声初めて聞いたとき、ホントに同じ人!?って、何度も疑いそうに。色んな声出せてすげえ。爽やかな少年らしい…あれは、そんなイメージ(^^) 絶叫幸村の声も好きですが、普通の状態も艶があって大好き(^q^) ゲーム3の、官兵衛の鍵探し旅の際に、鳥のことを呟くときの台詞。あれも、同じくらい驚いた…何、このクールボイスはと。

で、せっかくの美味しい状況なのに、親幸ラブラブほとんどなくてすみません(;_;) やり出すと、戻って来られそうにないゆえ…

元親、不運(^^;

佐助が、ようやく吹っ切れました♪
元就を見て、あ、なら自分も同じことして良いんじゃ〜ん、と。
自分が一番なら、慶次と幸村がくっ付く心配もなくなるはず♪みたいな。


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