波紋1
※幸村、元親、慶次、佐助、政宗、元就
前回からの続きです。
体育祭の打ち上げ→佐助の家でお泊まり〜翌朝。
惚れ薬のせいで、親←幸状態(^m^) しかし、甘ムードゼロ!またもやシチュエーションを生かせてない…(・ω・)
――カラオケにて――
「元親殿は、何を歌われても様になりまする!」
「お…おお、ありがとよ」
「某の歌は、いかがでござろう…?慣れておらぬゆえ、皆には到底及びませぬが…」
「幸、上手いよ!ねえ?」
「うん、あんまり音楽聴かないとか言ってたのに」
慶次と佐助が、ここぞとばかりに褒めちぎるが、
「ありがとうございまする、お二人とも」
ニコッと笑い、すぐさまその目は元親へ。
じー……
「あ……おう…!俺もそう思う!お前の歌」
「……っ!」
途端に、眩しさで目が潰れそうなほどの、輝く笑顔になる幸村。
「元親殿のお好きな歌はどのような――!?某、それを歌いまする!」
「あ――えーと…」
「こいつの好きなのはな、アイドルの…」
「ああ、今流行りのアレか」
やっかみ半分で、政宗と元就が、アイドルグループ――しかも女の子――の曲を入れた。
「ふっざ…!俺ァ、んなもん――」
――ジロッ
…四人からの、凄まじい殺気。
(テメェ、何格好付けてやがる!――てか、羨ましんだよボケェ!)
これぞ正しい、目は口ほどにものを言う――
俺、被害者なのに……と項垂れる元親である。
「こ、これは女子の……っ」
うろたえる幸村の、後方では黒いオーラ全開の彼ら。
(ケケケ、引かれちまえアニキ)
「しかし、元親殿がお好きとあらば…!某ッ、歌いきってみせますぞぉ!!」
(…あら?)
四人の期待を裏切り、一途にもそのとびきりキュートな曲を歌い出す幸村。
――しかも、何故かとても上手い。
「だ、旦那ぁ……」
「幸……(可愛過ぎる…ッ)」
「おっ前、どっから声出した!?」
「……」
元就は無言だったが、隠した口元は恐らく…
「?」
幸村は、キョトンとしている。
そういえば、彼の声は特別低いというわけでもない。どちらかと言えば、いかにも少年らしい…爽やかで澄んだ声。
普段は雄叫びを上げたり、男らしくあろうと努めているからだろうか、無意識に少しトーンを下げているのかも知れない。
それを、元親のために…
またも腹立たしさの募る四人である。
「いかがでしたかな、元親殿…」
照れたように窺う姿は、まるで…
「おっ、おう!良かったんじゃねーかな、うん」
元親もどうしたものやら、ずっと目が泳ぎっぱなしである。
「ちょ、トイレ」
「あ、はい!」
自分も一緒に、と言い出すのではないかと思われたが、さすがにそれはなかった。
「……」
元親が出て行くと、見るからにテンションが下がり、選曲リストに目を落とす幸村。
巻頭ページには、先ほどのアイドルたちの写真が載っている。
(んな顔すんなよ。…薬のせいとはいえ、傷付くだろ)
苦笑いする慶次だが、今の状況から目を背けることもできない。
そうしても、どうせ気になって仕方がなくなるに決まっている…。
「…幸?」
呼ばれたことにも気付かず、
「……やはり、こういう方々が良いのであろうな……」
可愛い女の子たちの写真を見て呟いた。
「幸――」
今度こそは、その声に反応し、
「…あ、すみませぬ、どうぞ」
と、どこか無理をした表情を見せる。
それは、現在の彼ではまだ見たことがなかった切なげな顔。初めて目にする……つまりは、彼の……
――慶次の胸は、恐ろしく締め付けられる。
(…薬のせい、…だけど)
そんな顔を、自分以外の奴が初めてさせたのかと思うと。
…元親を妬むのは、筋違いだと分かり切っている――が。
とりあえず、頭の中では光秀をボコボコにしていた。
チラッと他の三人を見ると、きっと自分と同じような心境なのは見てとれる。
(…あの顔は、ボコるくらいじゃ済んでないな)
佐助の、冷たい横顔と瞳を見て思った。
――自分も、どこまで耐えられるやら…
知らぬ間に、溜め息をついてしまう慶次である。
元親が戻ると、幸村が空いたグラスを指して、
「何を飲まれまするかっ?某、注いで参りますので!」
と、実に甲斐甲斐しい。
いつもなら、佐助にやってもらう側だというのに。
ドリンクはセルフサービス制で、部屋から出た受付カウンターの前に設置されている。
「あっ旦那、もし良かったら皆の分も頼めるかなぁ?」
「ああ!任せろ」
佐助が、幸村にトレイを手渡し、
「皆、アイスティーで良いよね?――旦那、悪いね」
「大丈夫だ!では、行って来る」
幸村が張り切って出て行くと、佐助は自分の入れた曲をイントロで停めた。
「佐助?」
「……親ちゃん、お願いがあるんだけど」
何やら神妙な顔になっている。
「あー…」
元親は、予想していたような表情で、
「だよな。俺、もう帰った方が良いよな?幸村のためにも」
と、腰を上げるのだが、
「え?違う、そうじゃなくて」
佐助は、手を合わせて、
「お願い!――旦那のこと、好きな振りしてあげて!…薬が切れるまで」
どうやら冗談ではないようで、頭まで下げて頼み込んでくる。
元親も、他の三人ももれなく驚愕した。
その内容にもそうだが、あの佐助が、他人に……それも、元親に首を垂れるとは。
「ちょ、ちょっとさっけ…何言ってんだよ」
そんなことになれば、さらに心穏やかではいられないだろう慶次が、上ずった声で言った。
「そうだぜ、お前」
「どういうつもりだ」
これ以上見せつけられてたまるか――という面々である。
「だって――」
ガバッと上げた佐助の顔は、苦悶に歪み、
「俺様、耐えらんない――旦那の、あの顔!親ちゃんは、やっぱり自分なんか好きになるはずないよなって思って…苦しそうなの」
「――え」
驚いたように元親が慶次を見ると、
「…まあ、うん。ほら、その子たちの写真見て……落ち込んでた」
「――……」
少し感じ入るように、元親はそれを見つめる。
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