災難4


「彼のようなシャイな子は、一体どのようになるのやら。後で、報告お願いしますよ?」


「冗談――」

ギッと睨むが、


「それなら仕方がありません。やはり私にして、明日まで彼をお預かりするしか…」

と、光秀は幸村のハチマキに手を掛ける――


「や、やめろっ!報告しますから!!」

青ざめて即座に止める慶次たち。



(後で覚えてやがれ…絶対、弾劾してやらぁ…!)



「――で、どーするよ?誰にする?」


元親が、四人を見渡す。


「…武田先生?」

「いやー、やめとこう。妻子持ちだろ?家に押し掛けたりしたら、色々面倒くせーことになりそうだ」

「ジャンケンで決めるか」



「……俺、やめとく」


慶次はスッと一歩下がり、



「――怖い」



…それは、色んな意味で……なのだろう。



「かすがちゃんが良いんじゃね?明日の休み潰しちゃって、可哀想だけど」
「あっ、名案!」

「肉親には効かないんですよー…フフフ…」

「Oh〜…しゃあねーな。んじゃ、俺が」
「何言ってんの、一番危険でしょーが。(てか、どこが仕方ない顔?)…ここはやっぱり、就ちゃんでしょ」


「ああ――では……」

元就は幸村の前に立ち、四人を振り返り、

「……良いのだな?」



(うっ――)


何、その意味深な台詞……!





「――って、ああ。…なーんだ」

佐助が、ぽんっと手を叩いた。


「さっけ?」

「や、よく考えたらピッタリな奴がいるじゃん」
「え、誰?」


「ほら、とっても、とーっても安全な…」

ガシッとその肩を抱き、




「よろしく!アーニキっ!!」




「――俺!?」


元親が、ギョッとする。




「…あ〜……」

なるほど、という顔で頷く一同。


「――意外。さっけが身を投げ出すと思ってたのに。『旦那の名誉のために、俺様がー!』とかってさ」


アハハ、といつものユルい笑いとともに佐助は、

「もし、旦那の馬鹿力で熱い抱擁でもされたら、骨イキそうじゃん!そこいくと、親ちゃんの頑丈さなら心配ないでしょ?」

と、いかにも嫌がっているように振る舞う。


実際、惚れ薬なんて信じていやしないが、本当にそうなったら困るなと思い、辞退したかったのだが。もちろん、骨が折れることを怖れて、だ。

…本当は、それ以外にも何かあるような気もするが――すぐに出て来ない漠然としたものには、考え囚われない方が利口である。
…時間を、無駄にしないためにも。



「さて、決まったのならば、早々にお願いします」


光秀が、幸村のヘッドホンを外した。


「お、おい…」


(俺、まだ良いとか言ってねぇしっ)

と、小声で言う元親だが、周りの脅すような目に、すぐに覚悟を決めさせられる。



(しゃあねぇ……幸村のためだ。てか、んな薬あり得ねーし…)



深呼吸して、幸村の前に立った。


「うー……頭がガンガンしまする…」

大音量で聴かされていたせいだろう、幸村は軽く頭を振る。


「ねー旦那、…明智先生に、何か飲まされた?」


「……?いや…?」



「!!!」



――な、にィー!?嘘だったんか!!?


コイツ、俺らの反応楽しんでただけかよ!!



そう光秀を見ると、またあのニタニタ笑い。



「なーんだ、もう…」

佐助が胸を撫で下ろし、幸村のハチマキを後ろからほどいてやる。

パラッとなったところを、前にいた元親が手に取り、

「いや、良かったぜ。まあ、んなもんハナから信じちゃなかったけどよ」

と、幸村の肩に手を軽く置き、ホッとしたように笑った。


「――元親殿」


茶色の大きな瞳に、元親の顔が映し出される。


「…チョコレートなら、あげましたけどね。もう放課後ですし良いじゃないですか、武田先生には内緒にしときますから――と」



――チョコ。



(……何か、嫌な予感)



そう思う佐助たちだが、元親はすっかり安心しきって、

「さ、帰ろうぜ。打ち上げすんぞ!」


夜は佐助の家に泊まる手筈になっており、皆荷物持参である。

ちなみにかすがは一日くらい一人で平気だと言ったのだが、幸村があまりに心配するので、結局謙信の元へ行かされる羽目になった。
…と言っても、逆に嬉しかったことだろうが。


「ほれ」と、ハチマキを幸村に渡そうとするのだが、


「……元親殿のハチマキは…?」

と、何故か受け取ろうとしない。


「俺の?教室にあるけど」

首を傾げる元親である。


幸村は、ぱあっと顔を明るくし、





「交換して下され、某のと!!」





――元気ハツラツ、という言葉がぴったりの。


なので、一瞬理解が遅れてしまった。…その台詞の意図を。






「ええぇぇぇ!!」





五人の叫び声は、それは見事にカブッてしまった――







*2010.冬〜下書き、2011.7.26 up
(当サイト開設・公開‥2011.6.19〜)

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

ものすごくとんでもねぇ展開ですみませんヾ(=^▽^=)ノ どーしてもやりたかったよこれ♪

光秀大好き(o^o^o) 公式パロの設定、何て美味しいんだ、これはこの薬作ってもらうしかない!と。

長編シリーズでは、元親は幸村に恋愛感情抱かないんで、何かやってみたかったんですよ。すると、こんなことになったという。
でも、彼を優しい兄貴的立場にさせることにも萌えてまして。実は元親贔屓してます(^m^) 祭りのときに一番最初に幸村の姿に気付かせたり。幸村も元親のことが大好きです♪

体育祭、色々楽しいことができそうなのに、知恵がなく; そこからの無理過ぎる流れ(^^;

佐助は、今までの体育の授業ではあまり力を出してなかったということで…。リレーで、他の生徒を応援したり褒めたりする幸村を見て、隠してた速さ以上の本気を出しちゃいました無意識に、みたいな(^q^)

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