Mからの助言1
※佐助、慶次、元親、孫市、政宗
佐助の悩みに、三人が付き合わされます。
初めに、佐+慶がちょっぴり、その後、
佐+親、佐+孫、佐+政 な流れです。
幸村の出番なし(泣)
季節は秋――
体育祭が近付き、生徒たちは体育の授業や放課後など、準備に忙しい毎日を送っていた。
幸村や元親などはそれはもう燃えていて、お祭り騒ぎが好きな慶次も然り、政宗は同じクラスゆえ幸村と争えないのは不満らしいが、一位を獲った数を競うことになってからは、たぎる一方である。
佐助と元就はそんな彼らと違い、そこそこ頑張りましょうかね、という程度のもの。
見た目と違う、元就の運動神経の良さには、誰もが当初驚いたものだ。
高等部全体が熱気で沸いていく中、佐助は夏休み後半から続くモヤモヤを抱えながら、普段はそれを隅の方に押しやる日々を送っていた。
「さっけ!」
佐助を悩ませる張本人が、眩しいほど爽やかな笑顔で歩み寄って来る。
「おー、おはよ〜」
何でもない顔で応対するのは、佐助の十八番。――というより、最近はめっきりこれに慣れてしまった。
「調子、良くないって?」
ギクッ…
それは、あくまで佐助の中でのみ聞こえる音。
何が、と聞き返す前に、彼のバイト先のショップ袋を手渡された。
「え?」
お菓子?
そんな気を遣わなくても…と中を見ると、
「!!」
(調子って、慶ちゃぁぁぁん!?)
誰だ、んな失礼なこと言った奴!
「政宗から借りたヤツだけど、さっけにそのまま渡して良いって。これで元気になれ!」
「ちょ、慶ちゃん声デカい」
さすがに周りの目を気にする佐助だが、慶次は豪快に笑い、立ち去って行く。
「……」
佐助は、恐る恐るもう一度中身を確認した。
◆◇◆ 第一のM 『被害者』◆◇◆
「……どう思う?」
誰もいない放課後の教室、佐助と元親の間の机に置かれた、慶次からの贈り物。
「どうって?」
元親が中身を取り出す。――DVDが二枚。…内容が、ピンクの。
「…お前の後、俺も借りよう」
吟味するようにパッケージを眺める元親に、
「一瞬、見るの怖かった」
と、佐助は両手で顔を覆った。
「は?何で」
別に怖いとこなんて、と元親は二つを見比べる。
「どっちも、スレンダー茶髪ロング目デカもの――だったら、どうしようって」
「……は?」
元親はもう一度二枚のケースを見直すが、全く当てはまらない。
「貧乳…って言った方が良いかな」
「意味が分からん。何、お前そんなにそういうの嫌なわけ?ありゃーあれでイイところが」
「じゃなくって…!」
佐助は必死の形相で、「てより、筋肉質?アスリート系とか?」
「……何の話だぁ?」
いよいよ話が見えない。元親は訝しげに眉を寄せる。
「だからさ、」
少しためらい、小声で、「旦那に似てるのばっかだったら、どうしようって――」
「……はあ?」
元親は、素っ頓狂な声を上げた。
対し、佐助はもどかしそうに、
「っもう、何で分かってくんないんだよっ。…慶ちゃん、旦那のことが好きなんでしょ?だから…」
ポカンと元親は口を開け、「…スゲェ妄想」
次の瞬間、笑い出した。
「お前……バカだろ。それとこれとは、また別物だろーが?」
「えぇぇー……」
佐助は納得できないように、「てかさ、旦那が好きなのに、こーいうの見るの?…女の子だけど?」
「お前も彼女いたって見てただろ。俺もだけど。それと変わんねーよ」
「あー…まあ、…そうか」
「それに、あいつは嗜好が男になったんじゃねぇ。幸村に惚れただけだ」
「……的確な答えをどうも」
はあ、と佐助は息をつき、
「皆、すげーよな。…何で普通でいられんの?親ちゃんなんて、応援しちゃってるし」
「…お前も、普通にしてんじゃねーか」
「俺様だからできんのよ?コレ。並々ならぬ精神力使ってんだからね!?……だって、旦那に心配かけたくないしさ」
しょーがないでしょ、と口を尖らせる。
「ま……別物ってなら良いのか…」
佐助は、一人言のようにブツブツし始めた。
「…もし、本当に幸村似ばっかだったら、どうしてたよ?」
からかうように元親が尋ねると、
「え?――そうだな……」
佐助の瞳に、スッと黒いものが落ち、
「とりあえず、その場で蹴り入れるね――ここに」
と、元親の脚の付け根に自分の脚を押し当てる。
「うおッ!バカ、ちょっと当たっただろ!」
ゾッとしたように、元親は椅子ごと思い切り後ろへ下がった。
だが、さらに冷え冷えとした表情になっていた佐助に、情けないがそれ以上に凍りつかされる。
(余計なこと言っちまった……)
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