苛立ち1


佐助幸村元就

佐助の思考、佐+幸、佐+就 な流れです。

が前回の祭りの続き、は別の日

佐助が、色々おかしく、しかもひどいです。

後書きで言い訳(^^;














『この――ヘタレが』


そう冷たく言い放つ元就の声が頭に浮かび、グサグサと佐助の胸を刺す。



『あれほど、幸村の前では普通にしろと――…まあ、気持ちも分からんではないが』

『…でしょ?だって、あんなの見せつけられて…。慶ちゃんの気持ちが分かってるこっちとしては、色々想像しちゃうし!恥ずかしいったら…』

『ふん、先ほどは幸村をとられたくないなどと、泣いておったくせに』

『いやいや、泣いてはないです!』

『だいたい、幸村はいつお前のものになった?阿呆が』

『ア、アホって……』

『慶次も慶次で、とんだヘタレだな。あれはもう、好きだと言っているようなものだろう。幸村には全く伝わっていないが』

『うん…。旦那には超分かりやすく言わないと無理だよね――』





――そんな話をしながら帰ったのだが。


祭りで運良く小十郎に会え、一緒に伊達家まで戻ると、浴衣はそのまま返して良いと言うのでお言葉に甘えることにしておいた。



(…今日は何か、色々と疲れたな…)


ささっとシャワーを浴び、佐助はソファで横になっていた。

先の数時間で、いかに慶次が幸村を想っているのか、つくづく思い知らされたことを考える。

初めて見るあの顔は、きっと今までにない真剣な…

それがどうして同じ男である幸村なのかと思いはするが、理解できてしまうからどうしようもない。

ただ、昔から女の子好きな彼だったので、意外というか何というか…


――それほどに、彼を。…彼自身を。



はあ、と佐助は溜め息をつく。

政宗たちの前で取り乱してしまったことを、悔やんでいた。

冷静さは誰より勝ると自負していたので、非常に情けない。何故、あんな子供のようなことを言ってしまったのか…。

確かに、幸村に友達の中でも近い存在のように言われ、この上なく嬉しくて。
強欲にも、家族『同然』ではなく、それ以上に親いところにまで行きたくなった自分がいた。

今思えば、恐らく恋人以上にも近くて大事な者になりたいとまで望んでいたのだろう。

佐助がこんな風に思ってしまうのは、これまで付き合ってきた恋人たちが、家族や友人よりも重要さが下であったから――なのだが、本人はそのことに気付いてもいない。

以前は、心の底から想える恋人の出現を望んでいた。
だが、幸村と出会ってからは、今はまだ必要ないなという考えに変わっていた。そんなことを思う暇がないほど、彼といると…。

とりあえず今はこうして自分に一番心を許してくれている幸村が、それ以上の全ての心とともに、いつか他の誰かの元へ行ってしまうのかと思うと。
…素手でわし掴みにされたかのように、胸がギュッとなる。

これまで体験したことのないものだったので、佐助は戸惑うばかりである。

今日の祭りでも、多々…


(俺様、どっか悪いのかな…。不整脈とか?)


一度病院で診てもらおうかと、半ば本気で考えていた。



(…我儘…だよな、こんなの)



大人にならなきゃって、あのとき思ったばっかなのに。
慶ちゃんなら旦那をきっと大事に――とか言ったのは俺様自身…


しかし、劣等感にも近い憧れを抱いている慶次なのだと思うと。

幸村が彼を嫌うはずがない。――世の中には色んな愛があるのだと教えたのも、自分…



(――ああ、もう)



読もうとした本の内容など、全く頭に入ってこない。



(…えっちぃヤツでも見ようかな…)



リビングに置いてあるパソコンを点け、元親から借りたDVDを部屋から持って来る。
防音機能も完備されているマンションだが、一応ヘッドホンも着けるところは用心深い佐助らしい。

最近は、朝から晩までほとんど皆と遊んだり、学園に行き生徒会の手伝いをしたりで一日が終わる毎日だ。
このDVDも、ずっと前に借りたきり一度も見ていないのを思い出す。


(旦那といると、自分までこういうのあんまり考えなくなっちゃうんだよね…)


佐助にもあの純情さが移ったかという意味ではなく――それとこれとは話がまた別で。

画面の中の綺麗なお姉さんの、そのツヤやかな唇を見ていると、



…思い出してしまった。



あの、クレープのクリームを舐め取る、幸村の唇と舌を。



(絶対、慶ちゃんいかがわしいこと考えたね、あれは)


…てことは、旦那とこーいうのしたいとかも思ってんのかな。


佐助は、素直に感心してしまう。
年上の女性などとも付き合ったことのある自分たちだが、いくら慶次でも同性は初めてだろうに、既にそこまで考えられるなんて。



(つまり……それくらいに…)



すごく好きだからキスしたい――なんて気持ちも抱いたことのない佐助には、やはり想像すらしがたいものである。



(……あー、ダメだ。燃えねーや…)



やはり疲れているのかと、再生を停め、ヘッドホンを外した。



『ピンポーン』


タイミング良くチャイムが鳴り、時間を見てみると十一時前。

誰だ、こんな時間に。
まさか父親じゃあるまいな、とインターホンの画面を見る。

オートロックのマンションなので、こちらが解錠してやらないと建物に入られない。


しかし、そこに映っていたのは…



「え――旦那!?」

『佐助…』


何やら、すまなそうに立つ幸村の姿。


「どうしたの!?――ちょ、待って、すぐ開ける!」
『あ、玄関で良いから…』
「とにかく、すぐ上がって来てよ!」


パッと開け、待ちきれないように玄関から外へ出る。

すぐにエレベーターの着く音がし、佐助は扉の前で幸村を出迎えた。

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