砂浜編3


「大分上手くなったね、二人とも」

佐助が、幸村と三成に向かって楽しそうに、

「やっぱセンスあるわ〜。俺様たちより覚え良いんじゃない?ねぇ」


「ホントホント。さっすが」

慶次もニコニコと頷く。


「お二人の教え方が上手いからでしょうな!」

息を切らせながら、幸村が応えた。

やってみると、かなり体力が要ることがよく分かったのだ。


「ふん、こんなもの難しくもない」

三成は自信たっぷりに言い放つ。


「――向こうも、随分上達してるなー」

元親たちの方を見ると、彼らはそれぞれ好きにやっており――たまに二人が女の子に手を貸したりしている。


「モテモテじゃん。俺様も、向こう行けば良かったかなぁ」
「何だ、そうして良かったのに」

あはは、と笑う慶次。

「冗談だって。邪魔しちゃ悪いっしょ」

佐助は、完全に面白がっている。


「あれ?ミッチー、戻るの?」

砂浜の方へ泳ぎ出した三成に声をかけた。

「ああ――少し休憩してくる」

「じゃ、俺途中まで送るわ。結構疲れただろ」

慶次が三成のボードも支えてやり、「さっきよりも波出てきたから、気を付けねーと」

佐助と幸村もしばらく小休止と、ボードを傍らに波に揺られることにする。


二人の背中を見送っていた佐助だが、

「――慶ちゃんって、ホント優しいよねぇ」

「え?」

噛み締めるようなその言い方に、幸村は戸惑うが…


「…そうだな…。誰もが心を開いてしまいそうな…、何というか――安心感…があるな」

「――だよね。…俺様、憧れなんだー……あの性格」


「え…」

幸村は、二の句が付けられなかった。


(――佐助が、他人を羨むということがあるのか…)


佐助だけでなく、政宗たち他の皆に対しても、きっとそう思ったことだろう。
それほどに、あの友人たちの中には、自分に自信のない者は一人もいないと感じていた。

特に、いつも余裕たっぷりな佐助である。幸村が驚くのも、無理はない。


「俺様とは、全然違うからね。だからこそだろうなって」

苦笑いが浮かぶ顔へ、

「…佐助も優しいじゃないか」


「俺様の優しさは、あーいう本物のやつとは違うんだよね〜。俺様、気に入った奴にしかそうしないし、自分のためにしてるだけだからさ」

「……?」


クスッと佐助は笑い、

「俺様の気に入った人はさー、優しくすると、それ以上に返してくれんの。嬉しいものを、たっくさん。俺様はそれがすっげー欲しいから、優しくする。――ね、結局自分のためでしょ?」



(そう……か?)


――本当に?


幸村は、心の中で首をひねる。



(…俺には、そうは思えない…)




「――別に良いじゃないか、それでも」
「え?」

「自分のためだろうと、何だろうと。そういうものが返ってくるのは、相手も嬉しいからなのだと思う」

「……」

佐助は、何か言いかけてやめたようである。


「優しさは人それぞれだ。理由がどうあれ、向けられた相手がそれを温かいと思えば、その人にとってはそれが佐助の優しさになる。

…俺が思うに、佐助は気に入った人たちには特に優しくしたくなる性分なんだ、きっと。

逆を言えば、その人たちからこそ返してもらいたいんだろうが、それを知って残念に思う人などいないはずだ。好意が前提にあるのに」


「――旦那…」

佐助は照れたように、「じゃあ、旦那もそう思ってくれんの?」


幸村は少し笑いながら、

「俺も入っているのか?佐助の気に入る人の中に」

「当ったり前じゃん!てか、一番だよ」

サラッと言われ、一瞬圧倒された幸村だが、


「――ん?一番は慶次殿なんじゃ…」

「憧れるのはね?もちろん好きだよ、慶ちゃんに限らず、皆。…でも、俺様が一番好きで一緒にいたいのは、旦那だなぁ」

「そ、そうか…」

さすがに少々頬を染め、「友人にそのようなことを言われたのは、初めてだ」

「あ、俺様が言ってもアレかも知んないけど――」

「いや、嬉しいぞ!俺も…」



「あ――」

佐助が顔を固くしたので、

「……?」

背後を見ると、割と――いや、かなり大物の波。


「旦那、気を付けて!デカいよ!」

「ああ、大丈――」



クラッ



(――え?)



「旦那!?」


驚く佐助の声。



幸村は軽い目眩に襲われ、ボードから手を滑らせてしまった。

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