試合編4


「し、しかし秀吉様」
「――大谷くんは、行きたそうだよ?」

半兵衛の声に振り返ると、吉継は小十郎に頭を下げているところだった。


「刑部!?」
「三成…いかぬか?」

「何故、」

こんな奴らと、と続けたいのだろうが――


「帰りは車で送ってくれるらしいぞ。…助かる(電車より、車の方が何倍も快適だ)」

「う…(そうか、ここに来るのも私がしつこく誘い…。刑部は、暑さや人混みに弱いというのに)」

「それに、ヌシと旅行など楽しかろうと思うてな…(こやつらの動向は見ていて飽きぬ。そこにヌシが入ればさらに面白い)」


「刑部…」

三成は、小十郎に向き合い、

「片倉先生、お世話になります」


「Ohー…」

がっくり項垂れる政宗の背中を、佐助は励ますように叩く。
すぐに掴みかかってくる腕を、飄々とかわした。


「俺らは大部屋なんだよ。夜、遊びに来いよ」

元親の言葉に、元就や幸村も二人を誘いだてする。

「私たちもその予定だ。――どうだ、たまには」

孫市が言うと、吉継が微笑し――その顔を見て三成も柔らかい表情を一瞬見せたのを、佐助は見逃さなかった。





「――やあ、諸君!健闘、ご苦労様じゃったの」


突然そう言い現れたのは、白髪に髭をたくわえた立派な身なりの、一人の老人。

学園を運営するグループのトップである人物、北条氏政その人だ。


「北条のおじさま!ご無沙汰しておりますっ」

鶴姫がペコリと頭を下げ、幸村とかすがもそれに続いた。

え?というように見る佐助たちに、

「北条殿は、お館様のご親戚にござる。某たちも、昔からお世話になっておりまして…」
「私は、両親がおじさまの会社で働かせて頂いてるんですっ」

と、説明する。


「三人とも、ええ子らじゃ。元気にしておったかのう」

氏政は相好を崩し、「信玄は、さすがに少し寂しがっとったぞい?早くも嫁に出させてしまうとは――と」

言われたかすがは、頬を染めた。


「――フム」

しばらく幸村と鶴姫を眺めていた氏政だったが、

「よし、決めたぞい!」

きょとりとする二人へ、楽しげに言った。


「二人は似合いじゃな!皆、そうは思わんか?――どうじゃ、これを機に…」



(まさか、「付き合っちゃえば〜?」とか、そんなノリ!?いい歳こいたじいさんが――)



「ダメダメダメダメ!絶対、ダメ!!」

「そんな、見た目でなんて!恋っつーのは、もっと中身も見てから――」

「こいつにゃ、まだ早ぇーって!こーいうのは、まず手慣れた奴が教えて」

佐助、慶次、政宗が同時にわめき立てるが――


「…ちょっと政宗、お前言ってること、メチャクチャなんだけど?」

慶次が黒い笑顔を放つ。


「おめーも同じこと思ってっだろ」

負けじと、不敵な笑いを見せる政宗。


「い、や〜…、やっぱ、そういうのは本人たちの意思が重要かと…」

佐助は引きつった顔で氏政に進言する。


「……まあ、もっともじゃが――」

と、二人に哀れっぽく、「どうじゃ?老人の、数少ない願いだと思って聞いてくれんかの?」

「ちょ…っ」

止めようとする三人の声は届かず、鈍感な幸村と鶴姫は、純粋な瞳で氏政の言葉を待つ。



「実は今度、学園のパンフレットを新しく作る予定なんじゃが…。二人にモデルを頼めんかと思うての」



ええっ!と、幸村たちは目を見開く。



(……モデル!?)


時同じくして、佐助たちは自分の言動をかなり後悔した。――恥ずかしさに加え。


「イメージがぴったりなんじゃ!――中等部の方じゃが」

最後の台詞に複雑な顔をする二人。

「や、気を悪くせんとってくれい。初等部の方も、中等部の生徒に頼んだんじゃ。大人っぽさを出すためにのう。芸能界でも、大抵そういうことするじゃろ?」

悪戯っぽく笑う氏政である。


「旦那、やってみたら?俺様、旦那が中等部の制服着たとこ見てみたい!絶対似合うよ」

佐助の切り替えの早さは、さすがに他二人は真似できなかったが、確かに似合うだろうとは思った。


「だ、だが…」
「責任重大…な気がしますよね」

ひく、と鶴姫が笑う。


「お鶴ちゃんにしたいとは、前々から思っとったんじゃがな。――のう、風魔」

いつの間にいたのか、黒いスーツを着た青年が、氏政の隣でこくりと頷いた。

赤毛の髪で、佐助と同じように頬と、こちらは顎先に赤のペイントを施している。
目は髪が被さり見えず、ミステリアスな雰囲気だ。


「……!」

幸村でも分かるほど、鶴姫の表情が明るく桃色に輝いていく。


「こやつが、女の子はお主を、と推していての――」
「やりますっ!いえ、是非引き受けさせて下さい!!」



キラキラキラキラッ――



幸村とかすが、いや、その場にいた他の全ての者も、目を眩ませる。



(す、すごい……!)


これが、姫殿の、『きゅううん』――



「頑張りましょう、真田さん!」

「う……うむ」

知らぬ間にすることにされてしまったようだが、そのバラ色の頬といくつもの星がきらめく瞳には、決して逆らえない。


――鶴姫の想い人は、名を風魔小太郎と言い、氏政の秘書兼ボディーガードを務める人間だと、後に分かった。


会場から旅館へ戻る途中で、全員にバレていたことに赤面する鶴姫だったが…。

その出会いは中学生のときで、氏政の大豪邸に招かれた際に、あまりの広さに迷子になったところを助けられたのがきっかけだとか、極端に無口だが、すごく優しい人なのだとか――


…聞いているだけでお腹一杯な話を、ずっと続けてくれたのだった。







*2010.冬〜下書き、2011.7.14 up
(当サイト開設・公開‥2011.6.19〜)

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

妄想設定説明してもらった(^^;
半兵衛は、元気モッリモリです。秀吉の前ではカワイコ振って、気に入らん&彼の邪魔をする奴の前では豹変。そう思うと、妄想佐助に似ている気が(^q^)
幸せにしたかった! 秀吉を総理にまで仕立てちゃうかも、彼なら。

捏造刑部すみませぬ!彼も元気に…。しかしどんな顔か全く想像できん。とりあえず目は大きいみたいでしたよね; 好きだと言いながら適当過ぎ(^^; あと、謙信様の平仮名喋り断念;

鶴姫のストーリーは、シリアス多めの中で救われ(^∀^) しかし、小太郎の真意が読めない。

政宗は、以前慶次に口では格好付けてましたが、どうも幸村相手だと手が滑るらしく。

旅行編…しばらく続きます;

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