お教えします!5


「何なら、真田くんや毛利くんとか誘ってさ」

「――え?」



彼女は、フフッと笑い、

「あの二人、私の友達の中でかなり人気高いんだよね。皆、きっと喜ぶ――」

「ごめん、無理だ」



話の途中で遮るが如くキッパリ断った慶次に、彼女は言葉を失う。



「…来週は、確かこっちも皆で予定入れてたわー。…政宗やさっけたちと。ごめんなー」

先ほどの語気の強さとは打って変わって、下手に出る姿勢で謝った。

しかし、政宗たちの名前が出たことで、彼女はすっかり大人しくなり、


「ううんっ、全然!残念だけど、そっちも楽しんで来てね」

佐助はおろか政宗まで連れて来られたらたまったものじゃないと思ったのだろう…


「おう、ありがとな!」

慶次は爽やかに言い、


「それに俺、今好きな人いるからさー」

「…えっ」



(え!!)



…佐助も、同時に心の中で叫んだ。



「そう――なんだ。…え、誰、誰?」

当てが外れたところだろうが、彼女はめげずに食い付いてくる。

意地悪な見方をすれば、自分以外の、どのくらいのレベルの子なのか確かめたいのだろう。


「秘密〜」

笑ってかわす慶次。


そして、ようやく蝋燭に手を伸ばし――



「うおぉっ!!」

「きゃあぁッ!!」


二人して、期待通りの反応を見せてくれたのだった。













「お疲れー」


戸を開けると、いつもの五人は部屋の中心で集まっていた。


「ああ」

肝試しの後片付けや執行係の反省会議を終えた元就が輪を覗き、「…また、トランプか」と、苦笑する。

「早く就ちゃんも混ざってよ」
「元就殿」

元就は、佐助と慶次の間に座る幸村に目をやった。

果たしてどこに座るか…

少々悩んだ末、元親と政宗の間に決めた。
…正面に、幸村が見える。

時刻は十一時を過ぎていたが、幸村はまだかろうじて起きていた。



「ねえ、就ちゃん知ってた?――慶ちゃん、好きな人ができてたんだってさ」

「まーたその話かよ」

政宗がうんざりしたように、「だから、俺らも聞かされてなかったっつってんだろ?」

「そうだよ、別にわざわざ言うことでもないしさぁ」

慶次は苦笑いを佐助に向ける。


「でも、旦那には言ってたんでしょー?」
「う…、だが、俺も最近聞いて…。誰かは知らぬし」

「旦那はともかく…皆、気になんないの?どんな人か」

佐助の熱い問いかけに、政宗や元親はそらとぼけた顔をした。…ますます不思議な気が晴れない。


「何だ、そんなことか。我も知らぬが、見ていれば分かるであろう?最近特に花が飛んでいる気がしたが、やはりそういうことだったのだな」

「えーっ?確かに慶ちゃんは、いつも頭の中、春だけど…」

「ちょっと、さっけ〜、どういう意味かな?」

笑顔でありながら、黒いものを漂わせる慶次。


「ねー、誰なのさぁ。どんな人?」
「さ、佐助……もういいじゃないか。詮索は良くない」

幸村が、なだめるように説き聞かす。


「だぁってさー…」
「まーまー、その内分かるって!俺、分かりやすいからさ」

何故か、慶次本人もそれに加わる。


「えー…本当に?」
「うん」

「ふーん…」

考えるように、佐助はしばらく頬に手を当て、


「――じゃあ……さ、……どんな感じ?」

「え?」


「……どんな風?慶ちゃんは…」


皆の視線が、一斉に慶次へと集まった。



「――……」

慶次は少し息をついて、



「どうしようもなく――好き。…何よりも」


その真剣な瞳に、佐助だけでなく、他の皆も自然と引き付けられる。



「……すっげぇ真っ直ぐで、優しくて、――強いんだけど、弱かったりして。めちゃくちゃ格好良くて、……可愛いんだ。…笑ってるとすげー嬉しいし、一緒にいると幸せ――」

そこでコホン、と咳払いし、


「――なのは、俺だけなんだけど。…とにかくこんな調子だからさ、すぐ分かると思うよ」

と、照れたように言った。



「――相変わらず、恥ずかしい奴」


政宗が小さく笑う。

元親や元就も、どこか温かい目を向けていた。



「……良いなあ!」

佐助は大げさに両手を上げ、


「旦那、俺様たちもいつかそんな相手を見つけ――」


隣の幸村に目をやると…

元就が戻るまでは、と相当頑張っていたのだろう、既に夢の世界へと旅立っていた。

ぐらぐらと頭が揺れ、前に倒れそうになったところを、


「――おっと」

と、慶次が腕を差し出して受け止める。


「こいつ、ホント寝るとき一瞬だよな」

元親が、くっくっと笑い、「――で、やっぱ起きねぇし」


「よっ……と」

軽々と、眠る幸村を慶次が抱き上げる。


「あっ――」

何か言いたげに声を出した佐助に、

「ん?」

慶次は見返し、「――うわ、ホントだ。軽いなー」


「…そうでしょ?」

と言いながら、佐助はどこか消化し切れない複雑な顔になっていた。

…そのことを、他の面々は指摘したくてたまらない。


二段ベッドの下段に幸村を降ろすと、Tシャツがめくれて、チラッと見事に割れた腹筋が覗いた。


(――相変わらず、立派。けど…)



「……やっぱ、ほっそぉ」


懐かしむように口端を上げ、シャツを直して布団をかけてやる。…暑いだろうから、お腹の部分にだけ。


「元就待つって気張ってたからな」

笑いながら慶次は戻った。

「そうか、悪いことをしたな」




「……幸、寝てて良かった」


「え?何で?」

佐助が不思議そうに尋ねる。


「あ――いや、…また、破廉恥とかって叫ばせてたかも知れねぇじゃん」

「や、旦那最近成長してきてるから、さっきのくらいなら大丈夫だったよ?かすがちゃんと上杉先生のお陰でさー」

「へー……」



だが、佐助以外の者は分かっていた。


その相手は気付いていないとはいえ、熱烈な告白をしたのとほぼ同じようなものだと、慶次が心の中で赤面していることを――。







*2010.冬〜下書き、2011.7.13 up
(当サイト開設・公開‥2011.6.19〜)

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

せっかくの肝試しでこの組み合わせは何って感じですね;
鶴姫と話させたかったらしい。元親とも絡めたかったようで。

彼女を、可愛く表現したいのですが(^^; 同性からも好かれる良い子に、こう…。
幸村とは猪突猛進・真面目コンビで♪思い込みが激しいとこが似てる気が(^∀^) そして元親は何故か彼女に逆らえない。

こんな風に、シチュエーションを生かせない夏休みがまだ続きます(-ω-)

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