お教えします!1
※元親、佐助、政宗、慶次、幸村、鶴姫、官兵衛、元就
他、脇役数名。
夏イベント@ 林間学校♪
しかし、がっつりスルーして、いきなり夜になってます(^q^) これさせたかった、会話させたかった、ただそれのみ。長いです;
夏休みの林間学校は、一、二年生の希望者だけで行くことになっている。
一応、名門の私立校であるからか、実はセレブな家庭の生徒が多い。
それで、家族旅行とどちらを取るかといえば――やはり、後者の方が勝ってしまう。…行き先が海外というのがほとんどなのだから、仕方がない。
なので、毎年参加人数は半分ほどだった。
佐助たちは去年は何となく参加したが、今年は元就ら生徒会が執行係として行かなければならないので、当然幸村も行くと言い出し――あとはいつもの連鎖反応。
宿泊するのは学園を運営するグループが所有する施設で、なかなかの快適さである。
周りは山ばかりだが、近くにキャンプ場があり、昼間のレクリエーションは大いに楽しめた。
夜は、自由参加の肝試しがとり行われることになり、学年ごとに男女一組で――というドキドキな状況。なのに、男子の数が多いという悲しい現実が、彼らを戦々恐々とさせていた。
「――マジか」
「やっぱ、運命の糸で繋がれてんだね、俺様たちって」
真っ暗な顔をした元親と、心底楽しそうな顔で彼の肩を叩く佐助。
周りの生徒たちから笑い声が上がる。
中には冷やかす者や、何故かキャアキャア騒ぐ女子も多数。
…元親の機嫌はますます悪くなる一方だ。
神のイタズラとしか思えない――ペアを決めるクジで、佐助と元親は色違いの同じ番号を引いていた。
「もう諦めろよ」
ニヤニヤと笑う政宗だったが、
「ねえ、黒の四十番って誰〜?」
と、赤い紙をヒラヒラさせながら聞いている女の子の声に、ギクッとする。
「――慶次、頼む。交換してくれ」
「ええっ?」
黒の四十番の紙を差し出してくる政宗に驚く慶次だったが、彼女を見て納得した。
他の男子なら喜んで名乗りを上げるくらいの可愛い子なのだが、政宗にとっては元カノという、かなり気まずい相手だった。――それも、後味の悪い別れ方をしているので尚更。
「…しょうがねぇなあ」
ブツブツ言いながら、慶次は交換してやる。
(――これが幸と同じ番号なら、絶対変えてやんねぇけどさ)
幸村と違うというのは分かっていたので、慶次は相手が誰だろうと、もうどうでも良いのだ。
「あ、慶ちゃんか〜、良かったぁ」
彼女は嬉しそうに慶次の腕を取る。
「おう、よろしくなー」
…しかし、本心は真逆な思いだった。
結構人気のある彼女であるため――男連中からの視線が痛い。
さらに、自分の気に入っている男には誰でもこうしてベタベタするこの手の子は、正直苦手だった。…以前の自分ならば、簡単に鼻の下を伸ばしていたものだったが。
少々腹が立ってきて政宗を見たが、彼の相手は男だったらしく――
…慶次は、ちょっと気が済んだのを感じた。
一年生から始まり、大分してから二年生の番が回ってくる。
佐助たちは先にスタートしたらしい。
数のこともあるので、時間差でサクサク行かせている。
ゴールは施設のロビーで、着いた組から解散となるのだが、スタート地点は外の道を数分歩いた場所なので、その人数はどんどん減っていく。
仕掛け役は生徒会役員で、ここには元就が、ゴールには孫市が待機し点呼やチェックを行っている。
「――幸は姫ちゃんとかぁ」
幸村と鶴姫が話しているところへ、慶次は近寄った。
「はい。…良かったでござる」
幸村は小声で呟いた。
女子の中でも、特に親しい彼女だったからだという意味だろう。
「逆に、向こうをどーんと驚かせちゃいましょう!」
鶴姫が、張り切って幸村に可愛らしいガッツポーズを決めた。
「姫ちゃん、可愛い〜!」
慶次のパートナーの彼女が、甲高い声を上げた。
「ね、慶ちゃん!…二人、お似合いだね」
わざわざコソッと顔を近付けて言ってくる。
「――そだね」
……あー…早く終わりてぇ……
慶次は、夜空を見上げて切に思った。
「――何も、出ませんね」
「…で、ござるな」
スタートから割と歩いたが、あるのは静けさばかり。
だが暗闇の道、そっちの方がかえって不気味というもの。
出発前と違い、心細そうに変わってしまった鶴姫を、幸村は気付かれないよう小さく笑った。
(…姫殿には似合わぬ)
「何か楽しい話を致しましょう、姫殿」
「えっ?」
「某では力不足かも分からぬが…」
「そんなこと!……えーっと――」
鶴姫は何か思い付いたようだが、「でも…」とためらう。
「……?」
「私の好きなのって……恋とかのお話ですよ?」
「う、」
強ばる幸村だったが、首を振り、
「き、聞きたいでござるなぁ…!あいにく某は何も持ってはおらぬが、こ、今後?のためにも――」
「ホントですか!?良かったぁー!」
たちまち明るい声と表情に変わる鶴姫に、幸村は心を決める。
だが、意外にもこれまで彼氏がいなかったという鶴姫の話は、幸村でもさほど抵抗なく聞けるくらいの内容だったので、助かった。
「『ほわあん』と…『きゅううん』――でござるか」
幸村が首を傾けると、
「はい!『ぽわあん』でも良いですけど」
「ぽわあん…」
「はい!それが恋なんですっ」
ニコッと鶴姫は微笑む。
大きな瞳はらんらんとし、頬は桃色に染まっていた。
「あの方を想うと……、会えたときなんて、もう…!」
きゃああぁっと頬を両手で挟み、目をつむる。
――どうやら、彼女には想う相手がいるらしい。
高等部から学園に入った彼女と孫市は、小、中学は女子校で過ごしたらしく、今までそういったことに縁が少なかったのだという。
「お市ちゃんと浅井さん、かすがちゃんと上杉先生みたいな、素敵な関係が羨ましいですー…」
幸村たちとは違うクラスの、浅井長政と、学園長の妹である織田市は、小さい頃に決められた許嫁同士らしい。
だが、よほど気が合っているようで、昔から今に到るまでずっと仲が良いのだとか。
…かすがたちは、言わずもがなである。
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