追憶1
※慶次、元親、元就、佐助、政宗、幸村、小十郎 登場
※色々とクサいです…(@_@;)
初めは皆登場、
佐+幸+小、慶+親+就、慶+政
…な流れです。
それぞれの想いみたいな感じで、展開は…なきに等しい;
長く続く塀に、立派な門構え。
広い庭園に、これでもかというほど大きい日本家屋。正に武家屋敷、はたまた極道一家のようなその威圧感。
――ここは政宗の家で、彼は由緒正しい名家の御曹司であった。
父親は大企業の社長を務め、毎日朝から晩まで多忙の身。…母親の方は、政宗が初等部に入る前に、家を出ていた。
小十郎は、父が伊達家の使用人だったため、政宗が生まれる前から屋敷に仕えているもの同然だったのだが…
政宗の父には姉がおり、縁談が決まった日に姿を消した――小十郎の父とともに。
…つまり、駆け落ちというやつで。
それで、自分の母親がその姉だったという事実を、小十郎は初めて聞かされたのだった。
体裁のため周りは一切口を閉ざしていたのだが、姉と自分の妻とを重ね、いよいよ罪悪感に耐えられなくなった政宗の父が、この不憫な甥に全てを打ち明け、深く詫びた。
さらに、
『本当に勝手な話だが。…自分に代わり息子を頼む』
――そう、頭を下げて。
母親からの愛情をろくに受けなかった政宗を、父親は常に気にかけていたのだが、忙しさゆえに親らしいことをほとんどしてやれない…だが、息子のことは何より大切に思っており、小十郎に対しても実の両親以上に可愛がってくれていた。
小十郎は、喜んで全てを受け入れる。父親が驚くほど、むしろその状況に感謝でもしているかのように。
そして、献身的に政宗の世話をし続け、兄のように優しく、ときには厳しく、いつもそのすぐ傍で接してきた。
…こうして、自信家で個性的なところも多いが、政宗は真っ当に育つことができたのだった。
その伊達家には立派な道場があり、通いの師範が教える剣道教室で、政宗と小十郎は幼い頃から鍛えられてきた。
今日はそこが空いていたので、政宗は幸村たちを招き、胴着などは着けず軽装で、
『いざ勝負!』と竹刀を交えていたのだが…
――いつ、決着つくんだろう。
傍らで見ていた、慶次、元親、元就たちは、最初こそその戦い振りに見入っていたが、あまりの長期戦にいささかくたびれていた。
二人は、それは夢中でし合っているが…。
「――やっぱ、腕は覚えているのかねぇ」
と、慶次が呟けば、
「みてぇだな…」
元親が、どこか懐かしそうに答える。
「……」
元就だけは思案を巡らせるように、黙ったまま遠くを見るような目をしていた。
…佐助はというと。
二人の打ち合いを、複雑そうな顔で眺めている。…というより、心細そうな、と言った方が良いだろうか。
急にシン…となり、皆の目が二人に集まる。
どうやら、政宗の勝利で終わったらしい。
二人とも、最後の型のまま動かない――が、
グラ…
「あ――」
信じられないことに、幸村の身体がゆっくり傾いていく。
すぐさま駆け寄ろうとした三人だったが、その前を風のような影が走った。
――瞬間移動かと言いたくなるほどの俊敏さで、佐助が幸村を抱き留めていた。
「旦那!?」
「…!What?」
気付いた政宗も、驚いたように目をむく。
「政宗……何したわけ?」
佐助が、ギロリと見上げてくる。
冗談ではなく、慶次たち三人はその恐ろしさに背筋を凍らせた。
「I don't know!普通にやってただ……け」
そう言いながら政宗は頭に手をやり、膝を着いてしまう。
「――っ、つ…」
「…政宗?」
痛みに顔を歪めた彼に、慶次たちが近寄る。
「政宗様!」
いつ帰っていたのか、小十郎がパッと現れた。
学園ではさすがに呼び捨てだが、それ以外ではこの呼び方なのは、ここにいる全員が承知のことである。
「小十郎…」
何か言いたげに政宗は手で制したが、結局崩れ落ち、小十郎がその身体を支えた。
「え、何?どうしたの?」
怒りを忘れ、佐助も面食らう。
小十郎は、政宗と幸村の顔を覗き込んだ後、ホッと息をついた。
「予想以上に消耗していたんだろう。緊張の糸が切れて……ただの気絶だ」
「ただの、って」
憮然となる佐助だが、幸村の安定した息づかいが分かると納得した表情になる。
「休めばすぐに気付くだろう」
と、政宗を抱え、「真田は頼めるか」
「え?」
「客間で休ませるからよ。――お前ら、茶くらいは出してやる」
――幸村が目を覚ますまで、待っていろということらしい。
佐助は、そのまま幸村を横抱きにして小十郎の後を追おうとしたのだが…
(…この体勢、恥ずかしくない?女の子じゃあるまいし…)
いや、でももう持っちゃったしな…
あー、けどやっぱ変えた方が…?
てか、俺様少しは鍛えてて良かったけど。
…力、もっとつけとこ。
同じように鍛えられている幸村の身体は、それなりの重さがある。
だが、思ったより断然軽く、無駄な肉がないからなんだろうなぁ…などと考えていると、
「さっけ?俺、代わろうか?」
佐助が無理をしていると思ったらしい慶次が、手を差し出してくる。
「あ、大丈夫、大丈夫!旦那、全然重くないし」
「マジ?…ちょっと持たせてよ」
「え?良いって。もう形決まっちゃったし、崩したくないんだけど」
慶次の手から逃げるように歩き出す。
「ちょっとだけ!もうそのまま俺が運ぶしさ」
「んなことしてたら、旦那が目ぇ覚ますだろ」
「そっとすれば大丈ブッ……!」
最後の一声がおかしな音になったのは、後ろからポニーテールを思い切り引っ張られたせいだった。
「馬鹿め、幸村は物ではないぞ。――佐助、早う運べ」
と、呆れた顔で元就が促し、二人はさっさと客間に向かう。
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