足りない何か1
※出会いです。
登場するのは、
佐助、慶次、政宗、元親、幸村
では、お目汚しへどうぞ↓
晴れ渡った青空の下、屋上にてたむろする四人の少年。
新学期が始まって間もない、四月中旬の頃
「…何か、面白いことないかなぁ」
いかにも退屈そうに呟いたのは、赤茶というよりはオレンジにも近い明るい髪色の持ち主。両頬よりやや上と、鼻の高い位置に深緑色のペイントを施しているが、それが妙に似合っている。
「Ahー…暇だよなぁ」
黒髪が右目の眼帯を隠しているが、残りの左目だけでも魅力的な面立ちの少年が相槌を打った。
二人ともスラリと手足が長く、いかにも異性から人気のありそうな風貌である。
「珍しいなー、二人の意見が合うなんてさ」
そう言いながら笑ったのは、長髪ポニーテールに、がっしりとした長身の少年。これまた甘いマスクで、二人にひけをとらない。
「雪でも降るかもな」
と、からかうように口を挟んだのは、銀髪に蒼い右目、片側にはバンダナのような眼帯が目立つ、大柄でワイルドな少年。
とにかく個性的な四人で、この学園の名物的な存在の一つ。
一つと断るのは、他にもそれはそれはアクの強い人間が大勢いるからだ。この学園は、一般の学校に比べて大分変わっている――生徒から教師に到るまで。
一人目から、猿飛佐助、伊達政宗、前田慶次、長曾我部元親。
チャラそうだったりクールそうだったり優しそうだったりで、何かと周りから――特に女子生徒に――キャアキャア言われている。
「ちょっとちょっとぉ、俺様たちそんな仲悪いわけじゃないよ?ねぇ」
「そうそう。むしろ似た者同士っつーか」
ハハハ、とどこか乾いた笑いを交わす二人。
――しかし、残りの二人は充分過ぎるほど知っていた。
昔から本当に二人はよく似ていて、勉強でも運動でもしょっちゅう張り合い…最後にはどちらも、もういいやと投げ出す。当人たちに言わせると、段々と競い合っているものに魅力を感じなくなってしまうのだという。
思春期に入ってその対象が異性になると、友人の身から見ても最低だなと思わざるを得なかったのだが、何だかんだで見捨てずに付き合いを続けてきた。結局のところ、二人の根の良さを知っているからという理由ではあるのだが。
競い合わずとも本気になれるものや相手でも、それぞれに見つかれば良いのに。
…と、元親は常々思っている。
「でも皆同じクラスになれたし、良かったよな?他の連中も良い奴ばっかだし、きっと楽しくなるって!」
慶次が明るく、「なっ元親!…そういやお前ってば、女の子の中でもダントツの二人と仲良いよな」
「はァ?」元親は目をむく。
「あっ、俺様も気になった!雑賀ちゃんと、鶴姫ちゃんね。ビューティー&キュート!二人とも彼氏なし」
佐助が、先ほどのダルさが嘘のように顔を輝かせた。
この男は、自分のことよりも他人のそういう事情には必要以上に興味があるらしい。
しかし、女の子を褒めておきながらも、自分が熱くなることは決してないのだ。
「どこが仲良しに見えんだ?…まぁ…ただの幼なじみってヤツよ。サ…孫市にゃ昔っから頭上がんねぇし、鶴の字はあーいう妙に優等生だからか俺のこと目の敵にしてやがってよ」
「でも、おたくらのやりとり見てたら微笑ましいんだよねー、お前と姫ちゃんの。それこそ似た者同士ってかさぁ」
佐助は本当に楽しそうだ。
「あんな嬢ちゃんと並べてくれんなよ。…そういやぁ、政宗も孫市と知り合いみてーだったな?」
「Ah〜、家同士の付き合いがあったからな」
「へー、二人とも羨ましいなぁ」
笑みをたたえたまま言う慶次に、佐助は、
「なになにッ?慶ちゃんは、雑賀ちゃんが好み?」
「ていうか…」
慶次は彼女を思い浮かべながら、「あのスタイルは…ねぇ。男なら誰でも…」
腕を組み、一人で頷いている。
「まぁね」「だなー」などと、他の三人も同意を示す。
「けどあいつ、そこらへんの男よりも数段男前だからよう、何かいまいちそういう風に見えねぇ。ま、そこが良いんだが…」
「そうだよな。あの生徒会でやってける女なんて、あいつくれーのもんだぜ」
政宗も、大きく首を縦に振る。
「俺様は、石田のミッチーと雑賀ちゃんが結構相性良いんじゃないかと思ったり」
「家康とも仲良いよな?三角関係とか」
佐助と慶次は、まるで女子生徒のようにその話題に花を咲かす。
慶次は昔から恋多き男で、他人の事情にも高く感心を持つ。そうして、自分のものと同じ数ほど他人の恋を実らせた経歴はなかなかのもの。友人も多く、男女問わず相談に乗っているのは日常風景で…というか、それがほとんどを占めているとも言える。
比べ、佐助の方は完全に興味半分といったところだろう。
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