賑やかな週末@-4


『…っうん!言った、言った!今日も、全然大丈夫!…来てくれんの?』

『変な奴だな…俺の方が頼んでいるのに』

幸村は、ちょっと笑ったようだった。


『いや、だって――。そうだ、ちょうど今ねぇ……てか、かすがちゃん大丈夫なの?』

貧血のこともあるが、幸村が妹を一人で残すとも思えない。セキュリティがしっかりしたマンションではあるが――彼が夜遅くまで遊んだりしないのは真面目だからという理由だけではなかった。

『……』
『?…旦那?』

『あっ……ああ』

ハッとしたように、『大丈夫…体調も回復して、今晩はお館様のお宅で世話になると…』

『えッ、旦那は!?』

【お館様ラブ】な幸村の性格は、今やクラスの全員が知り得るものになっているのだが。


『俺は…遠慮した。…だから』


だから行っても良いか、――とは言えないのだろう。

佐助でも分かる。
幸村が佐助と遊びたくてそちらを断ったのではなく、逆なのだということくらいは。

何か理由があって行かないことにしたものの、一人が退屈になったというところか。
…もしかしたら、寂しくなったのかも知れない。

しかし、そんなことで気を悪くする佐助ではない。
特に相手が幸村ならば、尚更である。


『そっか、じゃあ是非とも来てよ!実は、今皆来てんの。明日休みでしょ?何と、就ちゃんもさ』
『元就殿も…』
『そうそう、皆泊まりでね。旦那も、明日何もないんだったら…』


『…良いのか?』




その瞬間、二つ目のクラッカーが打ち鳴らされた。



…そういうわけで、独り幸村を出迎えるため、ここへ来ているのだった。

佐助は口元が緩むのが止められない。


(旦那、きっと何かあって…もちろんそれは心配なんだけど…)


元就ではなく、自分を頼ってくれたということが、佐助にとっては何より嬉しかったのである。

恐らく、迷惑をかけたくないと元就には電話をせず、比べて佐助は一人暮らしなので、幸村の中ではまだ言える立場だったのだろう。

だが、そんなことも気にならないほど佐助は浮き足だっていた。



「佐助!」

幸村が、通り向こうから駆け寄ってくる。

「すまぬ!待たせた」
「ちっとも!さっき来たとこ」
「そうか…何か買ったのか?」

佐助の手に下げられたコンビニ袋に目をやる。

「うん、抜かりなく証拠品と――旦那の好きなお菓子とか」

証拠品?と首を傾げる幸村だが、菓子には目を輝かせる。

「…あ、俺手ぶらで…」
「良いって、良いって!気にしないで」

情けない顔になる幸村をなだめ、

「こっからすぐ近くだから」

幸村を促し、並んで歩く。

他の皆を驚かせるために内緒で出て来た、と適当にごまかしておくことも忘れない。


ふいに風が吹き、ふわっと甘い香りが幸村の方から漂ってきた。


「旦那、もしかしてもうお風呂入った?」
「いや…?――あ」

と、自分の身体に鼻を寄せ、

「すっ、すまぬ!汗臭いか!?俺、ジョギングしたし、ここまで走って来たからな…」

「……へ?」

佐助は合点がいかず、幸村の肩に顔を寄せた。

「おい、佐助!臭うからやめろっ」

と、幸村は離れようとするが。





……全然、臭くないんですけど。


――てか、何このイイ匂い……





「臭わないよ。羨ましい…」

佐助は、とりあえず一般的な感想を述べるに留めた。

本当は、自分好みの匂いでずっと顔を寄せていたかったくらいだが、気持ち悪がられること必至なのでやめておく。

しかし心配そうに気にする幸村に、佐助は笑みがこぼれた。


「嘘じゃないって。――ねえ、何かあった?」

突然の言葉に、幸村はギクリとする。

「な、何か…とは」
「いや、別に聞き出したいわけじゃないけど、昼間から元気なかったからさー…」

「……」

「あ、俺様のことは気にするなって。そういうときは、じゃんじゃん電話してきてよ。俺様、皆の中で一番ヒマなんだから。旦那なら大歓迎だし」



佐助を見る幸村の表情が、柔らかくなっていく。



「佐助は、優しいな…」

「ええっ?んなこと言われたの、初めてだよ」

佐助は本当に驚いている。

「そうか?意外だな」

微笑みながら幸村は言い、少し苦しそうにしながら、

「――大したことではないんだが、…かすがと、ちょっと…」

と濁した。


「ケンカ?」
「…ではないが…似たようなものか。…かすがに非はなくて、俺が勝手に…」

それきり幸村は沈黙してしまう。


「――そか。今日はうるさいかも知れないけど…」
「いや…!皆いるなんて、すごく楽しそうだ!それは本当なんだ」

「…良かった。でも、旦那…」

佐助は優しく笑うと、

「気とか遣わないでよ?ゆっくり、のんびりしてってくれな?政宗とかウザいかも知んないけど、無視していーから。――就ちゃんもいるしさ」


「…佐助…」


ありがとう、と幸村が佐助の手を握った。感謝の握手のつもりなのだろう。

それは、今まで触れたどの手よりも温かく―――また、安心できるものだった。


「旦那は、お風呂好き?俺様ん家の、結構広くてなかなかスゴいからさ」

手を離すことができず、佐助は照れ隠しのように言っていた。

「ああ、男のくせに長風呂だとよく言われる。楽しみだ!」

ニッコリと笑い、幸村は手を離した。


マンションへ戻り、買い物途中で幸村に偶然会って誘った、と皆には説明する。

佐助の怪しい行動を気にしていた政宗と慶次だったが、幸村の登場にすっかりどうでもよくなったみたいである。

元親は、苦戦していたゲームを元就にあっさりクリアされたらしく、ひどく落ち込んでいた。
元就は初めてやったのにも関わらず、というのが彼をますます項垂れさせる。


しかし、勉強ばかりかと思っていた元就が、割と遊戯や趣味にも多才な事実が判明し、四人は知らぬ間に親交が深まっていたようだった。







*2010.冬〜下書き、2011.7.4 up
(当サイト開設・公開‥2011.6.19〜)

あとがき


読んで下さり、ありがとうございます!

こんな感じで次に続きます。長い…;
次は、ますますふざけております。もう欲望のまま。
戦国とカブってるような出来事が多々あるし次でも出ますけど、あえてわざとです許して下さい(汗)戦国と現代で少しだけ違う感じで…てのが見たくてしゃあないんです。全部私の願望ですからはい。

佐助がおかしいですよね。これも私の…。
色々すみませんでした;

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