賑やかな週末@-3
「旦那、大丈夫かなー…」
「かすがちゃんが、だろ?…でも」
と言う慶次に、
「…どこか、それ以上に沈んでいたな」
元就が続ける。
剣道の勝負が無しになったので、放課後何となく集まり、全員で帰っていた。
「すーげえ心配なんだよ、仲良いみてーだし」
元親がなだめるように言う。
「そうだぜ、お前らまでそんな落ち込むなよ」
似合わず、政宗がフォロー役に回り、
「そうだ、明日から休みだしよー佐助ん家行かねぇ?Let's party!」
「出たよ、パーリィ」
「ちょっと、本人の意思は?」
慌てる佐助だったが、「――まあ、良いけどさ」
…一人でいると、幸村の様子が気になって仕方なくなりそうだ。
「良いの!?行く行く!」
「悪ィなーいつも。今日はちゃんと着替え持ってくぜ」
慶次と元親も、完全に乗り気だ。
「就ちゃんも来てよー。俺様んとこ、父親仕事でいつも一人なんだ」
「…そうなのか」
「行こーぜ、元就!」
「明日休みだしよ」
「Ah〜…さては、外泊禁止ってか?」
「まさか。どこの箱入りだ、我は」
元就は、政宗を睨む。
「じゃあ」
「邪魔させてもらおう」
佐助に頼み、「しかし…大丈夫なのか?こんなに大人数で押しかけて」
その言葉に、全員がニッとする。
「全っ然!こいつん家見たら、びっくりするよ」
答えようとした家主を押しのけ、慶次がそれは自慢そうに言うのだった。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
全員一旦家に戻り、佐助のマンションを訪れていた。
それぞれ家から差し入れを持ち寄ったので、またも豪勢な食卓になっている。
「猿飛は、料理ができるのだな…」
素直に感心するよう元就が呟いた。
「そうなんだよ。しかもこんな広いとこ、いつも綺麗にしててさー。良いお嫁さんになれると思わない?」
慶次が明るく言う。
「そうだな…。どうだ、長曾我部?」
真顔で振る元就に、ギョッとする元親。
「おい、何でオメーまで…――佐助ェ……」
「ちょっ、俺様何も言ってないっ!」
「元就、お前結構見る目あるなー」
政宗が面白そうに笑った。
「うん、さっすが生徒会長!――けど元就、前から言おうと思ってたんだけど…」
慶次が突然真面目な顔になり、何を言うかと思えば、
「苗字でなんか呼ぶなよ、水臭い!ゆっきーみたいに、俺らのことも名前で呼んで!」
一歩も譲らない姿勢である。
他のメンバーは、諦めろという表情を元就に見せ、
「言う通りにしとけ?…コイツ、しつこいぞ…」
元就は明るい笑顔の慶次を見直してみたが、
(なるほど……押しの強そうな感じがするな…)
「…分かった。今からそう呼ぶことにしよう。――慶次」
「それで良し!」
満足したように慶次が頷く。
「では…今日は世話になるな、佐助」
「全っ然!いつでも来てよ」
佐助も嬉しそうである。
「元親……政宗………」
―――………
「Hey、今お前、俺は苗字のが短けぇなと思ったろ」
「何なら『まーくん』で良いよ就ちゃん」
「こいつはサルで良いぞ元就」
「佐助、こないだの続きやって良いか?」
元親がゲームを指す。
「あ、どーぞ」
わいわいガヤガヤと、リビングは男五人の無法地帯と化していく。
明るい着信音が鳴り、佐助がケータイを開いた。
「…………ちょっと、やってて」
そう言うと、佐助はパッとリビングから出て行った。
「――女か?」
政宗がニヤニヤしながら小声で言う。
「ライバルかも知れぬぞ、元親」
今度は笑いとともに言った元就に、溜め息の出る元親だった。
(…何だってこういう奴らばっか集まるんだ、俺らんとこは)
しばらくして、佐助が戻る。
「あのさ、俺様ちょっと買い物して来る。すぐ帰るから…悪いけど、好きにやってて」
「お〜了解」
ごめんねー、と佐助は玄関へ。
ドアが閉まる音がし、慶次と政宗は顔を合わせる。
「…本当に買い物かな?」
「Hum…怪しかったよな」
「……」
元親は無言で二人を横目で見ていたが…
テレビからの派手な音楽にハッとすると、またこの間と同じ場面でゲームオーバーになっていた。
フン、と元就が鼻で笑ったのが聞こえた。
佐助はとても足が速い。
それは、運動神経の良い友人たちの中でも頭一つ抜きん出るほどであった。
特に何かやっていたわけでもなく、物心ついたときからで、これだけは政宗も負けを認めているくらいだ。
ついでに木登りも得意で、その身のこなしから正に『サル』呼ばわりをされていた。
その駿足は目的の場所へすぐに運んでくれていたので、佐助はケータイを開いて暇を潰す。
そうしながら、先の電話のことを思い返していた。
――着信画面を見てみると、
『真田幸村』
(……旦那!?)
佐助から電話やメールをすることは多々あっても、逆は珍しい。
というか、電話は初めてだった。
思わずハイテンションで皆に伝えそうになったが、何故か隠したくなって部屋を出た。
『もしもしッ?旦那、どしたの!?』
なるべく普通に出ようと努めたが、無理に終わる。
『あ……佐助。すまぬ、突然』
幸村はその勢いに面食らったようだが、少々気まずそうでもあった。
『ううん、全然!旦那から電話とか初めてだったから、嬉しくってさ』
興奮そのままに口走ってしまったが、
(やべっ…引かれる)
とすぐに後悔する――
『初めて…だったか。いつも佐助がしてくれてたから、気付かなかった…すまぬ』
幸村は、しょんぼりした声になった。
――ああ…!こういうとこが良いんだよな、旦那は!!
小さな幸せを噛み締めながらも、
『そんな、謝ることないって!いつも俺様がどーでもいい電話ばっかしてるだけなんだから!…んで、何か用だった?』
『ん…ああ、――その』
何やら言いにくそうである。
『うん、なになに?何でも言って?』
『――その…』
と、幸村は一つ間を置き、
『……前に、いつでも遊びに来て良いと言っていたが……』
(パーン!!)
…佐助の頭の中で、パーティーなどの際に使われるクラッカーが鳴らされた。
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