再会4
「――我は、生徒会長もやっておる。今期に就いたばかりだが」
思った通り、元就の声。
「そうなのでございまするか!さすがは元就殿でござる」
…何か、さらに親しげな…
向かい合う格好の二人は、視線を絡めた。
「――……」
「……あ、の。やはり…覚えておられませぬか…。実は某、小学校のときに元就殿と一緒の――」
なるほど、そうだったんだ…!
元就がこの学園に来たのは、中等部からだったと耳にしたことがある。
「…忘れるわけがなかろう」
呟くように言った一言は、聞けば誰もが驚くに違いない――別人ではないかと思うほど、優しさに溢れていた。
「――!元就殿…!」
幸村の声は一転し、明るくなる。
「良かった…!某、てっきり…」
「…ゆっくり話せそうになかったのでな。…お前の周りは、やはりどこでもああなるらしい」
元就が苦笑するような声で言う。
佐助たちは、これは本当にあの彼なのだろうかと疑りそうになった。
「皆、良いクラスメイトでござるな!この学園そのものがとても良い雰囲気で」
「…そうか」
しばらく二人は、離れていた数年間の話で盛り上がっていた。
と言っても、話しているのはほとんど幸村の方だったのだが。
「…しかし、安心致しました。元就殿のお陰で心強うござる。これからまたお会いできるなんて、嬉しいことこの上ない!」
幸村の声は弾むようである。
(…ふぅん)
何故だか面白くない気持ちが湧いてきた佐助が慶次を見ると、同じように口を尖らせている顔があった。
「……」
「元就殿…?」
何の反応もない元就を、窺うような声音に変わる幸村。
「……他の者がいる場では、知らぬ振りをした方が良い…」
「――!?何故!」
一気に幸村は不安げな声になり、
「某、何かご迷惑を…っ」
「!違う、そうではない」
元就の慌てたような声に、佐助たちはまたもや面食らう。
「で、では…?」
元就は小さく息をつき、
「お前も分かったであろう?…我は、周りから敬遠されている。――別に支障はないのだが」
(…あ、自覚はあったんだ)
二人は、心中でツッコんだ。
「我といれば、お前も奇異な目で見られるかも……っ!」
ガシッという音が聞こえ、
「――まだその癖治っておらなんだか。いきなり手を出すのはやめよと、あれほど言ったというのに」
ハァ、と元就は溜め息をつく。
「…元就殿が、つまらぬことを申すゆえ…!」
幸村の声は、怒りと悲しみに満ちている。
「元就殿の言うことなど聞かぬ!…元就殿が嫌なのであれば、某とて考えもするが、そのような理由で…」
「…幸村」
「それとも、本当は…嫌――でしたか」
もう、完全に哀しみ一色に染まっていた。さながら、捨てられる仔犬の顔でも浮かんできそうである。
「――馬鹿な。我がお前を?あり得ぬ」
元就は、キッパリと言った。
「ならば…!」
「…………勝手にするが良いわ」
先ほどよりも深い溜め息をついた元就だったが、その声はどことなく嬉しそうな。
「はい…!元就殿!」
と、幸村が叫び――急に部屋が静まり返った。
「――幸村」
「はい?」
「……その癖もまだ…。――それだけは、人前でしないでもらいたいのだが」
「――!す、すみませぬ…!」
幸村があたふたと謝っているようだが、佐助たちには見えないので、何のことやら分からない。
「つい、昔のように…。――元就殿、某よりも小さくてふわふわでしたのに!すっかり立派になられて」
何だか、親戚の大人のようなことを言い出す幸村だった。
「ふ、そうであろう?お前より――少し勝っているか?」
「なんの、某はこれからにござる!それに、力なら。…また、元就殿を背負ってみせましょうか?」
「…昔のことを…。あれは、お前のせいで…」
ブツブツと文句のようだが、本気ではなさそうである。
(――ハグでもしたのかな)
よく女の子同士がやっているのを思い浮かべる。
…確かに、人前でされるのは…
元就に抱き付く幸村を想像してみたが――
不思議と、嫌ではなかった。…それも、二人の顔の良さやスマートさのせいなのか…
「幸村、前田たちを待たせているのだろう。遅くなってすまなかったな」
その言葉に、ギクッとなる二人。
「あ――はい!…元就殿は」
佐助たちは顔を見合わせた。
――どうしよう…!もし、ここに残るとか言い出したら…!?
うかつにも…本当に賢くなかったのだが、二人してそれを全く考えていなかった。
「我は、職員室に用があるので」
…ほーっと胸を撫で下ろす。
二人の声が遠のき、部屋の鍵を締める音。
すぐに佐助たちは生徒会室へ入り、細く開けたドアの隙間から廊下を覗く。
(こういう姿がすげぇ似合うのは、何でなんだろう…)
そんな佐助を見て、強く思う慶次。
廊下から彼らがいなくなったのを確認し、出て再び佐助の技で鍵をかけ直した。
幸村とは別ルートから教室に戻るため、ほぼ全速力で走り出す。
早速、元就のことを知らない振りをしつつ聞き出さなければ、と企みながら、笑顔で幸村を出迎える二人だった。
*2010.冬〜下書き、2011.7.3 up
(当サイト開設・公開‥2011.6.19〜)
あとがき
読んで下さり、ありがとうございます!
お約束ですね、あの出会いから転校生展開
(^q^)
まぁ、今さらです。これからもっともっと自己満寒い世界に(@゚▽゚@)
出したかったキャラ、しかし完璧に脇役;
家康が次に出るのは多分忘れた頃にです;
きっとまた脇脇役。
鶴姫大好きなんです。孫市も。かすがも、どうにかしたくてこんなことしてしまいました。兄妹設定にしてしまいすみません; あと、鶴姫の名字捏造も; 伊予付けたら長いなーもうって。この先名字出ませんけど;
ああーホントこんな高校生いませんよね許して下さい(/ω\;)
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