気持ちを君に3






『ごめん、姫ちゃんから聞いちゃって…』


幸村の家に押しかけ開口一番、結果、また彼を赤面させてしまったわけだが、


「あの、さ……デ、『デート』って…分かって、たんだ…?」
「あ、ああ…」

幸村はコクリと頷くと、


「政宗殿が、よく言っておろう?」
「は?……っあー…」


(…そーいや前、旦那に『dateしよーぜ』って、ぶっちゃけてたっけ)


「親しい者同士が、遊びに行くことだと…『破廉恥』だと思っておったが、そう教えられたのだ」
「………」


(なーんだ…)


がっくりと肩が落ち、一気にしぼんでしまう佐助。

まぁ、どうせそんなオチだろうとも思ってはいたが。…これも、もう数えきれないほどに、経験済みなので。



(でも……)


「ありがとね、…すっげぇ嬉しかったよ。昼間のデートのときも、さっき姫ちゃんから聞いたときも」
「佐助…」

幸村も微笑み、

「俺の方こそ楽しくてな、贈るつもりだったのに、また良い思いをしてしまった」



(これを、俺様だけに『特別な』意味で言わせなきゃ…なんだよな)


その言葉、その笑みに、何度も囚われてきた自分。きっと、これも己だけではないはず……佐助は、苦い笑いを噛み締める。


(旦那にゃそんな気はないってのは、よく分かってるけど)


──せっかくくれたチャンスだ。

それに、今日なんかは打って付けの日じゃないか、決行するのに。



「なぁ、もう終わりかけだけど、お祭り行ってみない?」
「?良いが…」
「ちょっと、聞いてもらいたい話があってさ」
「話?」
「うん」

外の道へ出ると、佐助は少しバツの悪そうな顔で、


「本当の本当に叶えたい願い事は、書けなかったんだよね……勇気がなくて」
「──そうだったのか。…ではっ、俺にできるのなら、」

さらに佐助を喜ばせることができるかも知れない可能性に、幸村の顔はかえって明るく輝く。

『ああ、まただ』と、佐助の中に再び悟りが生まれ、もうこのくらいの数にはなったんじゃないかと、苦笑を浮かべ星空を見上げた。



「ありがと。でも…」


(……自分で叶えるから)



誓いを胸に仰いだ夜空は、いつもより綺麗に見えた気がした。





気持ちを君に

(意気地無しよさようなら)






「──わわ、分かった……考えて、…みる。すごく…」

「うん、ありがとう。(…顔まっか)」

佐助の中に、また一粒がぽとりと積もる。


「ごめんな、帰り遅くなっちゃって。明日にすれば良かったんだけど」
「いや、俺も明日は用事があるのでな…」

「そっか、何部?」

普段通りに、応援に行っても良いか尋ねようとすると、


「ではなく、元就殿と甘味食べ放題『デート』なのだ」



………………え



察しが良過ぎるのも、時には考えものである。
佐助は、もう少し夢気分に浸っていたかった気持ちを拭い、


「旦那、もしかして──」
「うむ、皆には内緒だぞ?」

神社の笹をガサガサして覗けば、先日より明らかに増えていた、『真田幸村くんと…』の短冊の数。


青・黄・紫・黄緑・金・銀の、計六枚。




(俺様だけじゃなかったのね……)


激しく落ち込んだ佐助だったが、だてに何年もしつこく同じ目に遭ってはいない。

すぐさま復活し、まずは、「デート」の正しい知識からだな、と自身を叱咤したのだった。







‐2012.6.30 up‐

お題(どちらも)は、【biondino】様から拝借、感謝^^

『気持ちを君に』は、佐助用のお題でして、使わせてもらえて嬉しいです。

完全に私のやりたい妄想で、甘くもなくすみません; またこんな佐幸。飴キャッチって…(冷汗)
「さすがは佐助!」って何回も言わせたくて、毎度毎度しつこく申し訳ない;

久々に鶴姫ちゃん出せて嬉しい(´∀`)
就様以外の五人は、親『海に行きたい』、家・三『家に遊びに来て欲しい』だったので、すぐにはできなかったんですね。でも、一番にしたのは佐助のだったんだし。

ちなみに、残り二名のは『結婚したい』で、幸村は冗談だろうと思ってたのが、佐助の告白で少し変わるかも知れない。佐助ファイト〜

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