気持ちを君に1
佐→幸、鶴姫が少し。幸村モテ、高校生。
七夕にちなんだ話。
仲良しで佐幸寄り…のつもりなんですが、やっぱこんなんです。甘さは極少。佐助頑張って、な感じです。ほのぼの。
他キャラは出ませんが、幸村モテ。あとがきに、書けなかった設定を吐き出したので、良かったらどうぞです。
(全3ページ)
「猿飛さん、どうぞっ」
「え?」
振り返れば、ニコニコと見上げるクラスメイトの顔。差し出された鶴姫の手の中には、緑色の紙切れが一枚。
「『魔法の短冊』です!願い事、高確率で叶っちゃいますよ?」
「へぇぇ?」
ノリに合わせる佐助に、鶴姫も笑って、
「うちの神社で配ってるんです。この週末にお祭りがあるんですけど、見た目も華やかだと助かるので…でも、本当に叶ったって声、毎年結構聞くんですよ〜」
「へー…」
佐助が短冊を受け取ると、鶴姫は少し申し訳なさそうに、
「赤は孫市姉さまにあげちゃって、真田さんの分がないから…内緒にしてて下さいね。他の色も、皆さんに配ってしまって」
「はは、りょーかい」
「書いたら、神社の笹に付けていって下さいねっ。名前は書かなくても大丈夫ですよ〜」
じゃあ、と手を振られ、佐助もにこやかに返して学校を後にした。
………………………………
(願い事…)
そんなもの、考えるまでもない。
…だが、大っぴらに書けるはずもないし……
信じていないくせに悶々としながら、佐助は鶴姫宅の神社に来ていた。
何本もある笹に飾られている短冊を見ると、なるほど、うちの学校の生徒の名前が結構見られる。
そして、無記名の数も多く…
(やー、やっぱ俺様モテるねぇ)
女の子たちが書いたと見える、『猿飛佐助くんと…』というものを発見しては、ニヤニヤ。
政宗など友人たち宛てのも、同じくらいある。そして、
(…旦那のも……)
──ああ、それなら問題ないか。
佐助は短冊を取り出し、ノートの上でサラサラとペンを走らせた。
“ 真田幸村くんと、デートがしたいです ”
「ハハハ…」
自分の行動に、カラッカラに渇いた笑いを贈る佐助。
本当は、それよりもっと書きたいことは沢山あったが、明らかに周りから浮いてしまうのでやめておいた。
これも大概だとは思うが、バレなければ問題ない。
短冊をくくり付け、目立たないように笹で隠すと、足早に家に帰った。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
さてさて、その週の土曜の朝のことである。
「珍しいね〜、旦那が休みにさ」
「うむ、そうなのだ」
佐助と幸村は、家が近所の幼なじみ同士。お互い片親で仕事が多忙であるため、ほとんどどちらかの家で過ごしたりと、家族同然の付き合いをしてきた。
二人とも部活はしていないのだが、幸村は色んな運動部に助太刀をすることが多々。
休日はいつも練習に付き合うのが、今日は朝から佐助の家を訪ねてきた。
もちろん、佐助は嬉しくないはずがなく、必死に普段通りを演じているわけだが。
「良い天気であるし、どこかに出かけないか?」
「──へ」
「佐助の好きなところで良いぞ。俺は詳しくないし…お前の行きたいところにしよう」
「俺様の……」
二人で、なんてもう久し振りだからか、幸村は少し照れた風にはにかんでいる。
佐助は、思わず壁のカレンダーを見て、
(…今日……七月、七日……)
“ 願い事、高確率で── ”
鶴姫の声が響き、『…マジでっ?』と固まる。
「佐助?」
「…あ、ちょ、ちょっと待って?」
落ち着け落ち着け落ち着け!
あんなの信じてなかったから、ノープランだっての!どーしよ、どこ行こう?俺様の好きなとこって、えーと…
男二人でいても変じゃないとこ……いやそんなの気にしないし、旦那もだろうけど、何というか『デート』って思っちゃうと……でも、旦那はそういうつもりはなくて、だから、
「──む?政宗殿」
「…えっ?」
その呟きに我に返ると、佐助は鳴り続ける幸村のケータイを奪い、
「………」
「お、おいっ?」
着信音が止むまでそのまま離さなかった佐助に、幸村は怪訝な顔を向けるが、
(…そういや姫ちゃん、『皆さんに配って…』っつってたよな)
政宗や、恐らく他の友人たちにも……
(あいつら、何て書いたんだ?)
いや、聞かなくても大方予想はつく。…自分が書いた内容を思えば。
ということは、今日一日は、幸村は約六人の奴らと、何かがあるかも知れないわけで……
「旦那、今日は家(…にも来る可能性あるな)じゃなくて、えー…と」
「その前に、政宗殿に…」
「あっ、あいつにゃ俺様も用があってさ、聞いといてあげる!」
と、電話をかける(振り)
「──うんうん、はーい、じゃねー。…大した用じゃなかったみたい、また明日にでもかけ直すってさ」
「そうか…良かったのだろうか」
平気平気、と言いながら早業で、政宗+他五名の番号を着信拒否設定。
「でね、俺様の行きたいとこだけど…」
奴らが来そうにない、邪魔されない場所──佐助の頭には、ただそれだけしかなかった。
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