運命の七日間(後)-1

※前回の続き。
現・特殊パロ(ファンタジー系)、最終回 ※バッドエンドではないです。

テーマ『一週間』お題と、タイトル「運命の七日間」+1題を【biondino】様より拝借・感謝^^

【最終回】佐幸・鶴姫・他キャラ少し。社会人・学生・魂管理人

※前回までと違い微シリアスですが、成就話です。切・甘(微)。シーン切り替え多し、長め(><) ※幸村、後半はタメ口。背景無理やり


(全4ページ)













佐助には果てしなく感じられたコール音も、何度目かで止まり、


『──はい』

「あ…猿飛だけど」

ごめん、こっちから掛けちゃって…その後も自然な言い訳を用意していたのだが、『ごめん』も言う前に、

『…アンタか』
「え…」

『こないだ会った伊達だ』

「……」


──何故。

彼のケータイに掛けたのに。
佐助の心は一気に陰る。自分に言った言葉は忘れ、友人らと会っていたのか…

『悪いが、幸村は出られねぇ』
「何で……」

『会って話すよ』

アンタが、こっちに来てくれ。
そう告げられた場所に、佐助の陰りは一瞬で消えた。









中に入ると、テレビなどでは馴染みの光景があった。少ない付き合いのせいか実際には目にしたことがなく、現実感が一ミリも湧いてこない。

部屋には彼の友人三人が立ち、機械音の他はとても静かだ。
彼らの視線の先には、ベッドに横たわる幸村の姿。口元に透明なマスクを当てられ、身体は微動だにしなかった。


「──…」

呆然と突っ立つ佐助に、徳川と石田は目もくれない。

伊達に促され、病室を出てすぐの長椅子に座った。


「病気だったの…?」

「本人も俺らも、知らなかったんだ」

伊達は溜め息をつき、

「実家近くで倒れて、運ばれてな。…頭ん中に、でっかいのがいるんだと。ここ半年くらいで育ったらしくてよ。普通の健診じゃ、そこまで診ねぇだろ…」

やりきれないように言い、壁に背を付けた。

若いと進行が早く、また本人の自覚が少ないケースなのだという。医者にどう泣きついても、意識が戻る見込みはなく、今日明日が峠という答えは変わらなかったと。

「何で…」
「原因が分からねぇ奴なんだとよ。一因に、ストレスとかも言われてるらしいが…」

伊達は虚ろな目で、病室のドアを眺める。


「もっと、気にかけるべきだった…。──あいつ、去年に家族を亡くしたばっかでよ」


…立ち直れるわけねぇのにな。

自虐的に言うと、彼はそれ以上何も口にしなかった。









連休に親しい家族同士で出掛け、その先での交通事故だったらしい。幸村は友人らとの旅行話が既にあったので、そちらを優先したのだと。

スタジアムでは、あんなに楽しそうに話していたのに。はしゃぐ子供を見て、『幼い頃を思い出した』と、弟妹らのことを…


(死んじゃうんだ……幸村、も)



「『どうせなら、自分が死んだ後で倒れれば良かったのに』──とか思ってます?」

「…あ…!」

戻ってきたアパートの部屋に入ると、あの彼女──鶴姫が座っていた。

「でも幸運でしたね。あの世に行っても彼に会えて、好きなだけ一緒にいられるんですから」
「……」

微笑む鶴姫に、佐助は黙って近寄り、

「…それで、引き合わせてくれたわけ?」
「私、キューピッドも自負してるんですっ。あの方はあなたにと、前からマークしてて…」
「ねえ、時間戻せたりはしないの?」
「え?」

鶴姫はキョトンとするが、佐助は正座し彼女を見据え、

「アンタも優しいよね…ありがとう。この何日、俺様本当に楽しくて最高だった。あのとき死ななくて良かったって、つくづく思う。…でも」

静かに頭を下げると、

「頼むよ……あと少ししかなかったのに、俺様の願いで操られたまま過ごしたなんて、あんまりだ。あんなに仲が良い友達もいるのに…」

こんなボロアパートへの引っ越しで一日潰され、会うはずもなかった自分なんかに時間を割いて。そうでなければ、毎日友人らと過ごしていたに違いないのに。


「……った」
「…え?」
「あ、いえ!」

鶴姫は慌てて首を振り、「ごめんなさい、時間は戻せないんです…けど、」

と、どこから出したのか、手に持った封筒を見せ、

「これをどうぞ。お隣の部屋から拝借して来ちゃいました」
「拝借って…」

が、『猿飛佐助様』と『親展』の字に、バッとそれを奪い取る。


(…昨日、あんなこと言ったから……)


こっちは告げたかっただけだと言ったが、きっと彼は思い悩んで、何かを綴らずにはいられなかったのだろう。

佐助は、急いで封筒を開ける。
外では日没も過ぎ、明日が刻々と近付いていた。













いつも早くに就寝する幸村が、その日は長いこと眠れなかった。そして寝返りを打った際に、ある異変に気付く。

枕元に、誰かが立っている。


「なっ…」

「真田幸村さん二十一歳学生独身、去年の秋に家族全員を亡くすまで平凡ながら幸せな毎日、葬儀の後も家族を思い、立派な生を全うするべく前向きに…」

その誰かは、そこでやや止まると、

「なので、言いにくいんですけどね……あなた、来週日曜の終わり頃に、亡くなられるんですよ」


──それが、日曜になったばかりの夜の出来事。

夢だ、馬鹿げていると、普通ならそう考えるだろうに、何故かすんなり納得した。相手が放つ雰囲気に、不思議な説得力があったからかも知れない。

幸村は朝方まで眠らず、友人らに手紙を書いた。それぞれとの特に思い出深い話を、ただ懐かしむように。読み手も幸村も、笑みしか浮かばぬように。

他にも感謝を伝えるべき人は沢山いたが、一週間しかないので、目をつむらせてもらう。

幸村は、残りの日々を思うままに過ごそうと決めた。

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