運命の七日間(中)-1

※前回の続き。
現・特殊パロ(ファンタジー系)。最後は佐幸、次回で終わる予定。※バッドエンドにはしません。

テーマ『一週間』お題を【biondino】様より拝借。+リクで、タイトル「運命の七日間」他複数題を提案して下さいました。本当に感謝です(≧▽≦)

【中編】佐+幸、他キャラ少し。(佐助が主) 社会人・学生。

※佐助、孤独な人生から性格・口調が控えめ。ほのぼの・微甘・切。シーン切り替え多し


(全3ページ)














(…腹減った……)


朝、長年強く感じていなかった欲求で目が覚めた。
昨日陽を浴び汗をかいたからか、鏡に映る顔色が随分と良い。筋肉痛なんて、これももういつ振りのことだろう。

──米以外は何もない。コンビニへ、と思う佐助だが…

時刻は八時前で、確か近所のスーパーは開店が早かったはず。
佐助は財布を手に、晴れ渡る青空の下を歩いていった。









「おはようございまする!」
「…、おは、よう…」
「今日も良い天気ですなぁ」
「…あ、うん」

朝食を作り終えた後で洗濯物を干していると、隣の窓から幸村が顔を出した。そっちも、これかららしい。

「良い匂いですなぁー…もしや、ハンバーグで?朝から夢のような」

『グー』

──彼の声にも負けぬ音が、後に続いた。


「……」
「…朝食、まだでして」

かーっと赤くなると、幸村は洗濯物を干すスピードを上げる。

「で、では…」
「…あ」

その顔に見入っていた佐助は、幸村が干し終えたところでハッと気付き、

「あっ、のさ──」










「ごちそうさまでござる!まこと美味でござった!」
「あ、いや…どうも」

数度目の称賛にうろたえる佐助だが、何とかまともには返せた。

彼が自分の部屋で、自分が作った料理を食べている。信じがたい現実に佐助の箸は遅くなったが、ハンバーグもサラダもスープも、久々にしてはきちんと作れていてホッとした。

一昨日の礼に、と多めに作りながら、『引かれる、やっぱやめよう』と思っていたのに…それも渡すだけのつもりが、「良ければ一緒に」と言われ、こんな状況に。

佐助は嬉しくないわけがないが、緊張の方も強く、早く帰って欲しいのとそうでない気持ちが拮抗していた。


「ご両親と、猿飛殿で?」
「──うん…」

幸村が示した写真立てには、幼い佐助と両親の写真が、数枚飾られていた。

どうぞと言うと、幸村はそれを手に取り、

「顔のこれは…」
「あぁ…父親と何かで遊んでから、毎日やってて」

頬と鼻の上の、緑色のペイント。
昔はそんなふざけた行為も堂々できて、周りにも『似合う』と言わしめていたものだ。

「今はなさらぬので?」
「え?」
「…『おれさま』」
「あー…それも、昔自分のことそう呼んでて…」

考えてみれば、何と奇抜な子供だったのか。佐助は恥ずかしくなるが、幸村は微笑んでおり、

「ちょっと、言ってみて下され」
「…何を?」
「おれさま、と!」
「……」

どう反応したものか、佐助は止まった。他の人間なら、十中八九馬鹿にしての言葉だろうが、彼の目は、


(…うぁ…)


そんな期待に満ちた顔を向けないでくれ。
佐助は逃げたくなりながら、あぁでも笑ってもらえればそれで良いかと、

「お…、……俺様…?」

「……!!」
「(へ…?)」

ぱぁっと輝く顔に、佐助はたじろぐが、

「良いと思いまする、とても!」
「──イヤ、おかしいでしょこんな…」
「自分など『某』ですし!友人には、『ワシ』と呼ぶ者もおりますぞっ?」

「へぇ…」

それにも驚く佐助だが、楽しげな様子に呆気にとられていた。それで自分のはしゃぎようを自覚したのか、幸村は声を落とすと、

「猿飛殿は、良い方ですな」
「…はい?」
「某…この口調で、必ず怪訝に見られますので」
「ああ…」

気にしているとは思わず、佐助はまた意外に思う。幸村が遠慮がちになった気がし、内心では焦りながら、

「最初は驚いたけど、何か自然だし。てか──良い人は、そっちだよ」

「……」

幸村は、目を伏せたまま無言。佐助は一瞬不安になるが、どうも照れだったようで、

「幼い頃よりの口調で…家族には、こうまではないのですが」
「そうなんだ…兄弟は?」
「弟と妹が。下には威張り散らしてまして」

幸村は苦笑するが、きっと慕われているに違いない。敬語を使わない彼は想像しにくかったが、佐助は彼の家族を羨ましく思った。


──後片付けまで手伝ってもらった最中、幸村のケータイが鳴り、

「短期で、もう終わっておったのに」

幸村は、不服そうに通話を切る。
以前のバイト先からで、急に人手が足りなくなったとの協力要請らしい。少し行った先の公園での、イベント関係の仕事だとか。

「キツいバイト?」
「いえ…ただ、今日は…」
「用事あるなら、断れば良かったのに」
「いや、用は…──あ!」

幸村は突然声を上げ、

「猿飛殿、今日のご予定は!?」














「こっちは終わりなんで、後は時間潰しててもらえます?」
「あ、はい」

佐助が頷き終わる前に男は去り、他のスタッフのもとへ走っていく。


『もしお暇ならば!』

と幸村に誘われ、彼のバイトに参加したのが、もう数時間前のこと。
仕事はテントの中での物販係で、幸村の方はまだ客足が尽きないらしい。


(一生懸命だなぁ…)


佐助は公園のテーブルに着き、働く幸村をボーッと眺める。
ハキハキした声と丁寧な態度に、さらにはあの笑顔。客が全員自分と同じになりやしないか、気がかりになるほどだった。


「──なぁ、アンタ。あのボロアパートの奴だよな?」


「…あ」

佐助は、にわかに驚く。

目の前に、幸村の友人と思われる三人が立っていた。

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