運命の七日間(前)-1


現・特殊パロ(ファンタジー系)。最後は佐幸の予定、長くなるので連載に(目標3回)。※バッドエンドにはしません。

テーマ『一週間』お題を【biondino】様より拝借、+リクで、タイトル「運命の七日間」他複数題を、提案して下さいました。本当に感謝です(≧▽≦)

【前編】佐+鶴、佐+幸。(佐助が主) 社会人・学生

※鶴姫が、見た目は人間だけど人外。佐助は薄暗/孤独な人生・性格。今回は、切・ほのぼの・片想い…な感じ。後半では、少し他キャラ出すかも。


(全2ページ)














『よし、やろう』


錠剤が入ったケースの蓋をひねった。
他の方法も考えていたが、運良くこれを入手できたので、アパートに帰ってから早速手に取ったのだ。


「──あのー、あと一週間待ってもらえませんか?」

「……だれ?」

傾けたケースから、ザーッと薬がこぼれ落ちる。若者は唖然とし、突如現れたセーラー服姿の少女を見上げた。

少女はふわふわ浮いており、懇願するような姿勢で、

「猿飛佐助さん二十四歳独身、幼い頃にご両親を亡くされ身寄りは他になし、ご両親が亡くなった状況から親殺しではとの疑いの目で見られ、友人関係も上手くいかず孤独な日々。遠方に就職するも、未だに過去のそれがどこからか舞い込み、人間関係がこじれ三度の失業……」

「死にたくなるのも、分かるんですけど」と、気の毒そうに見てくる。


「はぁ……てか、アンタは?」

佐助の問いに、少女はニコッと笑うと、

「『魂』管理人の、鶴姫ですっ!」


「…は」
「水先案内人とか死神とか色々呼ばれてますけど、役割は細かく分かれてて…」
「ちょ、待って待って」

佐助は目を丸くし、「てことは、俺を迎えに?」

「まぁ…でも、今は待って欲しいんです。あなたの魂の回収は、私が予約済みなんですけど」
「一週間、って…?」
「はい」

鶴姫は頷き、「一週間後に、あなたは逝く予定なんです。自殺は魂ランク下げちゃうから、お願いしたくて」

「ランク…」

それは、分かる気もする。
夢か現実かは分からなかったが、佐助は薬をゴミ箱に捨てた。

鶴姫は、ホッと安堵の顔を見せ、

「ありがとうございます〜!ランクの向上も重要で、なるべくプラスの気が多い魂が望ましいんですよ」

「それは、役に立てそうにないけど…」
「なので、あなたのような不遇な人には特典があるんです。簡単に言えば、『お願い事』ですね」
「そんなのも、特に…」

佐助は首をひねり、

「あぁ──可能なら、死ぬ前に誰かに優しくされたい…かな」

「………」

鶴姫は少し黙ったが、

「分かりました。必ず約束しますね!」

そう言うと、フッと姿を消した。言葉通り、影も形もなく。


「……」


(…あと一週間だったんだ)


願望が見せた幻かも知れないが、そのときはやり直せば良いだけだ。
現実であるなら、最後に身を任せるのもまた一興だろう。











目を覚ますと、夜が明けていた。
昨夜のことは、よく覚えている。寝る前の状況も、しっかりと。

迎えるはずのなかった、月曜日──…

さて、一週間何をして過ごそうか?





やってきた月曜日






『──は、──』
『…!──を…』
『──と、──!』


(はぁ…)


玄関のドアの覗き穴から窺うと、隣室で引っ越し作業が行われていた。
ここは二階建てで四軒入居可能だが、最近は佐助だけしか住んでおらず、半年後には取り壊しが決定していた。フォローのしようもないボロアパートで、まさかまだ入居希望者がいたのだとは。

業者を頼むほどでもなかったのか、学生風の青年数人が、忙しなく行き来している。


(また、夜うるさくなるんじゃ…)


以前の隣人も友人が多く、耳が良く眠りの浅い佐助は、ほとほと迷惑していた。しかも勤めていた会社の同僚が一人いて、常に白い目で見られていたものだ。

鬱々したものが胸に湧き、佐助は暗く落ち着く布団の中に潜り、目と耳を閉じた。









夕方を過ぎると、『コンコンコン』とドアを叩く音が。つまり、呼び鈴さえもないアパートであった。


『こんにちは、隣に越して来た者です…』


(…挨拶なんて良いから)


意外に思うも、出る気など毛頭ない。佐助は布団を掴み直したが、


ドンドンドン!!

『こんにちはー!!隣に越して来た者ですがー!!』


(はぁっ…!?)


ドアが壊れそうな轟音と音量に、肝が潰れた。居留守がバレていたのか、しかしそこまでキレなくても良いのに…
出なければ次は蹴られそうだ、佐助はますます暗い気分でドアの鍵を開けた。


「はい…」
「あっ、こんにちは…!某隣に越して来た、真田という者でござる!」

「……」

『ござる』に、『それがし』…

佐助はまた驚くが、どう見ても目の前の彼はふざけている様子ではない。またキレた風でもなく、佐助がイヤホンで音楽鑑賞をしている、とでも思っていたのかも知れない。

くっきりと大きく、中に星でも入ってるのかと思ってしまうような瞳には、佐助への警戒心や蔑みが、少しも見られなかった。


彼は、手に持った袋から何かを差し出すと、

「こちら、お口に合うか分かりませぬが…親戚が勤める会社の物でして」

宣伝のようでお恥ずかしいですが、と頬を赤らめ、その箱を渡す。
恐らく、中身は蜂蜜やジャムの詰め合わせセットで、何故分かったのかと言えば、

その会社は佐助の故郷にあり、店のロゴやイラストを見て、一挙に記憶が甦ったのだ。
両親も佐助もここの物が好きで、毎朝食卓に──


(…あ、れ……)


懐かしい両親の顔が浮かんだ。

と思った次には、視界と頭が真っ白に変わっていた。

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