らいライlie!2


佐幸、高校生頃。幸村視点。


エイプリルフールネタ、微ギャグ・微甘・ほのぼの? 既に大人な関係ですが、描写も色気もなし。

幸村は賢いはずなんですが、都合よく抜けた思考になってもらいました(^^;














『俺様のお願い聞いてくれたら、団子とか好きなお菓子、好きなだけ作ってあげるけど、どう…』

『するする!!何でもやる!!』


去年の四月一日はそうして、佐助に破廉恥な真似(コスプレ・おねだり・その他諸々〜翌日身動き不可能)を強要され、挙げ句エイプリルフールだからと、菓子は無しだった!

…という悲劇をもう二度と繰り返さないため、今年はカレンダーを常にチェックしては、幸村は仕返しに向けて英気を養っていた。


(食べ物の恨みは根深いぞ……覚悟するが良い)


敵は最近忙しく、精神状態からいって、いつもより騙せる確率が高い。気がする。

今回こそ、自分が勝ってやるのだ。
幸村は笑いを噛み殺し、早めに布団へ入った。












『…んな……だんな……』


(……さす、け…)



「そろそろ起きなきゃ。大将、もう行っちまったよ?」

「…っ!?」
「今日は随分あったかいよ。もう四月だもんねぇ」
「わっ、良いッ、自分で干す!」


(ちちち近いわ…!!)


布団を取ろうと近付く佐助を、幸村は慌てて避ける。佐助は苦笑し、「はいはい、また落とさないでよ」と、部屋から出ていった。

幸村は大きく息をつき、肩を下げる。



(夢の続きかと思った…)


去年の悔しさを思い出していたからだろう、夢に佐助が登場し、…あれは一週間ほど前、二人きりになった夜の……

普段はちゃらちゃらしているくせに、そういうときはやたら精悍で、男であるのに艶かしく、夢の中でも心臓が、


「──ではなくてっ!」

我に返ると、赤い×印で埋まった三月のカレンダーを前に、『いざ!』と力を入れ、部屋を飛び出す幸村だった。











『好きなだけ菓子を作ってくれたら、お前の言うことを何でも聞いてやる!』

『……マジぃ!?』

ひゃっほう、といった調子で目にハートやキラキラを浮かべ、佐助は台所へ飛び込んだ。



(ふっふっふ……騙されておるとも知らずに)


調理に励む彼の姿を、陰でほくそ笑む幸村。
『これでも観て待ってて』と、録画された熱血ドキュメンタリー番組も面白く、すぐそっちに熱中し始めた。
同じように、瞬く間に数時間が経ち、


「お待たせ〜」
「うぉぉぉぉ……!!」

テーブルの上には、大好物がズラリと勢揃い。夢のような光景に目を輝かせ、幸村は生唾を飲み込んだ。
早速いくつか頂くと、「うまひぃ…!」「すまぬぅぅ」などと、去年の恨みは頭から飛んでいく。

「っ、なんだ?」
「…いやぁ、嬉しいなーと思ってさ」

「ぅ……」

夢中で食べる姿を眺められているのに気付き、幸村は顔に朱を射す。
佐助の目や表情は慈愛に満ちており、あろうことかまた夢の中の…というか、先日の彼の姿とダブってしまった。

お菓子を一気に頬張り、「まこと、もう暑いくらいだな!」と、幸村は服をパタパタ扇ぐ。
佐助は微笑んで、

「旦那とこうして…何か、改めて幸せ感じちゃったよ」

「…な、何を、急に」

「ありがとう、いつも本当に……旦那も、絶対幸せにするからね」


「──…ッッ」

初めてのそんな言葉に、幸村の胸はズキュンと打ち震えた。照れや恥ずかしさだけではない、内から熱いものが沸き上がり、とにかくやはりものすごく、自分は目の前の彼のことが、


(…なのに、俺はお前を騙そうと…!)


幸村は猛烈に後悔し、テーブルに両手と額を着けると、


「すまぬ、佐助ぇ!!俺はっ…、俺は…!」
「旦那?」

キョトンとする佐助に理由を話し、幸村は深々と謝罪した。
それに、「何だ、そんなこと」と佐助は笑い、

「良いよ。作るの苦じゃないし、喜ぶ顔も見られたんだしさ」
「だ、だが…」

「ホント、気にする必要ないって」

佐助は、ことさらニッコリ笑うと、


「だって今日、四月一日じゃないから」






「…なんだって?」

幸村は唖然とするが、「──あ!それが、今年のお前の嘘か!?」


「違うって、ほら」

佐助はクスクス笑い、録画した番組のままのテレビを、リモコンで入力切換する。映ったリアルタイムの番組は、毎週日曜に放送しているものだった。

…今年のエイプリルフールは、月曜日だ。


「今日は、まだ三月三十一日。…残念だったねぇ、旦那」

「なっ……何故…」

クスクス笑いから不穏な笑みに変わる佐助に、幸村の中で警戒音が鳴り始める。
混乱と焦りに見舞われるが、必死に記憶を辿り、

「お前、今日から四月だと言っただろう!騙したな!?」
「今日から、とは言ってないよ〜?『もう』四月だもんねぇ、とは言ったけど」
「同じじゃないか!」

「【もう(副詞)】=間もなく、やがて」

「…っ、…〜〜っッ」

ぐぐっと飲まされる幸村、しかし粘り強く考え、

「カレンダーは、三十一日も消えて…」
「あ、毎朝×印付けてるあれでしょ?今日は、代わりに付けといてあげたよ」

「んな……!!」

余計なことを!と思ったが、…結局は、自分が気付かなかったせいである。
そう認めると力が抜け、幸村は事実を受け入れた。
それを悟った佐助は、『よくできました』とでも言うかのように、幸村の頭を撫でる。


(また、情けない敗北に終わってしまった…)


…だが、今日が三月三十一日なら、あれらの言葉も偽りではないのだろうから。

幸村は自身を励まし、勝者の手に従った。



「さ〜て、何からしてもらおっかな?」
「…何でも来い。武士に二言はない」

その台詞に佐助は吹き出し、「そういうとこも大好き」と、目を細めた。


「………」

後で反撃するため、とっておいた言葉だったのに。
サラッと先に言われ、悔しいのか嬉しいのか…複雑な心地にされる幸村であった。





堕ちて嵌まって捕まった






‐2013.4.1 up‐

その後のおまけ→
エイプリルフールお題は、【biondino】様より拝借・感謝^^

また無理やりな展開、いつもな佐幸で; 佐助はお見通し(録画番組を見せてたのもわざと)でしたが、嘘の内容まではさすがに未知だったので、素直に大喜び。しおらしい言葉は本音です。

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