想像以上のダメージ3


『おいおい、どうするよ幸村…』

『う、あ、はい…』

先に我に返った元親が、ヒソヒソと幸村を窺う。
政宗と慶次は、子供ながらに思い詰めた目を向けていた。…結構な切迫感だ。

幸村は、咳払いしながら口を開き、


「二人とも、その……その目的だけで※※学園や偉い人を目指すのは、あまり良くないかと…」


(おぉ、ちゃんと言えんじゃねーか)


意外な冷静さに、元親はホッとする。
二人は、正に叱られた子供のように、シュンと顔を曇らせた。

「大臣の仕事は山ほどあり、すぐに叶えるのは難しいと思われまする。それに、二人が本当になりたいものを我慢するなど…某、辛うござるよ」

「ゆきむら…」
「ゆきちゃん…」

実現困難な事実と幸村の悲しい顔に、二人はますますしょぼくれる。

さて、どう言ってフォローしてやるか。何だかんだでアニキ気質の元親は思うが、幸村は「うむ」と微笑み、

「某、二人が大人になるまでけっ、結婚せぬので、そのとき二人がまだそうしたければ、また考えましょうぞ」


「「…えっ」」


(え゙っ……)


呆けた返事をする二人、ひくっと頬を引きつらせる元親。

幸村はというと、…少し照れた顔でいた。



「ほ、ほんとか!?…でも、かんがえるってどうすんだっ?」
「大人になっても、ぜったいしてぇよ!けど、そのために※※がくえんいくのダメなら、けっこんできねーじゃん!?」

なーなー/ねーねー、ゆきむら/ゆきちゃん!
必死な様子できゃんきゃん言い、両側から幸村の肩や腕を揺らす二人。もう、落ち込んでなどいられないようだ。

以前と同じ元気な姿に、幸村はまた嬉しくなる。女に間違われ、しかも淡い気持ちまで抱かれていたのに、今は、今の彼らの想いが何より喜ばしく、くすぐったい。

つまり、そこまでの深傷だったということなのだろう。真実が分かるまで抱えていた、あの寂しい心情が。


「なぁゆきむらァ!」
「どうすんのっ?」

「あ、えー……そ、そのときはそのとき、でござる」

と言っても、二人が納得するはずがない。幸村は、「えーと…」と眉を下げ、

「結婚せずとも、長く一緒にいれば家族になるかと…?」

考えによってはプロポーズのような響きに、幸村自身が恥ずかしくなる。ごまかすべく照れ笑うが、二人はパァァッと明るくなり、

「そっ……か!…じゃ、早く大人になりてぇなー!たのしみ〜」
「やくそくしたなっ?ぜったいけっこんすんなよ!?コイビトもダメだぞ!」

「こっ…、それは心配ご無用にて!」

幸村は赤面で否定し、やっと彼らも胸を撫で下ろした。


──何とか収拾を付けると、四人であの河川敷へ遊びに出る流れになった。

子供二人は久し振りなので、幸村たちの前を走り向かう。その後ろを歩きながら、「女に思われたのは、二人の姉貴分のせいだ」と元親が教えてやれば、やはり幸村は安堵を見せた。

のほほんと前を眺める彼に、元親は溜め息と苦笑を送り、

「知らねぇぞー?将来、どっちからもアタックされて、困り果てんじゃねーか?」

「まさかでござるよ」

幸村も同じように笑み、「その内目も覚めまする。二人して、もうから異性に人気らしいゆえ」


(……だったら、男と分かった時点で冷めんだろ)


元親の溜め息は増えるが、その嬉しそうな顔に、今は水をさすのはやめておいた。


「二人ともおせぇよ〜、早くー」
「なにわらってんだ?あんた、ゆきむらのことねらってんじゃねーだろーな」
「えー!?」

「…クソガキが、とんでもねー口ききやがって……根性叩き直してやる、覚悟しやがれ!!」

元親は迫力の形相で、キャイキャイと逃げる二人を追い始めた。



(笑える思い出として、いつか話してやろう…)


それまで、ずっと…──大人になってからも、親しくしてくれると良いが。

幸村はまた苦笑し、そのほとんどは願う気持ちに占められていた。





想像以上のダメージ

(一生懸命、だったんです)






‐2013.5.3up‐

お題は、どちらも【biondino】様より拝借・感謝^^
子供×年上の慶→幸ネタ、政+慶→幸の幼児ネタ、どっちもまとめられなくて諦めてたけど、やっぱり書こうと。で、もう混ぜてみた(;´▽`) あれだけ年下なら、ちゃん付けも許すはず。

この二人は、幼児の時点でも結婚したいとか思ってたら良いな〜。でもいくら可愛い言っても、普通の女の子よりいかついはずなのに。なのに女と思ったのは、初見でその対象となったから^^

姉貴分は、孫・かす。政・孫は親戚同士、かすがは謙信様つながりで慶次と知り合い。二人は別の高校、元親とは幼なじみ設定。伊達・前田家とも、それで付き合いあるとか。
なるべく簡単な台詞にして子供らしさを…としてみたけど、やっぱらしくない; 大きくなるまで、アニキにやきもきしてたら良い(^ω^)

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