想う気持ちは…

短文。

慶幸的オチ…ですが、前半の慶+幸より、後半の慶+かすがのやり取りの方が多い;
(高校生設定) 微ギャグ・ほのぼの?

随分前に、相互様にリクさせて頂いた『前田慶次で明るい甘』のお題の一つ。

なのに、甘くない…(;_;)
謙←かすも常備です。
※ちょっとお下劣なもの(シャレ的な)がチラリ。一応、ご飯中は読まない方が良いかも。
オチが分かり辛かったらすみません。後書きで色々言い訳。

お題は、最後に全文載せてます。


(全1ページ)














「け、慶次殿…!」
「おー、これから部活?」

「は、はい」

慶次は笑顔で向かうが、幸村の表情はどことなく硬い。しかし、真面目くさく堅苦しい彼の姿勢はいつものことなので、慶次は妙とも思わなかった。

幸村の学年は一つ下なため、こうして会えるだけで、彼の頭の中はバラ色に染まる。


「あの…こちら友人に山ほど頂きまして、良ければいかがかと…」
「へー?ありがと、じゃもらおっか」

示されたいくつかのキャンディの中から、一つを選んだ慶次だが、

「?」

それを幸村に奪うように取られ、目をパチパチさせ戸惑う。
しかも、彼は怒りの表情を赤い顔に浮かべており、『え゙、俺何かしたっけ?』と焦りが湧く慶次。

だが、


「…っ、すみませぬ!!実はこれ、ただの飴ではありませんでっ!罰とはいえ、某は何という卑劣な真似をッ…!」
「へ?」

慶次は面食らうが、『ああ』とすぐに、

「何だ、罰ゲームか。…って、俺なんかに食わせても面白くねーよ。もっとさ〜、怖ぇ…片倉先生とか、学園長とか」

「いやっ、それは…──とにかく申し訳ございませぬ、慶次殿!唆されたとは言えど、某邪な考えを……この性根、とことん正して参りまする!」

唸るように叫んだ後、幸村は一目散に駆けていった。


「おう、(部活)頑張れよ〜。(聞こえてないと思うけど)」

いつも元気だなぁ、と慶次はにこやかに手を振るが、


(あーあ、さっさと食ってりゃ良かったな…)


そうすればもっと話せたし、逆に『罰』として、デートの一つでも申し込めたかも知れないのに。

幾分か惜しい気持ちで、慶次は学校を後にした。












「おっ、奇遇だねぇ!」
「……」

が、相手は顔を歪め無言の相槌。
帰りしなに寄ったショッピングモールで、後輩と会い声をかけた慶次。

幸村と同じクラスで、慶次も友人を通して顔見知りである彼女──かすがは、無視を突き通そうとしたが、


「ちょーど良かった!謙信の誕生日プレゼント買いに来たんだけど、かすがちゃん俺より詳しいだろ?付き合ってくれねぇ?」
「(くっ…)」

『誰が』と思うかすがだが、『〜詳しい』の言葉に内心気を良くしてしまう。

それに万が一の話だが、慶次が自分より良い物を選ぶ可能性を潰せるじゃないか。彼女は、「仕方ないな」と頷いた。

そうして入った雑貨屋は、いかにも彼が好きそうな妙な物で溢れており、初見だったかすがの顔は冷めるばかり。
しかし、よく見てみるとオシャレな書籍や雑貨も豊富で、心引かれる料理本などには顔を緩めた。

『こういう料理はお口に合うだろうか…?』と、妄想スイッチがオンになったところで、


「かすがちゃん見て見て!これどうよっ?」
「(ッ、邪魔を…)」

噛み付きそうな顔で振り返るが、目の前に差し出されたそれに、綺麗に固まった。

よくある、アニメの美少女キャラの胸から上が描かれ、乳房が本物のごとく盛り上がっている仕様のマウスパッド。


「前々から思ってたけど、スゲーよなぁ。これ、謙信ウケると思う?」
「な…なっ……!」

「元親に頼んだら、かすがちゃんの顔に上手く作り変えてくれると思うんだけど、」

他の客から見えないように拳を入れたが、慣れている慶次は全くのへっちゃら顔。

その後も、和式トイレを象った陶器の食器(カレー皿らしい)を爆笑、『これなら…』などとのたまうのに、足を思いきり踏み付け黙らせた。
何とか『上品な』プレゼントを買わせ、かすがは店先で慶次を待つが、


「おい、何を…私は帰るぞ」
「──」

慶次は、お菓子が置かれた棚でボーッと突っ立っていた。

パッケージが可愛い外国のものや、普通よりも遥かに大きいサイズのもの、シャレも込めた変な味のもの…色々あり、年上のくせに丸きり子供思考の彼が、いかにも好きそうな空間だ。

かすがは呆れた口調で、


「お前、あんな馬鹿なことばかり言ってるから、真田にも白い目で見られるんだぞ。少しは、まともな行動をしてみたらどうなんだ?」

「…あ、かすがちゃん…、これ、……」


(何だ…?)



「──…」

そのお菓子を目にし、呆れが増すかすが。


「お前は女子か?こんなもの、まさか本気で信じて、」
「かすがちゃんの言う通りだなっ!俺、ちゃんと真面目に伝えてくる、幸に!!」

「はぁっ?」

唖然とする彼女に、「ありがとな!」と手に持った袋を指し、慶次は走り去っていく。



(…何なんだ、いきなり?)


何がどうして、突然そんな気に?
わけが分からなかったが、『関係ないか』とかすがは前を向く。

と、再び先ほどのお菓子──ポップでカラフルなパッケージの、『飴』の詰め合わせが目に入り、


(何が、“恋するキャンディ”……だ)


何でも、『目の前の人物に恋したと思ってしまうほど、究極に甘くて美味』な飴らしい。

こんなもので落とせるのなら誰も苦労しないと、かすがは鼻で笑う。


易く手に入る贋物よりも、苦労した先の本物こそが真実。

(妄想は別として)堅実な考えの彼女はそう改めると、買った袋の中の料理本に、ふふっと頬を緩ませた。





想う気持ちは砂糖菓子より甘い

(それを今すぐ、君に伝えに)






‐2012.10.21 up‐

お題は【biondino】様より拝借、感謝^^
()内のは、管理人によるもの。

幸村は、友達にすごい説得力で騙されてます。惚れ薬だと。まさかと思いながら、『罰ゲームだから仕方がない』とか自分に言い聞かせて、もしかしたらこれで…とちょっと夢見てしまった。

サイト様に初アタックした際、『前田慶次で明るい甘』でリクし、下さった素敵お題。もう、一年以上も前の話…(--;) ずっとやりたく思いながら、なかなかできませんで。挙げ句こんな全然甘くもなく、慶幸描写ほとんどないという。
もう一題下さってるので、そちらも近い内にお借りしたいです。

慶次とかすがちゃんのやり取りが大好きで。
ヴィレッジヴァンガード、慶次好きそう。カレー皿、衝撃の一品でして。要らん描写、本当にすみません。

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