甘く溶けきった思考回路3






(黒ちゃんてば、子供は苦手だって言ってたくせに…)


佐助は苦笑し、ケータイを閉じる。
あれから彼は、ほとんど毎晩メールを寄越すようになった。内容は、『坊主は元気か、変わりないか』などという、幸村の安否を気遣うものばかり。


「さすけ〜?」
「ああごめん、ちょっと待ってね」

ケータイを置くと、佐助は準備途中だったものをリビングに運ぶ。
今日は信玄の帰りが遅く、二人きりだった。


「いちごぉ!!」

輝く顔に、『久しぶりだったもんな』と佐助も笑みが湧く。
これがあるから、忙しいバイトも合間を縫ってする勉強もコンスタントに続けていられるのだ。──日々の成長を喜ばしく、将来の姿を楽しみに思いながら。









(………)


苺はどれも美味しそうに色付いていたが、やはり官兵衛の家でのあれは例外だったようだ。


「さすけ、れんにゅう…」
「──え?」

佐助の聞き返しに、『ちがったのか』と幸村は焦り、「…え、えんにゅう…?」と彼を窺うが、


「旦那、いつも言ってるでしょ?欲しいものの名前だけ言ってもダメなんだって。それをどうしたいのか、どうしてもらいたいのか、きちんと言わなきゃ」

「(あぅ…)」

…そういうつもりではなかったのだが。

官兵衛に教えてもらった名称をちゃんと覚えておくべきだったと悔やみながら、しかし佐助は怒っている風ではない、ならばと、やはりいつも通りにやり直してみることに。

幸村は苺の皿を手で囲い、佐助を上目で見つめる。
彼の表情が微妙に変わったときが、幸村なりに学んだ『最適な』タイミングだった。




「さすけ、『しろいの』だしてくれ…」



───……


「………」

数秒、佐助は俯き沈黙していたが、

「だんな、それだけじゃ、やっぱりちゃんと伝わんないよ…?」
「っ!!」

そ、そうか!と幸村はすぐに顔色を変え、


「『さすけの』しろいの、ここにだしてくれっ!」

「…ッ」

佐助は、少し肩を揺らしたものの、「……それだけでいいの…?」

またまた幸村はハッと口を開け、懸命に記憶を手繰り寄せる。


「いや、えっとな…!だして、たくさんかけてほしい!いちごもすきだが、さすけのしろいののほうがあまくておいしいから…っ」


「だぁんなぁぁ!!」

ぎゅうーっと抱き締められ、幸村の手のフォークが佐助の身体に思い切り食い込んだ。
…が、その痛みすら歓びになるようで。

後に続く『旦那かわいい、マジ大好き!』『俺様ほんっと幸せ!!』等は、毎回何度も聞く言葉たちだが、それを言われるのもその顔を見るのも大好きな幸村。

よって、苺が大好物になったのも当然の結果だったわけである。


「待っててね、すぐ俺様特製の甘くて美味しいアレ出してあげるから♪」
「うむっ」

しかし、れんにゅうだとかいう名前ではなかったのか、との疑問は残る。
佐助はそのフォローも抜かりなく、

「お店で売ってるやつは練乳って言うんだけど、これは俺様が他のも混ぜたりしたやつだからさ〜。旦那の好きな味になるように」

だから、これは今まで通りの名称で良いのだと。
なんだそうだったのか、と幸村も理解し安堵できた。



(はぁ〜、旦那かわいいなぁ…でも俺様ショタってわけじゃないんだよ?だって、旦那以外の子にそんなの思ったこともないし。それに、旦那に早く大きくなってもらいたいしさ?無知な今もすんごい可愛いけど、育った旦那に、意味分かってんのに無理やり言わすのとか、どんだけ鼻血もん)


「しろいのおいしいぞ、さすけっ!またつくってくれっ、な?」
「俺様大感激〜!うんうん、ずーっと作ってあげるからね?」
「うむ、かんしゃするぞ!」

口の周りにベタベタ付いたものをわざと放置し、佐助は未来への願望妄想にウットリ浸るのだった。











‥余談‥


官兵衛の故郷の実家にて。(半兵衛と秀吉)


半「今日、官兵衛くんから電話があってね」
秀「珍しいな。それで何と?」
半「ようやく目指すものが見えてきたそうだよ。弁護士か警察官か。彼なら、どちらでもすぐパスするだろうけど」
秀「…ある意味、両極端な二つな気もするが」

半「もしかすると、また全然違うものにするかも知れない、とにかく子供を守る仕事に就きたいとか言っていて…一体何があったんだろうね?」









‥余談A‥


佐「蟻を潰すと甘い匂いがするじゃん?チョコみたいな」
官「…いや、知らんよ」
佐「え、小さいときやんなかった?今度試してみてよ」
官「……」

佐「あれって、やっぱ蜜とか吸ってるからなのかなぁ。…人間の体液も、あんな風に味を変えられたら良いと思わない?」
官「……」

佐「自販機みたく、ハチミツ、メープル、カラメルソース…とかって。口直しに、本来の味は常備でさ」
官「……」

佐「──あっ、あのお菓子旦那大好きなんだよね〜。ハニーフレーバーが特に好きでさ?買ってってあげよーっと♪」



……一刻も早く、有力な職種の見定めをしなければ。

使命感を再度改めさせられ、しっかりと背負い直した官兵衛であった。





甘く溶けきった思考回路

(伝えきれないほど愛しいんです)







‐2012.9.9 up‐

お題はどちらも【biondino】様より拝借、感謝^^

とにかくすみません…下らなさすぎる。
こんな話に素敵お題をお借りしたのも、大変申し訳ない;
それほどに旦那を愛してますとか説得力ない…ですね。

三成が大人しくなったのは、高い位置だと秀吉様にお近づきになれるから^^

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