赤い糸は絡まる



前タイトル【さてこれから…】の、佐助サイドと続き。

佐←幸 ですが、ああやっぱり、と思われるかと。(二人とも病み)
いつものように、ネタやオチがバレバレ;

他、(捏造含む)脇役が少し登場。


意味不明・珍妙乱文m(__)m

※後味悪い…ですね、多分。













小学校の高学年の頃から、異性によく声を掛けられるようになった。


父親しかいなかったので、家は空けていても問題がない。

コンビニ弁当には飽き飽きしていたし、年上のお姉さんの作るご飯は、絶品だった。
釣られるまま、向こうのアパートやマンションに通う内、それがもう普通になっていった。

ご飯のお礼は、彼女たちの望みを何でも叶えること。
それにはお金など必要なく、慣れてしまえば何も難しい行為ではなかった。

その内、学校でも同じ現象が起こり始め、時々複数と付き合う羽目になったが、色々面倒だったので、やはり一人と決める。

が、そうであっても周りが受け取るのは悪印象でしかなく、昔から少なかった、友人と呼べる者は全員いなくなり…

しかし、幼なじみである彼だけは、自分から離れなかった。


『そうか──』


新しい恋人がどんな風であるかを話すと、彼は、本当に嬉しそうに喜んでくれる。

彼女に会わせれば、より愉しげに笑ってくれた。


…友人など必要ない。

彼が一緒にいてくれ、自分を知り、受け入れてくれるのであれば。

何も怖いものなんてない。


恋人と別れる度訪れる虚しさを、この先、一生味わうことになろうと。












(早く終わんないかな…)


幸村が他の友人たちと話していたので、終わるまで待とうと、廊下で身を潜めていた。



「あの女、ホント二重人格だよなー。あいつの前じゃ、すっげぇブリッコしやがって」
「それも恋だってば。いーじゃん、可愛くってさぁ」
「Ha、どこが。お前ぜってー騙されるタイプだな」
「んなことねぇよ?俺、ちゃんと分かってっし。自分だけにはそうなるとか、最高じゃん。なぁ、幸?」

話を振られた彼は、笑っていたようだが、


「そうですなぁ。某は、すごく良いと思いまするよ。あの方だけを一心に想っていて。きっと、一生ああなのでしょうな」

「だろうねー。…ほら、破廉恥破廉恥言ってた幸をも、ここまで成長させた彼女だよ?すごくない?」
「Ahー…まぁ、ずっと同じだしな、クラス。嫌でも慣らされる」


「彼女は、知っておるのですな。…本当に綺麗で、ずっと見ていたくなりまする」

それは、ほんの小さな呟きだった。


「え?」

他の二人が聞き返したが、「何でもござらん」と答える。


「お前は、そんな真面目なのにさぁ…何で、アイツはあーなんだ?未だに信じらんねぇ、幸とアイツが友達だって」

「確かにな。つーか、何であんな奴がモテんだよ。俺ァ、そっちに納得できねー」


(……)


自分のことだ、とすぐに分かった。

言われ慣れているので、今さら何とも思わない。



「佐助ですか」

幸村は苦笑し、「彼は、良いのですよ」


「いや、良かねーだろ。少しは、こっちにも回せってんだ」
「あー…、もう諦めの境地?」


「……」

彼は少し間を空け、

「そう…ですなぁ。彼は、ずっとああなのでしょう」


途端、失笑が沸き、

「うっわ〜、幸にさえ見捨てられてんじゃんアイツ。救いどころないね」

「ならよ、もう構わなきゃいーじゃねーか。俺らと一緒に帰ろうぜ、これから」


しかし、幸村は笑って、

「それはできませぬ。…、あやつには、某しかおらぬのですから」


「優し過ぎだよ、幸ー」と文句を言われながらも、彼は笑い続けていた。














カタカタ

カタカタ


細かく震える指先。


どうしよう

どうしよう


どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしたら、どうしたらいいどうすれば

このままじゃ、自分は



『幸にさえ見捨てられてんじゃん──』


あの笑い声が聞こえ、全身が震える。



「…ぃ、ぁ…だ、…あぁ、ど、しよ…ぅ」


考えるだけで涙が溢れ、止まらなかった。


ケータイに何度も掛けたが、着信拒否を設定されてしまったようで。


『急に何なの?…ねぇ、気持ち悪い。私そーいう重いの、無理』

そう冷たく突き放されたのが、半月前。


それからは、一時でも離れるのが怖くて、常に幸村の傍へ身を寄せていたが、焦りと不安は日に日に高まっていく。





「大丈夫ですか…?」

心配そうに覗く顔。

──知らぬ間に、周りは既に暗くなっていた。


「え、っと、私っ…そこでバイトしてて。いつも買って下さるから…」

こちらが顔を上げただけで、彼女の頬が真っ赤に染まる。

恥ずかしそうにしながらも、懸命に視線を合わせようとしていた。

涙を拭い軽く礼を言うと、「あの…っ」と引き留められ、



「実は、私──…


…──彼女さんがいるのは知ってたんですけど、どうしても伝えたくて…」


「…ッ」

話も終わらぬ内に、小さくなるその身体へ、すがるように抱き付いた。


「あっ、あの、」


「ありがとう…っ」

何度も何度も、囁きかける。


本当に、神や天使のように見えた。



…これで生まれ変われる。


『綺麗で、ずっと見ていたい』と思われるような人間に。


あの子のように、一生一人だけを想っていれば、きっと、自分のこともそう思ってくれて、



(見放さずにいてくれるよね?旦那──)



その好機を与えてくれた彼女は、今までにないほど愛しく思えた。


運命の相手に違いない、と。














「うーむ…」

「どうしたの旦那。課題?」

唸る姿を覗き込むが、机の上には何も置かれていない。


「…どうすれば良いものか、と思い」

「またぁ?最近、ずっと言ってんね。俺様、聞くっつってんのに」

だが、『まとまってから話す』と言われ、従っていた。


(進路のことだろうけど…)


だったら、とりあえずは自分と同じ大学へ行ってみないか、と誘いたくて仕方がない。
それで、学部の多い、そこそこのランクのところを志望しているのだが。


「考えていたエンディングは、迎えられそうにないのだ。それで、どの選択肢を選べば、一番マシなのだろう、と思ってな」

「何だ、ゲームの話?も〜、そんなのでずっと悩んでたわけ?」

だが、彼らしくて良いなぁと、自分の口元は緩んでしまう。

どんな内容なのか聞いてみると、彼にしては珍しくノベルもので、しかも恋愛要素も入っているらしい。


「二人が結ばれないのは分かっていたのだが、まさか片方に、将来の相手ができるのだとはなぁ…」

「普通、主人公の方がそうなりそうなのにね。悲恋ものかぁ」

どんな選択肢で迷っているのかにも、興味が湧いた。


「三択でな。@ライバルを消すA想い人を消すB自分を消す──の、三つなんだが」


「えー…」

売れなかったろうなぁ、と苦笑しつつ思考を巡らす。


「普通だったら、@なんじゃないの?」

「だがな、相手は恋人を心から愛している。そうなると、相手の心は、一生恋人のものになってしまうであろう?」


ああ、なるほど。


「じゃ、B…?でも、自殺なんてヤだよねぇ。引っ越したりして、心機一転するとかさぁ。現実だったら、そうするのが一番良いような気しない?」

「それは、俺も考えた」

だが、溜め息をつき、


「しかしなぁ…離れていても、やはり消せないと思うのだ。主人公も、同じほど相手を想っているのでな。…二人が幸せに過ごしていくのかと思うだけで、血が出るほど歯を食い縛ってしまうし。

自決などは問題外だ。自分がいなくなれば、彼らに忘れられ…二人は、お互いだけを想い合って。…そう考えると、心臓は停止から遠ざかる。血がたぎり、それは無理だと叫びを上げるのだ」


(……)


随分主人公に思い入れがあるのだな、と圧倒された。



「じゃあ……A?」

「──…」


(…やっぱり)


それだけは出来ないだろうというのは、聞かなくても分かっていたが。


「ホント、難しい問題だねぇ…」

「佐助なら、どうする?この三択以外に、何か良い手はあるか?」


この三択自体が、あまり良い方法でもない気はするのだが…

それでも、首を傾けながら、


「じゃあ、恋人の前から相手を消すのは?殺すんじゃなくて、隠すの」

「隠す?」

そう、と頷き、


「どっか、閉じ込めんの。籠の中の虫みたいに」


「……」


「恋人のこと忘れるくらい、頭殴ってみる?…ちょっと難しいか、こっちの手がイカれちゃうし。──でも、周りに誰もいなくなりゃ、その子も主人公を想うようになるんじゃない?上手く教育すればさ」

彼は、目を見開いて黙っていたが、



「虫籠…か」

と、一言こぼす。


「さすがに、人は入んないけどね」

ふふっと笑い、彼を見る。


「──そうだな」

やけに綺麗な笑みを浮かべるので、しばらく見惚れてしまっていた。



「まぁ…



俺様がその相手なら、閉じ込められた後も、恋人への愛を貫き通すけどね」



(…旦那が見ていなくても。

俺様、本当に生まれ変わったんだよ?旦那の好む人間にさぁ…)



後の本心を言いさえすれば、解決は容易い問題であったというのに。


その笑みを凍り付かせたのが自分だと知るのは、深い深い底に落ちてからのことだった。







()






‐2012.2.7 up‐

お題は、【(パレード)】様から拝借(どちらも)、感謝^^

またもや意味不明珍妙文、すみません。
後味悪いなぁ…と思いながらも(--;)

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