はちみつノイローゼ



※微々破廉恥的描写。少し痛い描写。

佐助は病み、幸村は病み〜黒(当サイト比)
元親(大学生)が少し。

佐→←幸で、歳はあまり影響なし。
一応、中二×小六〜数年後。

薄暗、意味不明乱文。
お題に、不似合いもいいところm(__)m

いつもの如く、病みも黒も微々たるもの;















暗闇に浸かる部屋で、途切れ途切れに聴こえる小さな声。
静めるために抑え、苦し気に悶え喘ぐ。


「…佐助」
「!旦那」

佐助は瞬時に隠そうとしたが、幸村がそれを許さなかった。

「こんなになるまで…。溢れておるではないか」
「あ…」

幸村の紅い舌が触れ、佐助が身を震わす。


「…また……してくれんの…?」
「当たり前だろう」

言った後で、再びそれを唇の中へ含んだ。

口内に彼の味が広がり、幸村は喉の奥で溜め息を洩らす。
巧くすることも可能だが、わざと拙くした方が相手は歓ぶ。

舐める音が大きいほど、その事実を実感できる──のだそうだ。


「…はぁ、…旦那…」

恍惚の表情で、幸村の髪を撫でる佐助。


(…もどかしい)


全て口に含むことができれば、もっと…


焦れる思いに駆られながらも、その味に喉を鳴らしていた。












佐助と幸村は二つ違いの他人同士であるが、幼い時分より同じ家で暮らしていた。
幸村が年下でも親友のように仲が良く、お互いをよく理解し合っていると思っていたのだが…

佐助が中学に上がり、段々とそうではないことに幸村は気付き始めていた。

どこか自分を避けるような態度に、たまに苛々とした様子を見せる。
以前は彼の部屋でゲームをし、そのまま一緒に眠るのも普通であったのに。

勉強が忙しいと言う割には、机に向かっている風でもない。


(何故なのだ…)


幸村は随分と焦り、また落ち込んでもいた。
彼の優しさを取り戻すために色々と努力してみるのだが、…結果は全て惨敗。


(どうすれば…)


──そんなある日、彼に救いの手が差し伸べられる。









「元親殿!お帰りなさい!」
「おう、デカくなったな幸村」

近所の家の息子が、大学から帰省したとのことで、幸村は早速会いに来た。
大学は九月でも夏休みが続くらしく、いつも羨ましく思う。


「ははっ、なるほどな。そりゃ、あいつも迷惑すんぜ。気の毒にな」
「え…」

元気のなさをすぐに悟られ、佐助の話を白状したのだが。

元親は、おかしそうに笑っている。


「お前はまだか…。でもま、六年になったんだし、授業で習ったろ?」
「授業?」
「保健体育。…お前がずっと部屋にいりゃ、できねーわな」
「???」

元親は苦笑すると、小さな声で幸村に説明をしてやる。
…その年頃に訪れる『性徴』について。

真っ赤になる幸村に、

「授業でも言ってなかったか?恥ずかしがることじゃねぇよ」

と笑い飛ばし、「まぁ、夜邪魔すんのだけは止めてやれ」と、諭した。


──その日を境に、幸村は佐助の部屋に行くのを止めた。

おかしいことではないと分かっていても、どうしても抵抗がある。
佐助が悪いわけではないのに、どこか違う目で見てしまい、ギクシャクした態度をとってしまう。

それが悪かったのか、佐助はますます幸村に冷たく接するようになっていった。


(…どうすれば、好いてもらえるのだろう…)


『まぁ…反抗期でもあるんだろうな。何つーか、鬱陶しいって思っちまうんじゃねーの。お前って、犬みてーにすぐ飛び付くだろ?俺ァ年離れてるし、気に入ってっけど…』

再び元親は一緒に考えてくれ、

『恋の駆け引きじゃねーが、一旦引いてみるのはどーだろな?いつも寄ってくるお前が逆だと、向こうも最初は楽に思うだろうが、段々気になってくんじゃねーか?』

と、策を練ってまでくれたのだった。












「──……」

佐助は、玄関に並ぶ靴の数に眉を寄せた。


中から騒がしい声がする扉をノックをすると、幸村が顔を出す。…部屋には、彼の友人たち数名も。


「あ、お帰り佐助。すまぬ、もう出るゆえ」
「ああ…」

幸村は、これから友人の一人の家に行く旨を話した。親同士の話も済んでいると。

学校の後友人たちと家で遊び、佐助が帰るとその内の誰かの自宅へ場所を移す。
休日前はそのまま泊まり、それ以外も帰りは夕飯前。すぐに風呂に入り、部屋で勉強…

それが、最近のパターンになっていた。

これで佐助の気を引けるのかは分からない。が、彼が幸村を窺うようになったのは確かである。
…明らかに、視線を感じるので。

しかし、それは優しくも冷たくもなく、ひたすら無感情のもの。
だが、少しは興味を持たれたことが死ぬほど嬉しかった。

幸村は、彼に対して思う気持ちと逆の行動を、どんどんエスカレートさせていく。


──佐助の態度は、はっきりと変わっていった。



「旦那、今度の日曜空いてる?」
「何故?」

「久し振りに、映画でも観に行こうかと思って」
「良い。恐らく、また皆で遊ぶ」

「………」

「──怒ってるの?俺様が、ずっと避けてたから?冷たくしたから?」
「何のことだ?」

「違うんだよ、あれは…」
「何が?」

「やめてよ、何でそんな…」

「話聞いて…ねぇ…」

「旦那…」


──幸村は、段々楽しくなってきた。

あんなにも冷淡な態度で自分を苦しめた彼が、今度は同じ思いに嘆いている。…それはつまり、彼も自分を好いているということで。

最早、以前の彼を取り戻すことよりも、何倍もの充足感を得られていた。

そんな日が続いた後の、ある晩──



「旦那、お願い。聞かなくて良いから、少しの間だけここにいて」

「………」

幸村の部屋に入った佐助が、ドアを塞ぐ。
仕方なく、幸村は従った。


「まずは謝らせて。もう、許してもらえないんだろうけど。旦那を避けて冷たくしてたこと…」

佐助は俯くと、

「…旦那が好きなんだ──家族としてじゃなく。夜一緒に寝たりしたら、本当に苦しくてさ…。気持ち悪がられたくなかったから、近付かないようにしてた。色々考えてたら、ついあんな態度になっちゃって…」

悔やむように顔を歪める佐助。

しかし、幸村には素晴らしく魅力的に感じられる。


(佐助…)


幸村は、これまでの人生の中で最高の喜びに震えていた。
ただし、それはまだ顔には出していない。
(最近の自分が、それを可能にしていた)


「──ありがと、聞いてくれて。ごめんね、本当に…」

「(あ…)」

最後まで幸村の顔を見ずに、佐助は部屋から出て行った。

一方、幸村は狂喜の笑いが止まらない。


(佐助が、そんなにも俺のことを!)


今日ほど、彼を好きだと思ったことはない。
ひとしきり噛み締め、染まった頬の色が消えたのを確認し、佐助を追う。

どういう風に驚かせてやろうか。
この喜びを、彼にも早く──


「…っ…うっ…だん、な…」

──細く洩れる、くぐもった声。


(泣いて…?)


だからここに来たのか、と合点がいく。

彼への愛しさがさらに増し、幸村は胸を高鳴らせながらドアを開けた。













口内にもたらされていた流出が止み、幸村はゆっくりとそれから離れた。
唇に付着した残滓に唾液を混ぜ、余すところなく舐めとる。

もう何度も味わった独特の味が、再び舌へと広がった。


「ごめん…また。汚いものを…」

佐助が、自虐的な目で幸村に謝る。


「汚くなどない。…我慢せずに、呼んでくれ…」

そっと佐助の頬を撫でれば、先ほどより増す陶酔の表情を見せた。


「…痛くなかったか?」
「まさか。気持ち良過ぎて、いつも…」

「そうか」

幸村は微笑み、彼のそれに触れる。


己への想いを何よりも物語る、愛しくて愛しくてたまらぬ場所。


佐助の、





──左の手首。





…あの晩、佐助は浴室でそこを切っていた。

発見が早く、大事には到らなかったが、
慌てた幸村は唇で止血してしまい、その心臓は怖ろしいほどに震えていた。


……歓喜、に。


(死にたいくらい、辛かったのか)


溢れる血がどんな蜜よりも甘くなり、無我夢中で吸った。
その光景に陶然とする佐助の姿にも、鳥肌が立つまで見惚れていた。

この数年で増え続け、また同じ箇所をするせいで、蚯蚓腫れのように浮き上がった痕。

幸村の目にはどんなものよりも美しく映り、また、いつまででも愛でていたくなる。


(指の先まで、全て口に出来たら良いのに)


甘い水と同時に味わいたい。
(手首は、口内に収まらぬので)

皮膚と肉で満たされれば、さらに甘いのであろうに。


繰り返す原因は分かっている。

切る度に訪れる、どろどろに甘い甘い時間。


佐助は知らない。
とうに赦され、同じように愛されていることを。

幸村が触れるのを、その瞬間だけはそうであると夢想し、幸福に身を委ねる。


きっと永劫に続く。


その味を知ってしまえば、もう





はちみつノイローゼ

(あい)






‐2011.12.12 up‐

お題は、【(パレード)】様から拝借。(どちらも)
ありがとうございました^^

お目汚し、本当に申し訳ないm(__)m
お題に失礼過ぎる;

ちょっと自己中で欲張りで、愛されたがりな旦那を…と。うぅむ。

[ 1/18 ]

[*前へ] [次へ#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -