真夜中サーカス3
「こちらは済んだでござるよー?早く…」
扉を開けてみれば、ショーはまだ終わっていなかった。
先ほどのはほんの前座、その過激さは格段に違っている。
「ああ、悪いなぁ待たせて。やはり、予定してた回数じゃ全然足りなくてな…」
口元を手の甲で拭い、モンスターが済まなさそうに天使の頭に手をやろうとしたが、「汚れてしまうな」と慌てて引っ込めた。
が、天使はその手を掴み戻し、にこやかに微笑む。モンスターは肩の力を抜き、不慣れな手つきで彼の髪を撫でた。
悪魔、バンパイア、ミイラの三人も「ちょっと休憩」とばかりに二人のもとへやってきて、
「Vampireって、結構地味だな。そんな派手な格好しといてよ、咬むだけじゃねーか」
「けどな、人間にゃかなり痛ぇんだぜ?こっちも汚れずに済むしよ、良いだろ?」
「まーな。…で、お前は少しは気にしよーぜ」
「フン、巻き直せば良いことよ」
真っ白だったミイラは、すっかり変色しきっていた。
「あ、良いですなぁ!某は好きでござる、大好きな色ですし…黒ずんでも、迫力が出て良いかと」
「ふふ…そうか」
↑こっそり照れ。
((…やっぱ、次からは浴びとくか))
密かに考え直す二人である。
「しかし、あいつらよくあんな平然と喋れたよな。俺ァ、一言でもこぼしゃ、絶対制御できなかったぜ」
「あれが、二人なりのコントロール法なんだろうさ」
「…とか言うお前も、同じ匂いがしたけどな」
悪魔の冷やかしに、モンスターは「そうか?」と空とぼけた。
『あいつはピエロで良かった』と、深く頷き合う面々。あれがスッピンだったら、“客”の反応はきっと初めから──…なので、とにかく良かったと。
「だんなーぁ!見て見て、新しいジャグリング〜!」
「ほーら、どんどん増えるぜー?」
「おぉっ…!」
ピエロの腕と身体の前で、見事な曲芸が展開されていた。飛び交う物は高速過ぎて、どんな形なのか確認もできない。
彼の隣でしゃがんだスケルトンが、小道具を投げ入れる助手を務めていた。
明るく天使に手を振る二人。メイクした顔、髑髏の面の白は、ミイラと同様の変貌を遂げている。
天使が近付こうとすると、
「ここから見るのが一番だ……最も美しく見えるのは」
死神にそっと肩を掴まれ、天使は面の穴から覗く目に笑み返し、大人しく従った。
「二人とも、すごく綺麗でござるよー!」
「「!!」」
その言葉に感激した二人は、単純にも力の入り具合が激増する。
「もうちょっとだけ、待っててくれなっ?コレ、あと×××××回は■さなきゃ──それでも足りねぇけど」
「旦那を見て触って、泣かせて終わらせたパーツは、何っ回●しても気が治まんなくてさ〜」
ピエロが曲芸を止めると、鈍く重い水音を立て小道具が落ちる。それらを足で踏みにじった後、スケルトンとともに拾い集めた。
ショーは、また冒頭から始まるようだ。
(二人とも……)
天使は、しあわせそうに頬を染め、とても穏やかに微笑んだ。
その顔に、死神は優しく触れ、
「これが終われば、何を…?」
待ってましたとばかりに、天使はニコリと笑い、
「某を、正式に『自警団』のメンバーにして下されっ!そして、沢山の困っている人々を助けとうござる!」
もちろん快諾され、その後も見世物小屋は各地を巡業する。
彼らの正義の鉄槌は、何も迷うことなく下され続けた。
真夜中サーカス
(子供ごっこ)
![](//img.mobilerz.net/sozai/160_w.gif)
‐2012.10.5 up‐
お題はどちらも【
(パレード)】様より拝借、感謝^^
読んで下さりありがとうございました…!本当すみません;
バンパイアは、彼の血なんか飲みたくないので吸いませんでした。
『真夜中サーカス』、もう長い間、ずーっとお借りしたかったのです。それも、私では全然駄目でしたが、R指定かかるくらいの狂宴以外考えられなくて。また素敵お題にひどい押し付けを(--;)
少年好きですみません…大きくても良いんだけど、キャッキャしながら狂ってる子供が、昔から好きで…自分も子供だったのに。
どうしてもbsrキャラにやってもらいたくなる、正義のヒーローごっこも。
[ 16/18 ][*前へ] [次へ#]