ラストワルツは君と


?→幸村。最終、幸村モテ背景。
(ほとんど関係ないですが、二十代後半〜三十代設定)

※ヤンデレ(黒・狂さは皆無)な感じ。哀切・甘・盲目…のつもり。


稚拙SFファンタジー。全てスルー&お許しを;
ですが、SF的な描写ほぼなし。
色々分かりにくかったらすみません(--;)
後書きで、補足や言い訳。
嗜好によっては、後味悪いかも。


(全1ページ)













ある惑星の最期が、*年後だと判明した。
パニックを防ぐため事実は隠され、上に立つ者たちだけが助かる道を確保、計画は秘密裏に進められる。

──別の惑星への移住。

条件に見合う星は見付かったが、方舟は無事行き着けても、人間の時間は馬鹿馬鹿しいほどに足りない。そこで、権力者たちは大枚をはたき、人体を確実に生かしたまま長期保存する『冷却装置』を開発させた。技術者は無名の鬼才ばかりを集め、『不治の病の患者を、希望ある未来まで保存するためや…』等述べ、真実は知らせることなく。

(限られた空間の)時間や環境を操作する機械は既に在ったので、実験は充分、大成功で完成を迎える。人数分の装置が揃うと、技術者らの代表者と助手の内一名が、舟に乗る権利を与えられた。新たな地への一頭脳として。

事実は代表者にのみ告げられ、連れていく助手は彼の選択に任せられることに。彼は独身男性で恋人もおらず、『自分は辞退するので、助手とその配偶者または恋人を』と主張するが、断固として許されなかった。



「最近、面白い噂話を耳にしたのですが」
「何です?」
「我々が手掛けたあの装置が、近々別の用途で使われるのだと。何でも、この星の──」

「…ああなるほど。『方舟』ですか」
「SFでよくある話ですな」
「将来的には、そんな風にも使われるかも知れませんね」

と、助手は笑った。

代表者も同じく笑んで、「我らの中からは、二人同乗を許されるのだそうですぞ」と続け、

「しかし、家族や恋人を連れることは許されぬらしい。研究者二人だけで…」

「短くても、愛する者と最後までいられる方が幸せでしょう。私なんかはずっと独り者で、想う人すらいやしない。それが本当なら、是非乗りたいですよ」

と、助手は苦笑。
代表者は、予想通りの答えに『やはりな』と思う。彼も自分と同様、研究一本の道を生きてきた。新境地での知識に触れる人生の方が、何倍も魅力的に感じられるのだろう、と。


「まあ、単なる噂ですがな」
「そうですね」

では、と代表者は腰を上げ、その部屋から出ていった。










「………」

一人残った助手は、どこか遠くを見る目で、代表者が口にしたマグカップを熟視していた。

その唇がふっと歪む。


(知ってますよ……本当の話だって)


だからああ言ったのだ。…何が何でも乗りたい。いや、確実に選ばれなければ。
自分たちからは『一人』しか選ばれないことも知っている。そして、


(あなたが乗るのは、決定済みだということも…)


あれほどの頭脳だ、至極当然の結論だろう。それを必死で追う内に、自身もここまで来ることができたのだから。
ずっと側で過ごしたい、ただそれだけの理由で。

『想う人がいない』のは嘘だが、選ぶ同行者は、今の現状に未練のない淡白な人間の方が、まだ気が楽なはずだ。優しい彼の考えや行動は、その智能に見合わぬほどの、単純さと分かりやすさを誇る。

彼の最後の表情に、助手は『選ばれた』と確信していた。
新しい地へ降り立ったあかつきには、すぐにでもこの想いを伝えよう。色恋に疎い彼はきっと驚くだろうが、ゆっくりじっくりと教えていけば良い。

周りは見知らぬお偉い方と、その家族ばかり。自分に最も心を許すのは必至…



(ようやく、二人だけになれますね)


上司であるため、名字の尊称しかしたことがない。『向こう』に着けば、こんな他人行儀な敬語など早々にやめてやる。

妄想で何度も呼んだ下の名を呼び捨てに呟き、助手は湧き上がる歓喜を胸の内に感じていた。



……………………………



そして後日、助手の確信は計画実行委員から正式に知らされ、彼は装置のベッドへといざなわれた。


「──さんと、同時に眠りたかったが」
「どうしても最後に、と言って聞きません。責任感が強く頑固な方ですから」

そうだな、と助手も笑いながら横になった。透明な蓋が閉められ、瞼が重くなっていく。


(あ……)


挨拶に来てくれたのか。もう少し、早ければ良かったのに。
側に立つ彼の姿に、助手はまどろんだ微笑みを向けた。

すると、彼の唇が動き、


“おやすみ、──…”



(…ッ!)



彼が、初めて下の名で呼んでくれた!
声は届かないが、確かにそう聴こえたのだ。

助手は頬をうっすら染め、



『おやすみ……幸村』


向こうで会えるのを、楽しみにしているよ

彼もまた彼の名を呼び返し、満ち足りた表情で瞼を閉じた。
















「行ってしまいましたね」
「ッ、」
「隠さなくて良い…その類いの我慢は、身体にも障ります」
「…っ、すみませぬ」

言葉に甘え、幸村は流れる涙を放る。
不器用なものではあるが、笑みも浮かべた。


「長い間、苦労をともにしてきた戦友たちでした。…一度だけ、下の名で気安く呼んでみたかった」
「彼らにも、あなたの想いは伝わっていますよ」
「…はい……」

「──こんなときに言うのは、不躾になりますが」
「忘れておりませぬよ。きちんと飲みましたので、ご安心を」

幸村の言葉に、相手の彼は安堵の表情へと変わった。

『開発』が始まって以来、技術者たちへと付けられた専属の医者である彼。分野は違えど幸村を超える頭脳の持ち主で、当然『舟』への搭乗切符も、向こうから渡されていたのだが。


「…申し訳ございませぬ、先生。某のせいで、残ることに」
「そんな風に思ってなどいません。これは、私の意志なのです」
「──…」

真剣な顔で両肩を掴まれ、幸村は涙を止め相手を見上げた。


装置が完成して間もなく、幸村は体調を悪くしていた。仲間にはひた隠しにし、彼に検査を依頼したところ、『不治の病』であると判明。そのレベルの容態まで来た身体は、装置への耐性を保証しなかった。

乗せる助手の選別途中だった幸村は、上に『自分が乗れぬ分、助手の人数を増やして欲しい』と一心に頼み込んだ。そして、彼らも飛び抜けた頭脳を失うのは遺憾に思い、それを補えるのであればと許したのである。


「あちらでも、皆きっと知識を多く役立ててくれましょう。それに…」

彼らはずっと独りきりで、想い想われる幸福を知らない。こちらにいてもそれは変わらぬことは、長年の付き合いから見て取れる。
だが、新たな地で降りかかると予想できる孤独感は、彼らにもその欲求を湧かせるのではないだろうかと。

勝手に、家族のごとく思っていた彼ら。──どうか、幸せになって欲しい。


「そう思うようになったのは、先生が……このような某を、愛して下さったからなのです」

「…真田さん……」

彼は声を詰まらせ、幸村の身体を抱き寄せた。


「幸せにございまする…彼の言った通り、『短くとも、愛する者と最後までいられる方が』ずっと幸せです。…本当にありがとう、残って下さって」
「…ッ、私の方こそがですよ!──きっと、必ず治してみせます。だから」

「…先生、良ければ下の名で呼んで下さいませぬか?…これからは、もっと気安い口調で…」

自分が敬語を外すのはためらうのに、相手にはそうしてもらいたい。これも、彼に愛を教えられてから知ったことだった。


「…分かった。そうさせて頂くよ。それと、礼を言うのはこちらだ。これで、ようやく君と…」
「え…?」

が、医者は優しく微笑み、もう一度しっかり抱くと、


「この星の最期の日まで、二人でいられるように」

その言葉には、幸村も微笑んで、


「それが叶うのなら、完治は必要ございませぬよ」

──何しろ、終末の*年後までは、彼らが生きてきた年数の、『倍以上』はあるのだ。




「愛している、幸村。…大丈夫、きっとそれを君に贈ってみせるよ」


「──殿…」

幸村は顔を赤らめ、その胸に預けた。

医者の頭の中には、決意と確信が浮かぶ。



(…君の『病』は、原因も治療法も、己にしか分からないものなのだから)


彼は静かに笑むと、ようやく手に入れた夢を確かめるため、再び腕に力を込めた。







()






‐2012.10.23 up‐

お題はどちらも【(パレード)】様より拝借、感謝^^

背景や設定の低知識さ等、本当にお恥ずかしい; 珍妙文申し訳ないです。

名前は出さなかったですが、だいたいバレバレですよね(^^; 医者は家康のつもり。でも助手と同様、他キャラに変換可能かも知れないなぁと。
ヤンデレ家康を成就させたかったんですが、全然黒くならず終わってしまった。まぁこれはこれで。

幸村総受けなつもり。全員乗りたくて、『助手』と同じ答えを幸村に言った。最期の日までそんなに長いとは知らずに。幸村は幸村で、彼らが自分が乗ると知ってるとは思わず、しかも想われてるとも露知らず。

『先生』は幸村より賢くて、また彼の慣れない求愛をガンガンし、真実察知するのを遮った的な。
あんなこと言ってますが、プラトニックラブ。本当に病気にされてるんで、無理はできない身体。でも『先生』は満足です。もう邪魔者は、誰一人いないから。

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