シンデレラより…A






「母上、舞踏会に行かれないので?」

「ああ…娘もいなくなったし、ワシ(家康)一人で行っても、仕方ないだろう?」

「しかし、父上も亡くなり…。某のことは気にせず、行かれて下され。王子殿は無理でも、どなたかのお目にかかるやも…」

「ユキデレラ。どうして、さっきからワシの目を見ないんだ?」


「…っ!」

カーッ、と赤くなるユキデレラ。


「そ、それは…」
「ん?どうした?」

どうもこうもない、母親(家康)が、ずっとユキデレラを見つめているのである。

それはもう、激烈に熱い視線で。


「…ようやく二人きりだな。ワシは、このときをずっと待っていた…」
「えぇ、と、(これも『あどりぶ』…?)」



「──娘なら、まだそこに一人おるではないか…母御よ」
「おっ、お前は…!」

いかにも怪しい魔法使い(刑部)、登場。


「可哀想なユキデレラ。我が、救ってしんぜよう」

「な、何と…っ?」
「(チッ、余計な真似を…)」

ピロロローン(魔法の効果音)


「おぉぉ、これが某…!?」

ユキデレラは、世にも美しいお姫様に大変身。


「それならば、王子の心も射止められるであろうよ」
「誠で!?母上、いかがでありましょうっ?」

「あ、ああ…、良いんじゃないか…

(刑部め…──G、J!!)」


「これで、母上にご恩を…!某、必ずや王子殿を勝ち取って参りまする!」

ユキデレラは満面の笑みで言うが、


「…そんなものは要らない。お前がいてくれたら、それで…」
「は、母上…」

魔法使いを放置し、ユキデレラを抱き寄せる母親。
ユキデレラは、感動したのか涙目。


「いてくれて…愛してくれれば、それで良いんだ…」
「あ、のぅ、母上…?」



──触り触り

めくりめくり



「は、母上ぇっ?」

「うん、なるべく汚さないようにするからな?せっかく綺麗なドレスなんだ…脱がさず、上手く」



『サクッ』

『ドスッ』

『ザスッ』



「…何だ。まだいたのか、お前たち」



「──これが、世に名高い東の大将?笑わせてくれるねぇ」

「だから、何度も言っただろうが。家康は、見た目通りの奴ではないと」

「家康…いくらお前でも、先駆けは許さねーぜ?どうしてもっつーんなら、俺が先ってことで、三人でヤっても構わねぇがッ…ふ…!」


「さすが素早いねー、凶王のダンナ」
「貴様もな。一応は使える」

「お褒めに預かり光栄──けど、コイツ不死身だから、気を付けて?…この機会に、東軍潰しちゃいましょ」
「気が合うな。今、言おうと思っていた」



親「だーから、やめてくれって!んなことで、天下決めんのだきゃあ…!」



──強制暗転──











「良かったのでしょうか?放っておいて」

「気付かぬあちらが悪いのよ。何、しばらく戦り合えば、その内覚めるであろうよ」

魔法使い刑部は、ユキデレラを降ろすと、


「ではな、ユキデレラ。我は、黄泉の国へ帰らせて頂く…ヒヒッ。ああそれと、魔法は子の刻に解けるゆえ、それまでに王子を口説きなされよ」

「心得申した!感謝致しまする、魔法使い殿〜」

空へ舞う魔法使いに、大手を振る。

そして、お城へ参じると──…



「えぇっ!シンデレラって、君だったのぉぉ…!?」

王子(金吾)は、青くなって震え出した。


「王子殿?」
「ま、ままマズいよ…僕、殺されちゃう…!だいたい、シンデレラはここに来ないって聞いてたのに…姉Bから」

「ああ…それが、予定が色々変わりましてなぁ」
「そんなぁ──やっぱり、僕が王子だなんて、最初から無理があったんだ。これじゃ四人も敵に…それも、強い人ばっか…」

アワワワ、と王子は失神寸前。


(王子殿は、誰かに命を狙われて…?)

思い込みの激しいユキデレラの正義感は、ガッツリ間違った方を向き、


「大丈夫でござるよ、王子殿!某が、必ずや貴殿をお守り致しまする!」
「ほ、本当にっ?──じゃなくてぇ!これじゃ、どっちが王子だか分かんない…」

言いながら、王子は「あ!」と声を上げ、


「そうか、そうすれば良いんだ!…ねぇ、ユキデレラ、僕降りるから、代わりに王子やって?」
「えっ!?」

「そしたら、万事上手くいくでしょっ?僕は解放されるし、君は王子を手に入れるしで!ね!?」
「う、…ぬぅ…?」

確かに、王子は手に入る…が。


「それなら、姉も母親も、君と一緒になれるわけだし!後は、君が好きな人を選べば良いんじゃないかなっ?」
「好きな──」

「できたら姉Bであって欲しいけど、本当はオススメできないなぁ…あ、嘘だよ!絶対言わないでね!」

ユキデレラに王子の服を着せ、彼は瞬く間に城から逃げ出した。


(うーむ…。だが、一体誰を…)


ああ、しかし簡単なことだ。
母親に恩を報いたいのだから、彼女を選べば──



“さわさわ”

“なでなで”



(う…)


考えたところで、あの感触が甦り、寒気が走る。



「王子、…ん?」

「あっ!実は、前の方は降りられまして──あぁっ?」

王子も相手も、一様に驚き顔になる。


「か、片倉殿…!どうしてこちらに?」

「政宗様を追ってだ、もちろん。ここに来ると聞いたんで、前王子と、野菜について談義していた」

「そうだったのでござるか…。政宗殿も、直に参られるとは思うのですが…、…?」

まじまじ見てくる小十郎に、小首を傾げると、


「真田か…?首から上だけ、別人みてーだが」

そういえば、魔法はまだ切れていないのだった。


「あの、これは」

「…『男装の麗人』ってヤツみてぇだな」
「え?」
「何でもねぇ。──もう、日が変わるぜ」
「(あ…)」


『ボフン』

白い煙が起き、魔法が解ける。



「…ああ。

やっぱそっちの方が似合うな、その着物には。こうして見ると……お前も、異国の王子に見劣りしねぇんじゃねぇか?」

ふっと微笑み、全身を眺めるよう、下から視線を上げていく。


互いのそれがぶつかると、王子の頬が染まった。



「あの、…え、と…〜〜その…っ」

あぅあぅどもる彼に、小十郎は再び笑んで、


「何てな。…本当は、お前がめかし込んでここに来るってのも、耳にしたんでな。それ見たさにも、待ち伏せてたってわけだ」

「…はっ?」

一瞬でポカンとし、呆気にとられる王子。


「さっきのアレも、似合ってたぜ。『ドレス』ってヤツも見てみたかったが…」

笑みを消さぬままのその顔で、


「会えるだけで儲けもんっての、忘れてたみてぇだな。…贅沢言うなら、もうしばらく『魔法』ってヤツが続いて欲しいぜ…」


…二人だけでいられる、この瞬間を──…




「か、片倉殿…?」

ごおぉぉっと音を鳴らし、燃え上がる顔。


小十郎の笑みは増し、



(──ま、嘘なんだがな)


笑い声は、心の中で高くなっていくのだが。


…全てが、ではない。

政宗を追ってはいたが、金吾と会ったのは偶然だ。
馬鹿馬鹿しい遊びをしているとは聞いたものの、政宗や幸村も参加者だとは知らなかった。

だが、振り返った彼を一目見て、

政宗たちの、彼に対して運命を感じる気持ちが、瞬時にして解けた。
…そして、自分もそれを分かりたいと、強く思っていたということも。


(ある意味運命だろう、これも)


とうとう幻まで見るようになったかと思ったほど、本当に驚いたのだから。

つまりは、いつも思い浮かべていたということで。


…彼らと同じものは、手に入れた。


後は、切り開くのみ──





シンデレラより運命的

(王子様なんて柄じゃないけど)



佐「…え、何この終わり方。何ちょっとこの小十幸みたいな感じ。おかしいでしょ、ねぇ」

親「お前の下んねぇ話から、こうなっちまうなんてなぁ。よ、きゅーぴっと様」

佐「──そか。これ多分夢オチってヤツだわ。だいたい、おかしいことだらけだし。寝る前、あの童話思い出してたから、確か。あ〜、早く覚めないかなー」

親「……(涙)」



──強制終幕──








‐2012.2.11 up‐

お題は、【biondino】様から拝借(どちらも)、感謝^^

会話だらけのカオス文、本当にすみません;
読んで下さり大感謝です(´;ω;`)

妄想話として日記にでも付けるつもりが、長くなって…。よくぞ出したなとも反省してるのですが。
とにかく、素敵お題に申し訳なさ過ぎる。

最初は、政「ネズミ(佐)の丸焼き食わせてやるからな?」でしたが、何かそれさえも(政宗様が)嫉妬しそうと思って、猫に喰わすことにした。
そして、佐助も「旦那になら本望だけど?」とか言いそうやし。

言い訳すべきはもっと他…。

[ 9/18 ]

[*前へ] [次へ#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -