(『…好きなんだ、中学のときからずっと。ずっと、お前ただ一人を見てた。本当に真剣なんだ。こんなこと冗談で言えるわけがない。誰よりもお前を想ってる。俺の気持ちは、絶対誰にも負けない。この先も、決して変わることはない。驚くと思うけど、…返事は、いつまでも待つから…』)


──本当は、もっともっと言いたい。

俺が、どれだけお前を、どんな風にお前を想ってるのか。この胸が機能しなくなりそうなほど焦がれている、この事実を。


お前の優しさ、強さ、…その笑顔。


お前を弱い奴だなんて思っちゃいないけど、…守りたいんだ。

これからもずっと、笑っていて欲しいんだ、そうやって。

そして、できることなら、それをいつも一番最初に見たい。俺に、真っ先に見せて欲しい。

俺の隣で、いつまでもそうして…



(──よし…っ)



ケータイのリダイヤル画面から、その番号を選択し、コールする。


『──はい』

「あ、俺だけど。あのな、『好…」



『慶次殿…?』





(…………………え)



硬直した一瞬の後、バッとケータイを見てみると、


…“真田幸村”



(ま、ままま間違えたーーー!)



──いや、伝える相手は間違っていない。のだが、


「ごっ、ごめん!元親にかけようとして、間違えた!」


慶次にとって、一世一代の告白。それを、まさか電話なんかで済ませる気など、毛頭ない。

…しかし、練習は必要。

数時間前から、元親に相手をしてもらっていたのだが、

『長いし、くどい』

などと顔をしかめられ、今ようやく推敲し終えて報告しようとしていたのに。

まさか、こんな大失態をしでかしてしまうとは。


「…ホント、ごめんな。幸、寝てただろ…」
『ああ、いえ…』

幸村は、呂律が回りにくい口を叱咤するように、

『ウトウトしていただけでござる。明日は休み、某でもまだ起きておりました』


(無理して…)


慶次は苦笑が湧いてくるが、胸には、温かなものが降り積もる。

自分ほど単細胞な人間はいないだろうな、といつも笑いそうになる。たったそれだけのことで、彼に対する気持ちが、さらに増してしまうのだから。


『元親殿には、何のご用で…?こんな時間に…』
「あ、いや…大したことじゃないんだ。ごめんなホント。じゃあ、おやすみ…」
『──あ、あの!』
「え?」
『……も、元親殿には話せて…某には……』
「え……」
『あっ…、いえ!何でもござらん!すみませぬ、それでは』


「ま、待って!」

つい、そう叫んでいた。…すぐに、後悔するのだが。



…動悸が治まらない。


先ほどの台詞と拗ねたような声音が、どうしようもなく、頭に反響して。

あまつ、胸を甘く刺されるような痛みが、拡がるばかり。


『慶次殿…?』
「ゆ、幸には、…直接会って聞いて欲しい話、でさ」
『直接…』
「う…ん。──聞いてもらえるかな」
『それはもちろん。…ですが…』
「?」

幸村は、少し笑い、

『何やら、切ってしまうのが残念です。間違いとはいえ、せっかく慶次殿から電話があったのに』

「──……」

『…今日、些細なものなのですが、嫌なことがありましてな…。寝る前に、慶次殿ならきっと、「そんな小さいこと気にするな」と、笑うのだろうな…などと考えて。気付けば、あっさり寝てしまっておりました』

と、照れ笑いのような声になり、

『間違えてもらい、得をし申した。慶次殿の声で、もうすっかりどうでもよくなりました、先ほどの…』


「幸」

ポツリと呟かれた一言が、幸村の声を遮る。





(──電話でなんて、自分のポリシーに激しく反する。だけど…)


今大事なのは、そこじゃない。




…伝えたい。──今すぐに。




「あのさ──」


溢れ出しそうなものを抑えるように、片手は強く握り締める。

詰まる声をどうにか絞り出し、慶次は自身の背を押した。





AM01:00のラブコール

( できるだけ簡潔に言うから )






‐2011.9.7 up‐

お題は、【biondino 様】

から、お借り致しました。ありがとうございました(^^)


最初は、付き合ってる設定で、ウザいラブコールで幸村を呆れさせるかキレさせるか…と思ってたんですが。

いや、やっぱ片想いにしよ。──イヤイヤ、慶次は絶対直接言うよな、って思い始め。

…で、こんな(・・)

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