育てませう(前)-3



「旦那、すっげぇ可愛い……こんなの、他の奴まで喜ばせちゃうじゃんよー…」

「なっ…」
「嘘でも冗談でもないって」

「…〜〜ッ」

だが、幸村は怒ったように佐助から離れると、

「よく見てみろ、これのどこがッ…」

「おぉ〜」
「!?…やっ、やっぱり見るなぁ!!」

ババッと胸元を両手で庇い、窮地に立ったときのように眉を下げ、

「だから、見られたくなかったんだ──…ないから…っ!」


「……へ…」


(胸…?)


佐助は目を開き、「あるじゃん、ちゃんと…」


「……これは、詰め物が入っているせいだ」

幸村は、ますます情けない顔になり、

「それでも、こんなものだ。…だから、皆とは行きたくなかった。○○殿も△△殿も□□殿も、皆大きいんだ。…佐助も、絶対そちらが良いと思うであろうし、…だが、海には同じような方が大勢いるだろうから、……しかし、一向に育たぬしで…」


「………」



──え、何これ……俺様、いつ死んだ?


目の前の天国に、唖然茫然とする佐助。赤い顔でぶつぶつ言う天使に目を擦り、必死で焦点を合わせる。…ああ良かった、旦那人間だ、俺様もちゃんと生きてるし。


(……うっそだろぉ…)


好いてくれているのは分かっていたが、それ以外は、一生子供(少年)のままだと思っていた。まさか、女らしくないことを気にし、佐助の目が他に行くのを、案じていたのだとは…

佐助の狼…違う、愛情スイッチは完全に押されたわけだが、目的地(ベッド)の確認に視線を向けると、見慣れない物が目に入り、


「あれ、珍しい…こっちは化粧品?」
「あっ!」

女性雑誌など、幸村の部屋で見たのは初めてだ。ベッド横の棚には、これも初めて見る、化粧品やサプリメントらしき容器が。

『効果抜群!簡単バストアップ運動』
『数日で大きく!これであなたも夢の※カップ!』
『女性らしい身体に…』
『古来から伝わる栄養素を、ふんだんに配合…』



「………」


「笑いたければ、笑え…」

というかもう、笑ってくれぇぇ……!!
うおぉぉぉと羞恥に悶絶、幸村はベッドに頭を突っ伏す。

『育たぬ』とはこのことだったのかと、佐助は細い背中を目で追った。


(……てか、大きさなんて知ってたし)


見てはなくとも、服や下着の上から触ったことはあるのだから、だいたいのサイズくらいは。しかし、不満を言ったことは一度もない。そもそもありもしないのに。

貧乳だろうと巨乳だろうと、幸村のものであるなら、どれでも見たいし触りたいし、興奮間違いない。現に彼女が言う『こんなの』に、佐助は他のどんなセクシーボディよりも、みなぎっているのだから。

「旦那」と甘く呼び寄せ口付けし、ベッドに優しく押し倒す。いつものように部屋の灯りをサッと消し、暑いので冷房は点けて──…


…では、これまでと変わらない。

今年の夏は進むと決めたのだ、こう見えて有言実行、チャンスは決して逃さない男、猿飛佐助。『大事』のためなら、どこまでも堪え忍べる。内の熱を、今は抑えると、

「そうだねぇ……まぁ、あるに越したことはない、…よな」

「っ…」


(…ごめん、旦那)


途端にズーンとなった幸村の背に、手を合わせる佐助。だが、その反応も嬉しくてならないのだから、本当にひどい。

いかんいかんと、ふやける顔を締めながら、

「良かったら、もっと効く方法教えようか?胸大きくする」

「えっ…!」

恥ずかしさより望みの方が上らしく、幸村は顔を上げた。
純粋な目に罪悪感を覚えなくもなかったが、大事の前では些細な障壁である。佐助は、できるだけ真面目な顔付きで、


「好きな男に触られるのが、一番らしいよ」


「──な゙ッ!?」

衝撃が強すぎたのか、幸村は飛び出さんばかりに目を見開いた。

「そ……!ば……!!」

「ほんとだって、そういう実例沢山あるし。たとえば──とか──とか、──なんでかっていうと、──が──だから──それで──で──が──なわけ」


「………」

得意の、もっともらしい話(説得力100%)を聞かせると、幸村はみるみる大人しくなり、


「……では、佐助が触れば、これも育つのだろうか…?」





「──佐助?」

「…なんでもっ!」

立ったままのけ反る奇行を見せてしまい、慌ててごまかす佐助。神様と幸村に多大な感謝をし、『落ち着け落ち着け』と唱える。

手にだけはかくなと汗を抑え、冷房を点けた。


「で、電気を…」
「…旦那、これはただのマッサージだから。アレとは違うから」
「いやでも、」
「真っ暗じゃ、大きくなるツボが分かんないよ。違うとこ触って、逆に小さくなるかも」

「ぇえっ…」

どちらのせいでもあるのか、幸村の目に潤みが増す。──佐助の疼きも増した。

幸村を観念させベッドに座らせると、佐助も上り、彼女の背後に回った。


「恥ずかしいなら、目ぇ閉じてりゃ良いしさ。……じゃ、いい?」

「……ん…」

幸村がコクリと頷いたのを合図に、佐助は両手を前にやった。







‐2013.7.6 up‐

お礼&あとがき

ちゃこ様、素敵なリクをありがとうございました!
+「♀幸村の小さい胸を大きくする的な〜破廉恥に発展」という、美味ネタでした。どうしても前置きで水着云々をしたくて…長くなりすみません。

現パロ他、設定が想像と全然違うかもと、幸村女の子らしくないし可愛さも;…で、申し訳ない。でも後編では、♂幸より女子な反応させて良いんだ〜と、わくわくです。にょた破廉恥は初なので、結果は未知ですが(^^;

やっぱ破廉恥や♀化・女装系は、佐助視点に(攻めを幸せに)したくなる…毎度すみませぬ。幼少期も、幸村いつも武士に憧れで; 初めてなんで、♀があの口調になったのや、旦那呼びを設定したかったんです。あと、佐助に男女関係なく幸村が好きってのを(*´`*)

良かったら、次回もご覧下さい。
ちゃこ様、本当にありがとうございました!

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