お忍び座談(弐)-5






「はぁ……ぁ…」
「ちゃんとイけましたね、幸村様…はぁぁ可愛い…」

うっとりと吐息を漏らし、幸村の涙を拭ってやる海野。本体に戻るまでその姿態を楽しむつもりだったが、草屋の外に彼の部下が来たようで、

『海野様、屋敷よりお呼びがかかっております』
「…今、忙しいんですけどね」
『幸村様からのお呼びですが…』
「それを先に言って下さい」

海野はすっくと立ち、いつもの美顔に整えると、

「名残惜しいですが、間もなく本体様に戻られるので安心して下さいね。では、行って参ります」
「ああ…」

清海の膝上でぐったりする幸村に優しく声を掛け、後の始末は清海に頼むと、海野は浮き立つ足取りで草屋を後にした。


「はっ…はぁ…」
「…若様、水をお持ちしようか?」

もう戻るのだとはいえ自身にも辛いので、乱れた浴衣を直しながら気を配る清海だが、

「せ…かぃ…」
「(な……)」

下を直す際に、目がそこへ釘付けになってしまった。


(──戻るどころか、未だに猛っておられるが…!?)

満足させとらんじゃないかと不在の海野を責め、『どうする…』と、選択に迫られる清海。解決法は分かっているものの、自分までがあんな真似をするのは…本体には影響がないというのが、かえって罪であるような…

等々苦悶していると、一向に息切れが治まらない幸村が、とうとう根を上げた。

「たの、む……てくれ…ぇ」
「っ…若様、だが」
「後生っ…ここも、っはぁ…熱くて…」

「──…」

ここ『も』?(ナニ)『が』の間違いじゃなくて?
そう返したかったが、力の入らぬ腰を懸命に動かし、つるりとした小尻を向けてくるのだから、外れではないと証明されてしまう。

涼しい顔してそこまで弄っとったとは、あやつ…何度も達したとの勘違いも、そのせいだったのではないか、海野を多々怒鳴りつけたい気になるが、

「せぇ…かい、おねが…ぃだ…からっ…」

「ッ、若っ…」


それから半刻ほどの間は、草屋の扉は硬く閉ざされることとなった…。













そして後日、出た案をまとめた勇士たちは、幸村のもとへ上がった。(結局、代表案が決まらなかった)

その内容に幸村はみるみる赤面したが、悩み克服のためと彼らの徒労を思ってか、破廉恥だと叫ぶことなく真面目に聞いていた。

「皆、手数をかけたな。…せっかくだ、全て試してみるとしよう」

『まっ、まことで/マジで!?』

どおっと全員が湧き、それぞれの頭の中は、春画を手に自慰にふける彼の姿が浮かび、あわよくばその内容に感化されることへの期待、もしくは次こそは白無垢と初夜、次は本物の彼の大満足にとことん付き合う…などの願望に満ちるが、

「これで、少しは治まってくれれば良いのだが……佐助のあれが」



・・・はい?


九人の反応に、「あっ」と幸村は慌てて、

「あやつが戻っても、これは秘事であるぞっ?おぬしらは休めておると言ってくれるが、あやつは言わぬだろう?ゆえに、何かしてやれぬかと思うてな…まぁ佐助なら、俺と過ごすより、一人でいる方を好みそうだが」

「い…や、そちらではなく……では、情欲の方も、もしや幸村様の話ではなくて…」
「な!?おっ、俺であるわけなかろうッ、佐助だ佐助!」

幸村は真っ赤になり、必死に否定する。恥じらっているようにも見えるそれに、勇士らはいよいよ顔色をなくし、

「…長の下事情を、何で幸村様が?」
「何故、幸村様が『困って』おられるので…?」

「そ…れは…」幸村は俯くと、「知っておろうに……」

「「「……」」」


──いやいやいや、寝耳に滝くらいの衝撃ですが?彼らは一様に固まり、魂が抜けたように真っ白になる者や、涙を見せぬために身体を折る者など様々。

幸村はそれを訝ることなく、案に再び目をやり、

「えー…望月と海野の案は、佐助に武器を使わせ、薬を飲ませれば良いのか?」
「ギャァァア!やめて下さい、俺の白無垢は幸村様専用っす!で、花婿は長じゃねぇんっすぅぅ!!」

甚「その前に、長のたぎる姿なんぞ見たくねぇよ」
小「俺は見たいですね、ふんどし姿。狙いがつけ易いから」

伊「おのれ…幸村様の純潔を、よくも…」
才「幸村様と奴が……ややこができても奴は見捨てるに違いない、俺が父親にならなければ…」

鎌「羨ましいな、長。これでいつ死んでも悔いはないだろう」
十「本当にな!戻るまでに、お迎えの準備しとこうか」

「「……」」

『…あの反応は、それでか』
約二名は同じ思いだったが、当然口にしなかった。

「おおっ、出迎えの…っ?宴でもやるか?」

海「そうですねぇ…ああそれと、あの薬も使わない方が」
清「若様相手なら、何をしてもあやつの情欲は落ち着かぬよ」

彼らの言葉に、そ、そうか…と幸村も頷くが、

海「しかし、幸村様が困ったままではね。私たちで、何とかしておきますよ」

甚「さすが海野!」
小「じゃ、次の議題はそれでいきましょう。その薬、痛覚も増幅するんですよね?」
十「飲ませたとこで、腰パッキンだな」

鎌「いや生ぬるい、あれを爆発させよう。熱血昇天棒の玉で、長の玉を」
甚「棒も昇天させちまえ」


…………………………
……………………
………………


「皆、かように真剣に…佐助の奴、随分と慕われておるわ。なぁ、清海?」

「……ですのう」

やはりついていけず、放置する清海である。ただ、幸村を楽しませ、喜ばせたことだけについては、褒めてやる気が湧いた。






→次頁、おまけ(佐幸)とご挨拶・後書き

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