お忍び座談(弐)-4






「ったぁく、忍の身から作り手まで淫術にかかるとは、あいつらたるんでますねぇ」
「甚八…」

羽織を肩に掛けられ、幸村はホウッと息をつく。礼を言うべく甚八に向くと、

「そうそう、あの武器の名前…『熱血昇天棒』なーんてのはどうですかね?ははっ」

「……」

そう提案する彼の目は、幸村の胸と股しか見ていない。ついでに幸村のもの以上に、彼の股間は凸を成していた。

──幸村お決まりの叫びとともに熱血入魂され、甚八もまた昇天した。













あとに残った海野と清海と草屋へ戻り、幸村はひとまず浴衣を借りた。
清海が彼らの愚行を謝るのを、「おぬしのせいでは」となだめていると、急に身体の力が抜ける。清海は驚くが、海野は慌てず、

「分身なので、体力がね…」
「では、そろそろ戻るのか?」
「いえ、悩める心が元なので、ある程度満足しないと戻らないんですよ」

と海野は幸村を清海に預け、皿を持ってくる。そこには甘味物が並び、気だるそうな幸村の表情も、ふわっとほころんだ。

「なるほど、若様らしいのう」と清海も笑い、幸村の半身を後ろから支える。海野が、餅を幸村の口に運ぶ…美味だったようだ。次に別の菓子を食べさせ、その次は最初に与えた餅をやると、

「…!?先ほどのより、ずっと旨い…!別の餅だったのか!?」
「いえいえ…」

クスクス笑いながら、実は…と、海野は訳を話した。二番目に与えたのは感覚を増幅させる薬で、同じ味でも倍美味に感じられるのだと。

「そんな良い薬があるのか!」
「あの話を聞き、私も幸村様に喜んで頂きたく思い、作ってみたんです」
「う、海野ぉ……」
「ふふふ、どんどん食べて下さいね」

綺麗な顔に笑みを絶やさず、海野は餅や団子などを次々与えてやる。が、おおよそ食べたところで口内に餅が引っ付いてしまい、幸村は眉を寄せた。指を動かそうにも、力は抜けたままである。その手に優しく触れ、海野は微笑むと、

「それくらい、私にさせて下さい」
「え…んぅッ?」

白く長い指を口に入れられ、幸村は目を見張った。あうあうと制止を訴えるが、「汚くないですから」と笑まれ、『すまん…』と目で謝る。

指が動くとくちくち水音が鳴り、彼のそれを汚しているのに気が引ける。早く済むよう幸村は大きく口を開け、なるべく動かないよう努めた。薬のせいで舌をなぞられる感覚が強く、意思とは逆に唾液が溢れだす。

「はぁ…ふ……ぅあ!」
「あ、ここもですね」

海野は上顎にへばり付いた餅を見つけると、指を奥へやり、前へ引っかくように動かした。

「んりゅッ、ンぐぅ、うぅん…!」
「すみません、もう少しなので」
「ふぉういぃっ、いひ…ゃあ、ぁああッ…」

餅はほとんど取れて舌に落ちていたのだが、海野は残った粘りを溶かすように、指の腹で擦り続けた。感覚が増幅した状態で敏感な箇所を触られ、力が抜けた身体さえもビクビク震える。最後に取り逃しを確かめるよう全体を掻き回され、幸村は一瞬気が遠くなった。

崩れ落ちる幸村を膝に抱え、清海は顔をしかめると、

「よもや、淫薬じゃあるまいな…?」
「まさか、それじゃ火に油でしょう。これは治療薬ですよ」

海野は虫の息の幸村に微笑み、帯はほどかず、彼の浴衣の上下を寛げた。熱に酔わされた肌と、硬く天を向いた胸の尖端とふんどしの形に、清海が固まる。幸村は、羞恥に無言で俯くが、

「私の指が急所に触れたせいです、恥じる必要ありませんよ。ですが、口腔でこの効き目…これで手淫を行えば達した後の爽快さも高く、次までの欲が溜まりにくくなるわけです」

「で、は…元より、そのために…?」
「どちらも、幸村様に喜んで頂くためですよ」
「ぁ…!」

胸を軽く撫でられ、幸村が仰け反る。清海は止めようとするが、

「言ったでしょう、『満足しないと戻らない』と。悩みが悩みですから…つまり、達してスッキリしないと」
「ぬ…」

確かに、幸村の身体は辛そうに震え、力が入らないので自慰もできない。目の毒だと苦く思うが、彼のために清海は口出しを止めた。

海野にふんどしを緩められ、その際に少し触れられるだけでも、幸村の肌は粟立った。口内よりも汚れた場所なのに、拒否の言葉が出てこない。彼らの会話から『他に手はないのだ』と自分に言い含め、海野の手淫を受け入れた。

「ぅあ、ぁあッ…」

まさか直で触れてくるなんて。その手に包まれた瞬間、幸村の目の前に光が散った。いつも優美で、粗野や卑猥な気配を感じさせない海野、その彼が自分の欲を慰めている。背徳さを自覚し、幸村の熱が上がる。うぶな彼のために、海野は下衣を取り払わず、緩ませたその中で事を行っていた。が、幸村には充分刺激的な情景だ。

薬のせいとはいえ、自分はこんなにも破廉恥だったのか。ぐちゅぐちゅと響く音や甘えた嬌声に、羞恥のあまり涙が湧く。と思っていると強い快感にまで泣かされ、それからはもう気持ちよさばかりが横行し、幸村はただ喘ぐだけだった。

「はぁっ…ん、うん…のぉ…」
「…すぐ達すると思ったんですがね」
「え…、やっ、あぁっ」

くりゅ、と胸の頂きを指で潰され、幸村が甲高く鳴く。もう片方のは唇と舌で食むと、声もなく身を震わせた。…これも、良さそうに見えるだけなんだろうか?海野は、自分の手腕に懸念が掠めるが、

「…え?」
「ちがう…のか…?」

胸の上から見上げると、初めて近くでそのとろけた顔が見えた。沈着な海野でも固まってしまうと、幸村は潤んだ唇を開き、

「もう……幾度も、達したのかと…」



──プツン

一応あったらしい糸は、あっさり切れ、


「…あなたという方は!」
「っひゃぅ!?」
「こんなことまで覚えが良いなんて、嗚呼もうッ…!」
「な…ぁんっ、やっ、っあ、ぅぁああ…ッ」

巧みで優雅だった手淫が急に乱雑に変わり、だがその分快感を荒波のように与えられ、次こそは熱を吐き出せた幸村だった。

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