お忍び座談(弐)-3



「む、これはもしや…?」
「そう、こう見えて武器なんっすよ!この玉は妖石を丸めたもので、幸村様の活力、つまり熱を得るとより硬化し、高い打撃力を発揮するんっす」

「おぉっ…それはすごいな!」
「「「ほう…」」」

どうやらまともそうな案に、他の者も感嘆した。

「もちろんそれだけじゃなく、てっぺんの桃玉はその熱で敵の奮起を促し、多勢を引き寄せます。そこで真ん中の白玉を使うと大爆発、一掃できる仕組みっす。下の緑玉だけは、柔らかい質で…」
「ふぉぉ…」

説明に頷きながら、幸村は二本を両手に取った。とても強そうには見えないが、彼が持つと愛らしい…しかもそのなりで、「試してみたいのだが…」と、これまた可愛く窺ってくる。
幸村のためなら火の中水の中、特に血気盛んな者らが率先し、彼を外へ誘導した。

発案者二人と、海野と清海以外の五人が、幸村の前で武器を構えると、

「幸村様、どうぞご遠慮なく」
「うむ!ではゆくぞ!」

幸村は笑顔で応え、「烈火ァァァア!!」
──望月の言う通り、幸村が突きを出す度に玉は硬度を増し、辺りの木や岩をえぐった。その威力に皆感銘したが、それよりも気になるのは、桃玉から出る同色の煙を浴び、変わっていく幸村の様子だった。

「はぁ、はぁっ……たぎるぁぁ…!」
「「「(ウゥッ…)」」」

彼の顔や首筋、胸の間から腹、腰、露出した肌の上はやたらと汗に濡れ、頬は桃色、吐息も荒くなっていた。その姿に、五人の喉がごくりと鳴る。だが、見ていた甚八は首をひねり、

「分身だと精力が弱いのか?あいつら寄ってこねぇな」
「そうだな…」

望月も頷くと、「幸村様、緑を使って下さい!」

「っむ、心得た!そりゃあぁ!」
「「「…!?」」」

幸村は一番下の緑玉からブチッと一握りを千切り、五人に投げつけた。すると緑色の煙が彼らを覆い、皆が皆よろめいた。──のは、数秒のことで、

「幸村様、お覚悟!」
「のわ!?しまっ…」

煙から一早く上がった才蔵に仰向けで押さえられ、幸村は四肢を固められてしまい、

「ひゃッ……さ、才蔵っ?」
「はぁ…幸村様…」
「な…あぁっ…」

才蔵に腹の汗を舐められ、幸村は硬直した。焦るも、腕も足も上がらずままならない。陶然とした表情の彼に次は胸の尖りを吸われ、ビクッと身体を震わせた。

「才蔵、そうはやるな」
「い、伊三…ぁ、っ…?」
「そうですよ、幸村様は焦らされるのが好きなんですから」
「なっ、小助…んぅ!」
「鎌之助は見ときなよ、分かんないだろうし」
「いや、先刻のお前の書物でもう完璧だ」

「おぬしら一体、どういう…っはぁ、ゃ、め…ッ」

身体を起こされるも、寄ってきた彼らに素肌を撫でられ舌を這わされ、幸村は愕然とした。皆幸村よりも息を荒くし、目には好色が滲んでいる。

「もっ望月、これは…」
「幸村様が活力不足の際は、代わりに緑玉が敵の熱を上げ、引き寄せるんっす。でもご心配なく、白玉は自ら作動しますから!」
「そういうことでは──『自ら』?」

見ると、離れた武器の白玉(爆弾)から細い煙が立ち上がっている。幸村は青ざめ、

「おぬしらも、早く逃げぬと!」
「大丈夫っすよ、幸村様の熱にあてられた者だけが爆発するんで。お前ら、少しは熱下げとかないと死ぬぞ?」
「ふん。そんなヤワな身で、勇士を名乗れるか」

しかし、幸村の身体にハァハァしながら言うのでは、何も格好良くない。才蔵以外の四人も同じ態度で、とにかく幸村に夢中である。望月は、「後悔するぞ」と強気に笑み、

「白玉は爆発の前に、熱を一気に上げさせるんだ。逃げるなら今の内だぞ」
「ふわっ…!?」
「幸村様!」

突如、白い煙が幸村の姿を隠した。五人は離れて煙を払おうとするが、どの技も効かない。望月は、「これが、最後の発熱剤だ!」と言うと、

「煙が退いたとき、幸村様は『純白の着物姿』に変わっている!しかも、今までの熱をはらんだ状態でな!」
「純…白…?」

急に興奮を見せる望月とその言葉に、彼らも意識を引かれた。全員の脳裏には、幸村の乱れた白い薄衣姿が浮かび、

「貴様、何という真似を!」
「肌着姿くらい動じないけどねぇ、今さら」
「ですね、何度も見てますし」

↑春画だけでなく、実際覗きでも。などと、才蔵と伊三以外は平然とする彼らだが、

「ふっ…馬鹿だな、純白といえば『白無垢』に決まってるだろう、花嫁衣装の!」
「ッ…何だと!?」

途端、彼らの脳裏の肌着姿は、白無垢と角隠しを着た幸村に変わり、

『末永く、可愛がって下さりませ…』

と布団の側に正座し、恥じらうように口許を袖で隠す姿。(初夜まで白無垢着てる花嫁はいないが)
考えたことのない姿に彼らの熱はもうから急上昇し、爆発のことも忘れ、早く見たい一心に染まった。

(((その純白は、俺が脱がす/汚す…!!)))


白煙が徐々に薄らぎ、幸村の姿が露になっていく。「お前ら、覚悟は良いんだな?」と望月が念を押すが、皆聞くまでもないようだ。
いよいよ、煙が全て晴れると、


「──これは、俺が爆発に遭ったということか…?」

「「「……!?」」」

布団はなかったが、幸村は正座をし、恥じらいというより、情けない表情で彼らを見上げた。純白の衣装……白いふんどしだけを、身に付けた状態で。


「な…ぜ…?」

望月は幸村に近付き呆然とするが、後ろから「ああ、言い忘れてた」と甚八が、

「資金が足りなかったんだよ、白無垢なんか高ぇしな」
「お前ェェ!よくも俺の夢を…ぅぉぉお!?」

が、はずみで望月は幸村の股間を間近で見てしまい、──これは夢なのか、しかもそこは元気よく隆起していたのだ。
望月が釘付けになると、気付いた幸村も「あっ…」と手で隠した。そして、潤ませた上目で恨めしそうに、彼や五人に視線をやると、

「あの武器と、おぬしらのせいだぞ…」


「「「………」」」


──爆発は大規模を極め、五人に加え、望月も夜空の星となった。

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