お忍び座談(弐)-2



「俺だけ忍術できないし、頭がキレるわけでもない、一番落ちこぼれだからねぇ。…でも、こういうことなら任せて下さいよ」

「え……ぅあ!?」
「さっきより、もっと良くしてあげますね」
「やっ…んん!十ッ…」

十蔵は落ちていた張形を液に浸け、幸村の中へ再び押し込めた。ぐちゅぐちゅと激しく突き回せば、身体は悦びを表すのだが、抵抗の声が何度も喘ぎに混じる。十蔵は苦く笑い、

「傷付くなぁ…そんなに俺は嫌ですか?」
「っ…ぃますぐ、解け…命令だ!」
「──…はい」

鋭い声に手を止め張形を抜くと、十蔵は幸村の拘束を解いた。怒りは覚悟の上だったが、幸村の理性を砕けなかったことの方が、彼の心を暗くする。溜め息をつく十蔵に、幸村は手を振り上げ、

「馬鹿者!」
「…!?」

よろけるほど強く抱き付かれ、十蔵は腰を着いてしまう。その上に乗る形で、幸村は彼の頬を撫でると、

「落ちこぼれなどと…俺を見くびるな、十蔵…」

(中略)

「──あれが十蔵ならば、本望だと……だから、お前にだけは、かような浅ましい姿を見せとうなかったのだ…」

幸村の告白に、十蔵は目尻を下げ、

「浅ましいなんてとんでもない。だって、そのせいで俺こうですし」
「あ…ッ」

十蔵を跨いでいた腰に固いモノを押し付けられ、幸村は顔を赤らめる。自分の格好をやっと自覚し恥じらうが、十蔵の上気した頬と欲する瞳に、小さく頷いた。麗しい者であればこんな凶器になるのかと、身をもって理解させられながら。

張形よりも逞しい彼のそれに怯むが、幸村はもう逃げなかった。十蔵は幸村の腰を掴むと、すっかり潤んだ入口に宛がい、下から一気に突き上げた。

「ッ…ぁあああ……!」
「…っは、やった…」

その瞬間幸村が達し、十蔵は喜びを噛み締めた。極まった肉がもっととねだるように、十蔵を強く食んでくる。目眩がするほどの熱に腰は止まらず、妖しく舞う媚態に全てが溶けていった。

「あっ、あっ、あぁ…んんぅっ」
「…ぅっ…くッ」
「は…っぁ……じゅうぞ…」
「……すいません、幸村様もうイッたのに…離せなくて」

何度突いても弛まない中には、戦慄すら覚える。女啼かせの自分が、と情けなくなるが、

「──マジすか」
「………嬉しゅうて、つい」
「ッ…!!」

幸村から軽く唇を寄せられ、しかもそんな言葉をもらえ、十蔵の胸は震えた。彼を逆に押し倒し、その気持ちに口付けで応える。
ギリギリ保っていた遠慮はたちまち失せ、次は思うがままに彼を抱いたのだった。













「──後はほとんど絵で、こんな感じ。エッロいだろ〜?文は雑だけど、絵で状況分かるし。『ぬぷっ、ヌチュッ、ズプッ』『あっ、あぁ、いぃ、十蔵…ん、ひっ…あぁあ』…俺が言うと、全然興奮しないね」

「…っッ…」

明るく苦笑する十蔵に今にも爆発しそうな才蔵らだが、甚八は「意外と純愛志向だよな、お前」と冷やかし、海野と望月は「幸村様、可愛らしい…」などと、絵を堪能している。

大事になる前にと清海が納めようとするが、十蔵は「まぁまぁ、他のも見てよ」と、別の書物を取ると、

「これなんか、才蔵好みだと思うけどね。

『はぁ……はぁ、…さいぞぉ…』

彼の着物を抱き締め、切ない声を漏らす幸村。手で自身を包み、くちゅくちゅと猥雑な音を立て慰めていた。

(こんな…こんな真似…)

ならぬと分かっていても、止められない。彼が思い込んでいた通り自分が女なら、一夜だけでも望めたかも知れないのに。──そのとき、ふっと空気が陰り、


「やめろぉぉぉおッ!!」

朗読の声に被せ叫び、手裏剣やクナイなどを投げ付ける才蔵だが、十蔵は清海の陰に隠れ、

「じゃ、こっちは?

『ぅうん……いさぁ…』
『ゆ、幸村様、悪酔いが過ぎるかと…』
『こうでも…ヒッく、せねば、お前は…』
『ッゆきむ…っ…ぅ』
『…いつも焦らされる罰だ』

蠱惑的に笑み、そそり立つ自身の傍で舌を覗かせる彼に、目が回る。ゴクッと生唾を飲み込むと、伊三は…


「兄上邪魔だ、どけぇぇぇッ!」

彼もまた十蔵を黙らせようとするのを、清海は「待て待て、ただの作り話だろうが」となだめ、

「おぬしも、戯れ言はもう止めい」
「いや、本当だって!こっちは『湯殿でバッタリ、狼になった小助に食われちゃう幸村様』の話だろ?で、これは『まぐわいの教えを頼まれた鎌之助だが、そっちの精神がガキ以下で、幸村様の方が奮闘し……』何これ羨ましい!」

「もう黙りなよ、十蔵さん」
「あー!」

小助に春画たちを燃やされ、悲痛に叫ぶ十蔵だが、

「なんてねぇ〜。大丈夫、俺の分は沢山予備あるから。他の『借りた』やつは、どうなのか知らないけど」

「……ん?」

まさか?と清海が彼らを見ると、才蔵、伊三、小助、鎌之助は、燃えカスに少々哀愁を漂わせているような……

気がしたが、よもや彼らがあんな低俗な書を持つわけがない、そもそも十蔵に出し抜かれるはずがと、己に言い聞かせる清海だった。







事態が納まると、次は望月が手を上げ、

「俺のは実演の方が分かり易いから、手伝って頂こうかと」

「ッ、幸村様…!」

別室から現れた彼に皆凍り付いたが、海野が「ご安心を」と微笑み、

「幸村様の悩める心をお借りし、実体化させたものです。私のにわか知識で作ったので、長くはもたないんですがね」

分身と同様だが、当人による術ではないので、本体に影響はないという。
『だとしても、邪法じゃないか?』と皆当然思うが、元となった悩みのせいかモジモジする幸村の姿に、苦言は飲み込んだ。使命感の方が勝ったらしい。

それを受けると、望月はガサゴソ始め、

「情欲が治まらないのは、幸村様の活力が有り余っているせいだ。そこで、甚八の協力も得て、こういうのを作ってみたんっす」

と、二本の巨大な三色団子を提示した。

「ぬぉおお、なんとぉ!!」

夢のようなそれに悩みも一瞬飛んだのか、(分身)幸村が嬉々とするが、

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